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第二章 ストレーガ国までの帰路

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 シエルさんの婚約者……凄く、嬉しい。
 今度こそは大好きな人と、結婚して子供が欲しい。

「みんな、辺境伯領が見えてきた。辺境伯には俺とルーで会いに行くから、ラエルは残ってみんなを見ていてくれ」

「わかった、任せて。でも、よかった……僕、辺境伯の人達が苦手だから……」

「知ってるよ、俺も苦手だ! 話を聞いたらさっさと帰ってくるから、ラエルは特にベルーガから目を離すな……ここの名物の饅頭に目がない」

 お饅頭と聞いて、瞳を輝かせる子犬ちゃん。

「うんうん、ここの名物の饅頭が美味いんだよなぁ。シエル、ルーチェちゃん、シャーロン辺境伯との話が終わったら買って来て」

「……ハァ、わかったから、ラエルから離れるのよ」
「うん、大人しく待ってるよ」

 子犬ちゃんにお饅頭を買ってくる約束をして、シエルさんと私は辺境伯の屋敷へと向かった。さすが、ストレーガ国の国土防衛の指揮官の屋敷だ、門から要塞の様な佇まいだ。

 シエルさんは辺境伯とお会いするからか、シャツとスラックスの上に、アイテムボックスから黒いローブを取り出して羽織った。隣の簡素な緑色のワンピース姿、私はこの姿でいいのかと緊張する。

「クク、そんなに緊張するなよ。ここで、ルーは俺の婚約者な……少々、面倒なことがあるけど……気にしなくていい」
 
「は、はい……シエルさん」

 面倒事とは何なのかの説明がないまま、屋敷の門に向かった。屋敷の門番は私達が来ると伝え聞いているのか、頭を下げて、辺境伯の紋章が付いた鉄製の頑丈な門を開けた。



 シエルさんと並んで屋敷の入り口に向かうと、シャツとスラックス姿、白髪混じりの短髪、鋭い瞳のガタイのいい男性が剣を腰にさして腕を組んで待っていた。シエルさんと私が近付くと、ガタイのいい男性は白い歯を見せて笑い。

「ようこそおいでなさった、シエル・ブルジョ様! さあ、中に入って寛いでくだされ。娘もお会いできる日を待っておりました」

 ――娘?

「いや、送った手紙に書いてあっただろう。今日はセレンス嬢に用はない、王都の様子をただ聞きに来ただけだ」

「ハハハッ、そうでしたな!! 国王から『近々、王都で何か起こるかも』との手紙を貰い。直ぐに王都へ息子と騎士を向かわせましたが……王都全体に結界が張られていると報告を受け。王都外に住む魔法使いを集めましたが、結界はまだ破れません」

 自分は外敵の侵入がないかの見回り、隣国の情勢を見なくてはならなくて動けないと言った。

「辺境伯はご自分の役割を果たしてください。王都に結界か……他の領地を見回らず、直接王都に行った方がいいな」

「誠ですか! 大魔法使いのシエル様が王都に向かってくださるのか、これは鬼に金棒ですな――ガハハハッ!!」

 豪快な辺境伯の笑い声の後ろから、可憐な声が聞こえる。

「もうお父様ったら、笑い方がいつもに増して下品ですわよ」

 蜂蜜色の金髪をなびかせて、薄紫色のドレスを纏った可愛い女性が現れた。
 
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