77 / 108
第二章 ストレーガ国までの帰路
7
しおりを挟む
森の中を結構な速度で、私達は枝に引っ張られている。――私はそれが怖くて、怖くて、手を伸ばし、シエルさんをギュッと掴んだ。
「はぁ? おい、ちょっと待て! お前の胸が顔に当たってる! お、そんなに掴むな、顔にめり込むから……ルー、俺の頭を抱き込むなって!」
「そんなこと言ったって、怖いんだもん!」
前世で遊園地のジェットコースターとか、絶叫系は全部苦手だった。だから――こんなの無理、無理だと、シエルさんを掴みすぎたせいなのか、慌てた彼の手がお尻をむにゅっと掴んだ。
「きゃっ! いま、お尻掴んだ?」
「悪い、息苦しくて咄嗟に掴んだ――これは、不可抗力だ!」
「だからって、あんなに力一杯掴まなくてもいいじゃない!」
と、叫んだと同時に。
「「おっ!」」
空中で突如その枝が消えて、ドシっとシエルさんの上へに落ちた。
「うぎゃっ」
「いててっ」
「ごめん、大丈夫?」
シエルさんの上から退くと、目の前に朽ち果てた遺跡が見えた。
――もしかして、これってラエルさんが魔法で鑑定した遺跡?
「シエルさん、見て……遺跡だ」
「あぁ? 古代遺跡だな……ルー、その前に休憩していいか?」
「いいよ、私も休憩したい」
一緒に、その場に座り込んだ。
――フフ、もしかして、シエルさんも怖かったのかな?
+
〈こちらです、真っ直ぐお進みください〉
「どこからか呼ぶ、声が聞こえる」
「呼ぶ声? ……気になるな、行ってみるか?」
「はい、行きましょう!」
シエルさん先に立ち私にむけて出した手をとると、彼はそのまま古代遺跡に一歩足を進めた。
遺跡が私達を待っていたのか。一歩、一歩、足を進めると――古代遺跡が黄金色の光りを放ち。崩れた建物が、階段が、草や土が生き生きと私達の足元から元に戻っていく。
「シエルさん、古代遺跡が……」
「ああ――元に戻っていっているな、どうなってるんだ?」
私達は足を止め遺跡を見つめた――生い茂る草と木、石畳の道、積み重ねられた石造りの建造物、多くのドラゴンの石像。
――そして、真上には大きな魔法陣がみえた。
「これは……昔、読んだことがある魔道書に載っていた……再現魔法の魔法陣だが桁が違うぞ……どれだけ多くの魔力を使ってんだ? 遺跡を元のように戻すなんて――魔力量が半端ないぞ」
彼が呟き、私の手を引っ張った。
「ルー、こんな体験は滅多にできない! もっと、近くで見るぞ!」
「え? 待って」
私の手を引き、シエルさんが遺跡の中を、目を光らせて走って行く。
「ルー、ここは……古代ドラゴンの街だ、この建物はなんだ?」
あっちこっちと引っ張られながらドラゴンの街を眺めた……私もシエルさんに感化されて、遺跡に感動して"すごい凄すぎだ"と興奮して、彼の手を強く握った。
彼も同じだったのか、笑って握り返してくれる。
「古代遺跡の中を、シエルさんと歩けるなんて凄い」
「あぁ、俺もルーと歩けて嬉しいよ」
ドラゴンの街を見てまわっていた。
〈このまま真っ直ぐ、お進みください〉
「このまま、真っ直ぐ?」
「ん、呼んでいるのか? ……仕方がない、行くか」
「行きましょう、シエルさん」
声に従って真っ直ぐに進むと、神殿の様な建物が見えてくる。2人で神殿に近付くと、石畳の道はポウッと光り、小さな白い花の道が出来ていく。
「シエルさん、花が咲いたわ」
「ああ、綺麗だな」
花道を歩き、声に呼ばれていた神殿に着く。
いま通ってきたドラゴンの街とは違い、大理石の柱が光り輝く神秘的な建物だった。
その神殿への入り口の両端には神社の狛犬の様に、大理石のドラゴンが鎮座している。
〈なかに、お進みください〉
「シエルさん、なかに入ってだって」
「わかった、行こう」
私達はその言葉に導かれる様に――神殿の中に足を進めた。
「はぁ? おい、ちょっと待て! お前の胸が顔に当たってる! お、そんなに掴むな、顔にめり込むから……ルー、俺の頭を抱き込むなって!」
「そんなこと言ったって、怖いんだもん!」
前世で遊園地のジェットコースターとか、絶叫系は全部苦手だった。だから――こんなの無理、無理だと、シエルさんを掴みすぎたせいなのか、慌てた彼の手がお尻をむにゅっと掴んだ。
「きゃっ! いま、お尻掴んだ?」
「悪い、息苦しくて咄嗟に掴んだ――これは、不可抗力だ!」
「だからって、あんなに力一杯掴まなくてもいいじゃない!」
と、叫んだと同時に。
「「おっ!」」
空中で突如その枝が消えて、ドシっとシエルさんの上へに落ちた。
「うぎゃっ」
「いててっ」
「ごめん、大丈夫?」
シエルさんの上から退くと、目の前に朽ち果てた遺跡が見えた。
――もしかして、これってラエルさんが魔法で鑑定した遺跡?
「シエルさん、見て……遺跡だ」
「あぁ? 古代遺跡だな……ルー、その前に休憩していいか?」
「いいよ、私も休憩したい」
一緒に、その場に座り込んだ。
――フフ、もしかして、シエルさんも怖かったのかな?
+
〈こちらです、真っ直ぐお進みください〉
「どこからか呼ぶ、声が聞こえる」
「呼ぶ声? ……気になるな、行ってみるか?」
「はい、行きましょう!」
シエルさん先に立ち私にむけて出した手をとると、彼はそのまま古代遺跡に一歩足を進めた。
遺跡が私達を待っていたのか。一歩、一歩、足を進めると――古代遺跡が黄金色の光りを放ち。崩れた建物が、階段が、草や土が生き生きと私達の足元から元に戻っていく。
「シエルさん、古代遺跡が……」
「ああ――元に戻っていっているな、どうなってるんだ?」
私達は足を止め遺跡を見つめた――生い茂る草と木、石畳の道、積み重ねられた石造りの建造物、多くのドラゴンの石像。
――そして、真上には大きな魔法陣がみえた。
「これは……昔、読んだことがある魔道書に載っていた……再現魔法の魔法陣だが桁が違うぞ……どれだけ多くの魔力を使ってんだ? 遺跡を元のように戻すなんて――魔力量が半端ないぞ」
彼が呟き、私の手を引っ張った。
「ルー、こんな体験は滅多にできない! もっと、近くで見るぞ!」
「え? 待って」
私の手を引き、シエルさんが遺跡の中を、目を光らせて走って行く。
「ルー、ここは……古代ドラゴンの街だ、この建物はなんだ?」
あっちこっちと引っ張られながらドラゴンの街を眺めた……私もシエルさんに感化されて、遺跡に感動して"すごい凄すぎだ"と興奮して、彼の手を強く握った。
彼も同じだったのか、笑って握り返してくれる。
「古代遺跡の中を、シエルさんと歩けるなんて凄い」
「あぁ、俺もルーと歩けて嬉しいよ」
ドラゴンの街を見てまわっていた。
〈このまま真っ直ぐ、お進みください〉
「このまま、真っ直ぐ?」
「ん、呼んでいるのか? ……仕方がない、行くか」
「行きましょう、シエルさん」
声に従って真っ直ぐに進むと、神殿の様な建物が見えてくる。2人で神殿に近付くと、石畳の道はポウッと光り、小さな白い花の道が出来ていく。
「シエルさん、花が咲いたわ」
「ああ、綺麗だな」
花道を歩き、声に呼ばれていた神殿に着く。
いま通ってきたドラゴンの街とは違い、大理石の柱が光り輝く神秘的な建物だった。
その神殿への入り口の両端には神社の狛犬の様に、大理石のドラゴンが鎮座している。
〈なかに、お進みください〉
「シエルさん、なかに入ってだって」
「わかった、行こう」
私達はその言葉に導かれる様に――神殿の中に足を進めた。
11
お気に入りに追加
3,025
あなたにおすすめの小説
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
あなたが捨てた私は、もう二度と拾えませんよ?
AK
恋愛
「お前とはもうやっていけない。婚約を破棄しよう」
私の婚約者は、あっさりと私を捨てて王女殿下と結ばれる道を選んだ。
ありもしない噂を信じ込んで、私を悪女だと勘違いして突き放した。
でもいいの。それがあなたの選んだ道なら、見る目がなかった私のせい。
私が国一番の天才魔導技師でも貴女は王女殿下を望んだのだから。
だからせめて、私と復縁を望むような真似はしないでくださいね?
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
築地シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる