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第二章 ストレーガ国までの帰路

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 森の中を結構な速度で、私達は枝に引っ張られている。――私はそれが怖くて、怖くて、手を伸ばし、シエルさんをギュッと掴んだ。
 
「はぁ? おい、ちょっと待て! お前の胸が顔に当たってる! お、そんなに掴むな、顔にめり込むから……ルー、俺の頭を抱き込むなって!」

「そんなこと言ったって、怖いんだもん!」

 前世で遊園地のジェットコースターとか、絶叫系は全部苦手だった。だから――こんなの無理、無理だと、シエルさんを掴みすぎたせいなのか、慌てた彼の手がお尻をむにゅっと掴んだ。

「きゃっ! いま、お尻掴んだ?」
 
「悪い、息苦しくて咄嗟に掴んだ――これは、不可抗力だ!」

「だからって、あんなに力一杯掴まなくてもいいじゃない!」

 と、叫んだと同時に。


「「おっ!」」


 空中で突如その枝が消えて、ドシっとシエルさんの上へに落ちた。

「うぎゃっ」
「いててっ」

「ごめん、大丈夫?」

 シエルさんの上から退くと、目の前に朽ち果てた遺跡が見えた。

 ――もしかして、これってラエルさんが魔法で鑑定した遺跡?


「シエルさん、見て……遺跡だ」
「あぁ? 古代遺跡だな……ルー、その前に休憩していいか?」

「いいよ、私も休憩したい」

 一緒に、その場に座り込んだ。

 ――フフ、もしかして、シエルさんも怖かったのかな?

 

 +

 

〈こちらです、真っ直ぐお進みください〉

「どこからか呼ぶ、声が聞こえる」
「呼ぶ声? ……気になるな、行ってみるか?」
 
「はい、行きましょう!」

 シエルさん先に立ち私にむけて出した手をとると、彼はそのまま古代遺跡に一歩足を進めた。
 
 遺跡が私達を待っていたのか。一歩、一歩、足を進めると――古代遺跡が黄金色の光りを放ち。崩れた建物が、階段が、草や土が生き生きと私達の足元から元に戻っていく。

「シエルさん、古代遺跡が……」
 
「ああ――元に戻っていっているな、どうなってるんだ?」

 私達は足を止め遺跡を見つめた――生い茂る草と木、石畳の道、積み重ねられた石造りの建造物、多くのドラゴンの石像。

 ――そして、真上には大きな魔法陣がみえた。

「これは……昔、読んだことがある魔道書に載っていた……再現魔法の魔法陣だが桁が違うぞ……どれだけ多くの魔力を使ってんだ? 遺跡を元のように戻すなんて――魔力量が半端ないぞ」
 
 彼が呟き、私の手を引っ張った。

「ルー、こんな体験は滅多にできない! もっと、近くで見るぞ!」
 
「え? 待って」

 私の手を引き、シエルさんが遺跡の中を、目を光らせて走って行く。

「ルー、ここは……古代ドラゴンの街だ、この建物はなんだ?」

 あっちこっちと引っ張られながらドラゴンの街を眺めた……私もシエルさんに感化されて、遺跡に感動して"すごい凄すぎだ"と興奮して、彼の手を強く握った。
 彼も同じだったのか、笑って握り返してくれる。


「古代遺跡の中を、シエルさんと歩けるなんて凄い」
「あぁ、俺もルーと歩けて嬉しいよ」

 ドラゴンの街を見てまわっていた。
 

〈このまま真っ直ぐ、お進みください〉
 

「このまま、真っ直ぐ?」
「ん、呼んでいるのか? ……仕方がない、行くか」
 
「行きましょう、シエルさん」

 声に従って真っ直ぐに進むと、神殿の様な建物が見えてくる。2人で神殿に近付くと、石畳の道はポウッと光り、小さな白い花の道が出来ていく。

「シエルさん、花が咲いたわ」
「ああ、綺麗だな」

 花道を歩き、声に呼ばれていた神殿に着く。
 いま通ってきたドラゴンの街とは違い、大理石の柱が光り輝く神秘的な建物だった。
 
 その神殿への入り口の両端には神社の狛犬の様に、大理石のドラゴンが鎮座している。

〈なかに、お進みください〉

「シエルさん、なかに入ってだって」
「わかった、行こう」
 
 私達はその言葉に導かれる様に――神殿の中に足を進めた。

 
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