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第二章 ストレーガ国までの帰路
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「シエルさん、お風呂上がったよ、次どうぞ」
「お、おかえ……り」
同じ様にベッドで寛いでいた彼は、私の薄手のワンピース――部屋着をみて飛び起きた。
「ルー、その格好は?」
「え、普通の部屋着だけど……変?」
普段はあまり着ない、丈の短いレースのワンピース。彼にならいいかなって着てみたのだけど……この驚きようは似合っていなくて、変なのかとしょんぼりした。
だけど、それは私の杞憂(きゆう)だった。
「ルー、可愛い。……スゲェ可愛い、似合ってる。でも、その部屋着を着るのは俺の前だけな――風呂にいってくる」
「はい。シエルさん、ゆっくり寛いできてね」
――えへへ、俺の前だけ。
うれしい言葉を残して、お風呂にむかった彼を見送った。部屋に残った私はタオルで髪を乾かし、持ってきたカバンの中から本を一冊取りだして、ベッドに寝転んた。
「ふぅ、気持ちよかった」
髪をガシガシタオルで拭きながら、彼がお風呂から戻ってくる。ドキッ――シエルさんのお風呂あがり、シャツの前がはだけてる……お風呂からでて、熱いからだってわかるけど……ドキドキした。
――頬が熱い。
「ん、ルー? どうした?」
「な、な、なんでもない。私、先に寝るね!」
好きな人――恋人と一緒に過ごすことがはじめての私には、彼のお風呂あがりの姿は刺激が強かった……頬が赤くなったかも。
その頬を隠すために慌てて布団にもぐる……その私の姿に"フッ"と、シエルさんが笑ったような感じがした。
「おやすみ、お腹だして寝るなよ……ルー」
「お腹なんて、だ、ださないわ」
ガバッと、布団から顔を出した……彼のやさしい瞳が私をみていた。その頬はお風呂から出たからなのか、私と同じで少し赤みがかかっていた。
「やっと、顔がみれた……おやすみ」
「おやすみなさい、シエルさん」
♱♱♱
「ルー、そろそろ昼だ、起きろ。飯にするぞ」
「ん、んん?……先輩?」
「クク、呼び名が戻ってる」
嬉しそうなシエルさんの声が、なんだか近くに聞こえた。目を覚ませばベッドのへりに座り、私の本を読む彼の姿が見える。……いつからそこにいたの? とかは聞かないけど。私の寝相ひどくなかったかな……なんて事を考えながら、乱れた髪を手でなおした。
シエルさんは本を閉じ、表紙をみながら。
「クク、ルーは相変わらず、この本好きだな」
「好きだよ、シエルさんもでしょう?」
笑って返すと。そうだなっと、うなずいた。
「腹減ったから、飯の準備を始めるか?」
「うん。なにを作る?」
「そうだな、俺は甘辛いタレがかかる、生姜焼きが食べたい」
生姜焼きか……豚肉の塊と生姜、ほかの調味料。
お米とお鍋もすべて、彼のアイテムボックスにしまっている。
――まずはお米を三十分水に浸して。
生姜を擦り下ろし調味料を混ぜて、お肉と薄切りにした玉ねぎをいっしょに漬けて。付け合わせは……キャベツの千切りとキュウリの塩揉み。スープはジャガイモとベーコンで作って、あとはシエルさんの好きな卵焼きを焼こうかな。
「シエルさん、料理は外で作るんだよね」
「ああ、いま外でラエル達がカマドを作ってるよ。はい、タオル」
「ありがとう、身支度が終わったら、調理をはじめるね」
洗面所で顔を洗い、髪を整え、外に出て行こうとすると、シエルさんが私の腕を掴んだ。
「シエルさん?」
「ルーは、その格好で外に行くのか?」
「え? その格好?」
彼に言われて気付く、薄手のワンピースのままだった。
「わ、私……着替えてくるから、シエルさん先にいっていて」
「ああ、外で準備してるよ」
シエルさんが外に出ていくのをみて、慌てて着替えに戻った。
「お、おかえ……り」
同じ様にベッドで寛いでいた彼は、私の薄手のワンピース――部屋着をみて飛び起きた。
「ルー、その格好は?」
「え、普通の部屋着だけど……変?」
普段はあまり着ない、丈の短いレースのワンピース。彼にならいいかなって着てみたのだけど……この驚きようは似合っていなくて、変なのかとしょんぼりした。
だけど、それは私の杞憂(きゆう)だった。
「ルー、可愛い。……スゲェ可愛い、似合ってる。でも、その部屋着を着るのは俺の前だけな――風呂にいってくる」
「はい。シエルさん、ゆっくり寛いできてね」
――えへへ、俺の前だけ。
うれしい言葉を残して、お風呂にむかった彼を見送った。部屋に残った私はタオルで髪を乾かし、持ってきたカバンの中から本を一冊取りだして、ベッドに寝転んた。
「ふぅ、気持ちよかった」
髪をガシガシタオルで拭きながら、彼がお風呂から戻ってくる。ドキッ――シエルさんのお風呂あがり、シャツの前がはだけてる……お風呂からでて、熱いからだってわかるけど……ドキドキした。
――頬が熱い。
「ん、ルー? どうした?」
「な、な、なんでもない。私、先に寝るね!」
好きな人――恋人と一緒に過ごすことがはじめての私には、彼のお風呂あがりの姿は刺激が強かった……頬が赤くなったかも。
その頬を隠すために慌てて布団にもぐる……その私の姿に"フッ"と、シエルさんが笑ったような感じがした。
「おやすみ、お腹だして寝るなよ……ルー」
「お腹なんて、だ、ださないわ」
ガバッと、布団から顔を出した……彼のやさしい瞳が私をみていた。その頬はお風呂から出たからなのか、私と同じで少し赤みがかかっていた。
「やっと、顔がみれた……おやすみ」
「おやすみなさい、シエルさん」
♱♱♱
「ルー、そろそろ昼だ、起きろ。飯にするぞ」
「ん、んん?……先輩?」
「クク、呼び名が戻ってる」
嬉しそうなシエルさんの声が、なんだか近くに聞こえた。目を覚ませばベッドのへりに座り、私の本を読む彼の姿が見える。……いつからそこにいたの? とかは聞かないけど。私の寝相ひどくなかったかな……なんて事を考えながら、乱れた髪を手でなおした。
シエルさんは本を閉じ、表紙をみながら。
「クク、ルーは相変わらず、この本好きだな」
「好きだよ、シエルさんもでしょう?」
笑って返すと。そうだなっと、うなずいた。
「腹減ったから、飯の準備を始めるか?」
「うん。なにを作る?」
「そうだな、俺は甘辛いタレがかかる、生姜焼きが食べたい」
生姜焼きか……豚肉の塊と生姜、ほかの調味料。
お米とお鍋もすべて、彼のアイテムボックスにしまっている。
――まずはお米を三十分水に浸して。
生姜を擦り下ろし調味料を混ぜて、お肉と薄切りにした玉ねぎをいっしょに漬けて。付け合わせは……キャベツの千切りとキュウリの塩揉み。スープはジャガイモとベーコンで作って、あとはシエルさんの好きな卵焼きを焼こうかな。
「シエルさん、料理は外で作るんだよね」
「ああ、いま外でラエル達がカマドを作ってるよ。はい、タオル」
「ありがとう、身支度が終わったら、調理をはじめるね」
洗面所で顔を洗い、髪を整え、外に出て行こうとすると、シエルさんが私の腕を掴んだ。
「シエルさん?」
「ルーは、その格好で外に行くのか?」
「え? その格好?」
彼に言われて気付く、薄手のワンピースのままだった。
「わ、私……着替えてくるから、シエルさん先にいっていて」
「ああ、外で準備してるよ」
シエルさんが外に出ていくのをみて、慌てて着替えに戻った。
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