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ルーチェが帰った後の商店街での話(シエル)
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商店街の人達はなぜこんな所に、貴族が何をしに来たんだと、不思議そうにその黒塗りの馬車を見ていた。
その馬車の中にはもう一人乗っており、中から降りることさえせずに連れたきた騎士と、降りた男に窓から命令をくだす。
「シエル、しばらくここを探して来い」
「かしこまりました、カロール殿下」
「お前達はこの辺りを探せ」
「はっ、カロール殿下」
騎士は港街の外回りを探し、黒いローブの男は頭を下げると商店街の中に消えていった。
そのローブの男は思う。カロール殿下は都合のいい人だと……自分でルーを手放し、傷付け、婚約破棄しておきながら。こんどは連れ戻したいなどと自分勝手すぎる。
国が違えば、こうも王族も違うか……
まさか、ルーの魔力に気付いたのか? それは厄介だ。
「ホーホー」
「……ウルラか」
その男が空を見上げれば、フクロウが空高く飛んでいた。やはり店が休みの日だーー食べることが好きなルーは、港街に食べ歩きに来ていたか。
ウルラの報告を受けるため周りを確認して、誰もいない、路地に男が入ると降りて肩に乗った。
「何か報告することはあるか?」
『はい。ご主人の大切なお嬢はつい先程、カリダ食堂に変な子犬を脇に抱えて帰りました』
「変な子犬をだと……」
『その子犬はすこし妙だ、ワシの存在にも気付いていた』
使い魔のウルラに気付くとは、その子犬は怪しい。ルーがおかしな事に巻き込まれる前に、その子犬の事も調べるしかないな。
「ウルラはしばらく、ルーとその子犬を監視してくれ」
『了解した、お嬢を見守るのだな。ワシはチョコ、美味いチョコが食べたい』
「あぁ、わかった買っておくよ。ルーを頼む」
『頼まれた』
ウルラはルーのところに飛び去り、俺はしばらくこの街で時間を潰すことにした。
(首輪をつけているから、今はラエルのところに行くのはやめておくか)
商店街で時間をつぶして、カロールには「手掛かりはありませんでした」とでも、報告すればいいっか。
その馬車の中にはもう一人乗っており、中から降りることさえせずに連れたきた騎士と、降りた男に窓から命令をくだす。
「シエル、しばらくここを探して来い」
「かしこまりました、カロール殿下」
「お前達はこの辺りを探せ」
「はっ、カロール殿下」
騎士は港街の外回りを探し、黒いローブの男は頭を下げると商店街の中に消えていった。
そのローブの男は思う。カロール殿下は都合のいい人だと……自分でルーを手放し、傷付け、婚約破棄しておきながら。こんどは連れ戻したいなどと自分勝手すぎる。
国が違えば、こうも王族も違うか……
まさか、ルーの魔力に気付いたのか? それは厄介だ。
「ホーホー」
「……ウルラか」
その男が空を見上げれば、フクロウが空高く飛んでいた。やはり店が休みの日だーー食べることが好きなルーは、港街に食べ歩きに来ていたか。
ウルラの報告を受けるため周りを確認して、誰もいない、路地に男が入ると降りて肩に乗った。
「何か報告することはあるか?」
『はい。ご主人の大切なお嬢はつい先程、カリダ食堂に変な子犬を脇に抱えて帰りました』
「変な子犬をだと……」
『その子犬はすこし妙だ、ワシの存在にも気付いていた』
使い魔のウルラに気付くとは、その子犬は怪しい。ルーがおかしな事に巻き込まれる前に、その子犬の事も調べるしかないな。
「ウルラはしばらく、ルーとその子犬を監視してくれ」
『了解した、お嬢を見守るのだな。ワシはチョコ、美味いチョコが食べたい』
「あぁ、わかった買っておくよ。ルーを頼む」
『頼まれた』
ウルラはルーのところに飛び去り、俺はしばらくこの街で時間を潰すことにした。
(首輪をつけているから、今はラエルのところに行くのはやめておくか)
商店街で時間をつぶして、カロールには「手掛かりはありませんでした」とでも、報告すればいいっか。
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