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誰かが魔法でだしたライトの明かりは――原っぱにいる私を浮き上がらせた。はっ、福ちゃん、子犬ちゃんは大丈夫? 顔を動かさず視線だけ送る。彼らが隠れるところまで、ライトの光りが届いてなかった。
――よかった。
これでいい。貴方はどうせ近くで高みの見物でしょう? 私は思いっきり空気を吸った。
「「カロール殿下、貴方がリリーナ様を愛して、私との婚約破棄を望んだ癖に……いまになって、私を探して捕まえようとするのですか!」」
精一杯、何処かにいる彼に向けて声を上げた。
それに反応するかの様にカロールも声を上げた。
「違うんだ、俺はあの女の魅了に掛かっていたんだ。あの婚約破棄は間違いなんだ……好きなのはただ一人、ルーチェ嬢、君だ」
え?
「カロール殿下が私を好き? 今更なにを言っておいでて? そんな嘘、信じるわけないわ! たくさん傷つけておきながらバカにしないで!」
――声を張り上げ、涙がでそうで唇を噛んだ。
「嘘ではない。俺の本当の気持ちなんだ戻ってきてくれ、ルーチェ嬢!」
それに首を思いっきり横に振る。
「嫌よ、絶対に戻りたくない……私は好きな人がいるの、いつも側にいてくれて照れ屋で優しい……せっ、」
その、私の言葉に誰かの声が被る。
「その次は言わせないよ姉さん」
騎士に混ざり、弟のイアンがいた。
「どうして、貴方がここにいるの!」
「フフ、どうしてだろうねー。でも、姉さんにはカロール殿下が一番お似合いだよ【拘束の糸】」
イアンが放った無数の光の糸が私の体に巻き、身動きが出来なくなる。
「やめて、イアン!」
「やめるわけないだろ、姉さん」
私に巻き付いた光りの糸はビリ、ビリと、電気を流して体を痺れさす。
「「ひやぁ、あ、あぁ……くっ、や、やだ、せ、先輩……っ! シエル先輩、助けて!」」
「ははっ、期待してもあなたの先輩は助けになんて来ないよ、残念だったね、ルーチェ姉さん」
せ、先輩……っ……シエルさん……
+
ドサッと、音を立てて姉さんが僕の足元に落ちた。
「魔力無しのくせに手間だけかけさせやがって……でも、これで……ふふっ、はははっ!」
ひとしきり笑い。散らばっている騎士たちに作戦の終了を伝え、姉さんを抱えてカロールが乗る馬車へと運んだ。馬車の入り口にいた御者は頭を下げて扉を開ける。扉から中に姉さんを運びソファーに寝かせた。
「おい、イアン! ルーチェ嬢に何をした?」
気絶した、姉さんをみたカロールが声を上げる。
「殿下、心配入りません。気絶させただけですよ」
「……そうか、それならよい」
フフ、これで褒美と公爵に戻れる。
出来損ないの父上、泣き崩れる母上、喜んでください。
僕は馬車の中には入らず御者に座り、王都までの帰り道、作戦の成功で顔がにやけて仕方が無かった。
――よかった。
これでいい。貴方はどうせ近くで高みの見物でしょう? 私は思いっきり空気を吸った。
「「カロール殿下、貴方がリリーナ様を愛して、私との婚約破棄を望んだ癖に……いまになって、私を探して捕まえようとするのですか!」」
精一杯、何処かにいる彼に向けて声を上げた。
それに反応するかの様にカロールも声を上げた。
「違うんだ、俺はあの女の魅了に掛かっていたんだ。あの婚約破棄は間違いなんだ……好きなのはただ一人、ルーチェ嬢、君だ」
え?
「カロール殿下が私を好き? 今更なにを言っておいでて? そんな嘘、信じるわけないわ! たくさん傷つけておきながらバカにしないで!」
――声を張り上げ、涙がでそうで唇を噛んだ。
「嘘ではない。俺の本当の気持ちなんだ戻ってきてくれ、ルーチェ嬢!」
それに首を思いっきり横に振る。
「嫌よ、絶対に戻りたくない……私は好きな人がいるの、いつも側にいてくれて照れ屋で優しい……せっ、」
その、私の言葉に誰かの声が被る。
「その次は言わせないよ姉さん」
騎士に混ざり、弟のイアンがいた。
「どうして、貴方がここにいるの!」
「フフ、どうしてだろうねー。でも、姉さんにはカロール殿下が一番お似合いだよ【拘束の糸】」
イアンが放った無数の光の糸が私の体に巻き、身動きが出来なくなる。
「やめて、イアン!」
「やめるわけないだろ、姉さん」
私に巻き付いた光りの糸はビリ、ビリと、電気を流して体を痺れさす。
「「ひやぁ、あ、あぁ……くっ、や、やだ、せ、先輩……っ! シエル先輩、助けて!」」
「ははっ、期待してもあなたの先輩は助けになんて来ないよ、残念だったね、ルーチェ姉さん」
せ、先輩……っ……シエルさん……
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ドサッと、音を立てて姉さんが僕の足元に落ちた。
「魔力無しのくせに手間だけかけさせやがって……でも、これで……ふふっ、はははっ!」
ひとしきり笑い。散らばっている騎士たちに作戦の終了を伝え、姉さんを抱えてカロールが乗る馬車へと運んだ。馬車の入り口にいた御者は頭を下げて扉を開ける。扉から中に姉さんを運びソファーに寝かせた。
「おい、イアン! ルーチェ嬢に何をした?」
気絶した、姉さんをみたカロールが声を上げる。
「殿下、心配入りません。気絶させただけですよ」
「……そうか、それならよい」
フフ、これで褒美と公爵に戻れる。
出来損ないの父上、泣き崩れる母上、喜んでください。
僕は馬車の中には入らず御者に座り、王都までの帰り道、作戦の成功で顔がにやけて仕方が無かった。
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