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ナサと冒険(一)

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 ガレーン国にきて一年が過ぎた頃。わたしはミリア亭の休みに、中央区にある冒険者ギルドにむかいギルドガードを作った。

「これがギルドカードか」

 このギルドカードの"冒険者ランク"でクエストが受けれるらしい。わたしは新米冒険者なので"Fランク"からのスタート。

 新米冒険者が受けれるクエストはおもに薬草集め、素材集め、小モンスターの討伐だとギルド受付嬢に説明を受けた。
 

 ナサに。

 この冒険者ガードは王都市民権と身分証明書――銀行の登録も入っている「ぜったいになくすなよ」と言われた。なくすと不正に使われたり、女性だとわかると狙われたり、クエスト終わりにもらえる依頼金を盗まれる。

「この話は嘘じゃない――実際にあった話だからな。気を付けろよ」

「わかった、紐をつけて首にかけるね」

 彼もユーシリン国で作ったギルドカードを持っていて。こんどの休み、北区にある出張ギルドでクエストを受けようといってくれた。

「え、ナサは亜人隊だから副業はダメなんじゃない?」
 
「ん? なんでかはわからんが。亜人隊だけ許されてるんだ。たまにAランクのアサトとロカはギルドに頼まれて、近場の大型モンスター狩りにいってる。リヤとカヤも二人で薬草集めにいってるぞ。

 ――知らなかった。それにしても、みんなタフだわ。

 

 休みの日、ナサと北区の出張ギルドの掲示板にクエストを見にきた。出張ギルドの中は他の亜人の冒険者達で賑わっている。

「これが掲示板かぁ……ほんと、いろんなクエストの紙が貼ってあるね」

 SランクからFランクまで、たくさんのクエストが張りだされていた。
 
「シッシシ、リーヤ、嬉しそうだな。それで、きょうはどんなクエを受ける?」

「うーん。場所は近くで、すぐ終わるFランクでも受けれるクエストかな?」
 
「そうだな。俺もクエストは、はじめてだから簡単なのがいいな。どれにする薬草集め、鉄鉱石……ううん、迷うな」

 どことなく、ウキウキしているナサ。

 ――フフッ、かわいい。

 

 わたし達は近くのリーロン森の卵集めというクエストを受けた。この森に住む――コッコ鳥が産むたまごは栄養素が高く、お肌がツルツルになるとかで。いま貴族の令嬢のなかで、流行っているのだとか。

「へぇ、お肌ツルツルになる卵か」
「森の中で何があるか分からないから、俺から離れるなよ」

「うん、わかってる」

 わたしたちは馬貸しのルフに馬をかりて、リーロンの森へと移動したのだった。

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