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さん

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 ラビットはそのイベントがみたくて、木の枝に座り見守っている。
 その木の下では、そんなラビットを守るために"あきれ"ながらも、アルとルフはお茶をしながら待機していた。
 
「ラビットお嬢様、ちゃんと枝につかまって、落ちないでくださいよ」
「そうにゃ」
「わかっている。私もクマさんのクッキーが食べたいわ」

「はい、はい」
 
 クマクッキーを手に入れたラビットは、二人に見守られながら、双眼鏡を片手に興奮していた。

(フォックス様――今日もステキ。テラスで紅茶を飲む姿も様になっているわ)

「早く、アルディリアさんと仲良くなって、くださいませぇ」
 

 ――あら? フォックス様の姿がテラスから消えましたけど?

 
 でも、テラスにフォックス様の側近は残っているし。
 ちょうどそこに、ノートを持って訪れたアルディリアはテラスを見渡して、フォックスの側近に話しかける姿が見える。

「フォックス殿下はどこにいったの?」

「ここだよ」

 いきなり筋肉質な腕が、ラビットを厚い胸板に抱き寄せた。

「酷いなぁ……俺をほったらかしにして、側近と一緒だなんて妬ける」

 こ、この柑橘系の香りはフォックス様ぁ!

「ぴゃぁあああぁ――! フォックス殿下がここに? まさか、ま、魔法を使ったのですか?」

 魔法は特別な人しかつかえない大切なもの。
 フォックスの腕の中で、ジタバタ暴れても離してもらえないし。
 暴れたぶん、彼の腕の力が強くなった。
   
「ラビットのせいだよ。こんな危ないところに隠れて、俺とお茶の時間を忘れたのかな?」

「あっ、それわ」

 フォックスを大好きな私が忘れるはずがない。
 だけど、私を放置してお二人が苺のケーキで話が弾むイベントの日だから、おそばにいたくなかった。

 このイベントは好きだけど……当事者にはなりたくなかったのだ。

(悪役令嬢失格ですが……いやなのです)
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