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 いきなり、手をひかれてフォルテの膝の上に座らせられた『……あっ』とっさのことで、ロッサお嬢が準備した薄手の小さな下着がズレた。

 マズイ……
 
 オレをみつめるフォルテの嬉しそうな表情に嬉しさを感じる反面……スカートのなかはとんでもない状態だ。

「タヤ、白兎、メイドの格好が似合っている」
「そ、そうか?」

 ロッサお嬢がいても気にしないのか、鼻をすりすりしてきた。
 
(……あ、オレの好きなルテの香り)
 
 いや待て、待て。ロングスカートだからフォルテに見えていないが……これはまずい。あの小さな布に元から下生えは隠れていないし、いまはその布がズレて、結んでいた腰紐がとれかけている。

 オレの大事なアレが隠れていない!

 それがモゾモゾして落ち着かない――至急、フォルテから離れて直したい。オレは反対側のソファにいるロッサお嬢に目配せして"助けてくれ"と合図すると、ロッサお嬢もそれに気付きわかったとうなずいた。

「あの、フォルテ殿下、私、用事を思い出しましたので、この話は後日でもよろしいでしょうか……?」

 え? ロッサお嬢に求めている言葉じゃないと、オレは首を振る。あれ違うの? ロッサお嬢は少し考え「あっ」と扇開き顔を隠した。

「フフ、フフフ……タヤ、やはりアレでは小さかったのですね……」
 
「ちょ、小さかった! って――確信犯かよ!」
 
「ご名答ですわ。タヤったら――なにも言わずにアレを着けみたいなので、それでいいのかと思っていましたわ」

「よくない!」

 今、フォルテの香りに少し反応してる!



 学園の応接間。オレはフォルテの膝の上で真っ赤で、反対側のロッサお嬢は扇の後ろでケラケラ笑っている。当然ながら、のけものになったフォルテは面白くないのだろう。

「2人とも、先程から何の話をしているんだ?」
「ロッサお嬢、言うなよ」

「嫌ですわ。私とタヤが話しているのは、いまタヤが身に付けている下着の話ですわ。胸はサラシにタオルを詰めたのですが。下は……フフ、私は帰りますので2人きりの時に、フォルテ殿下がご自身で確かめるといいですわ」

「やめろ、ロッサ!」

 ロッサお嬢に下と言われて、フォルテの視線がオレの下を探る様に見つめて。いつもの黒い尻尾とは違う、真っ白な尻尾を優しく撫でた。

「ひゃっ⁉︎」

 フォルテの手に反応した。今はロッサお嬢がいると、"キッ"とキツめにフォルテを見たけど、それは逆にフォルテの熱に火をつけたらしく。――さらにフォルテの香りが強くなった。

「…………っ」

「ロッサ嬢、必要な書類はテーブルの上にある。次回来るときに書いて持ってきて欲しい……それと、タヤは私が連れていく――」

(え、どこに?)

 どうなるのかわからず、オレは2人のやりとりを見つめていた。ロッサお嬢はテーブルから準備された書類を受け取ると、フォルテに深く頭を下げた。

「わかりました。フフ……存分に可愛い、タヤを甘やかしてくださいませ」

「当たり前だ、ロッサ嬢。フォックスのこともあるから、屋敷に着くまで騎士をつける。気を付けて帰ってくれ」

「まあ、ありがとうございます、失礼しますわ。フォルテ殿下、タヤをよろしくお願いします」

 もう一度、深く礼をして応接間から出ていく、ロッサお嬢を見送った。
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