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 フォルテ、カッコいい。普段の姿も素敵だけど、貴族姿のフォルテにドキンと胸が高鳴った。

(このトキメキはマズイ……顔に出てしまうし、ルテに抱きつきたくなる。――いや、いや、いまロッサお嬢のメイドだ)

 ――でも、その姿とても良い。

「ククッ。ロッサお嬢と"お付きの君"も行こうか。フォックス王子、失礼します」

「フォックス殿下、失礼いたしますわ」

 助かった。と、オレも手を離してもらい、2人の後をついて行こうとした。――だけど、フォックスはオレの手を離さず。ロッサお嬢をエスコートして行こうとした、フォルテの背に話しかけた。その時のフォックスの細い瞳は、何かを探っているかの様にも感じた。

「大切な話は2人でどうぞ、僕はロッサ嬢のメイドちゃん借りるね」

(ええ?)

 その言葉に足を止めて振り向いた、フォルテの視線の先は、おれの手をいつまでも離さないフォックス。フォルテはしばらくジッと見て、呆れた表情を浮かべた。

「まったく、あなたという人は……少々、未栄がないのではないのかな? ……こちらに向かっている途中に聞こえたが、ロッサ嬢の了解も得ず、メイドを連れて行こうとしていたね」

 呆れた表情から、冷ややかな瞳を向けたフォルテに対して。
 フォックスは捉えどころのない笑みを浮かべ。

「それが何か? 僕は2人の話の間だけ、可愛い兎のこの子とお茶がしたかっただけだけど? ここは学園だ、別に取って食いやしないし。この子だって2人を待つ間、僕とお茶したいんじゃないかな?」

 と、何故か食い下がった。
 


 学園の廊下。フォルテとフォックスの間に沈黙が流れる。フォックスに手を握られるオレと、フォルテにエスコートされるロッサお嬢は『この場を離れた方がいいのでは?』と。思っていた。

 それは周りの学生達が足を止め、ことの成り行きを楽しげに見つめている。――そう、王子2人の登場に傍観する人が増えて目立っている。

 また、要らぬ噂が立つ。
 それはフォルテも思ったらしく。

「失礼、メイドの君はどうなの?」
「わ、私ですか? こ、困ります……」

 いきなり、フォルテに話を振られて……オレは焦りながらも、出来る範囲で声を変えて話したとたん。ロッサお嬢が扇でサッと顔を隠して、フォルテは表情を変えなかったものの……ものすごい勢いで尻尾が揺れている。

 そして、手を握っていた、フォックスの手の力が抜けた。オレはその隙にフォックスの側を離れ、ロッサお嬢の所まで移動した。

「あなた、平気?」
「……はい」

「すまないが、あまり時間がないので失礼するよ、フォックス王子」

「……あ、ああ」

(何この雰囲気? オレの声色(こわいろ)が気持ち悪かったのか?)
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