女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。

にのまえ

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 学園の中はロッサお嬢が馬車の中で言っていた通り――貴族達は有る事無い事をコソコソ話している。怒らないと言っていたロッサお嬢だったけど、扇に顔を隠して額に青筋を立てていた。
 
 オレは心配になり、隣のロッサお嬢に小声で話しかける。

「(ロッサお嬢、平気か?)」
「(いまにもキレそう……でも、ここは知らんぷりをするわ)」

 貴族達の間を早足で通り過ぎて、フォルテに指定された場所へと向かおうとしたが、フォックス王子と出会い……案の定、オレたちは絡まれた。

 彼は熊クマ食堂であった時と同じ、手をヒラヒラ振り、面白いものを見つけたと――笑いながら側にやって来る。

(へぇ、この前と服装が違うからか、ホンモノの王子みたいだ)

 その、フォックスはロッサお嬢の前で胸に手を当て。

「おお、これは珍しい! 入学当初から来ていなかったロッサ嬢が学園に位くるなんて、どういう心境の変化? 何々、フォルテ王子と卒業後の話でもする為に来たのかな?」

「あら、フォックス殿下、ごきげんよう……さあ、どうでしょう?」

 ロッサお嬢は微笑んでドレスの端と端を持ち、優雅に挨拶した。オレもそれを見て真似た。フォックスの細い瞳は何故かロッサお嬢を通り越して、白兎となったオレに向く。

「ふーん。ところでロッサ嬢の後ろにいる、メイド服の可愛い兎の子は誰かな?」

 そう言い、フォックスはオレに近付こうとした、それをロッサお嬢は右手をだして阻止する。
 
「フォックス殿下……ここは社交界ではなく学園ですわ。私のメイドに、手出ししないでくださるかしら?」

「別にいいだろ? ねえ君、ロッサ嬢とフォルテ王子が話している間、僕と庭園のテラスでお茶しないかい?」

「お戯れをおやめください、フォックス殿下!」
「…………!」

 周りの学生が見守るなか――王子の笑みを浮かべた、フォックスにオレは手を握られた。

 

 手を握れてオレは思う――やっぱり、この人は苦手だと。それはフォックスに手を握れた瞬間、オレは背筋がゾワッとした……外でなら「離せ!」と言ってフォックスの手を払うが、今は学園といっても貴族の中で――ロッサお嬢のメイドとしてきているため、いまは我慢するしかない。

 それに声を出してしまえば、バレるかもしれない。
 オレは我慢しようとしたが、やはり限界になり。

「……はなっ」
「ロッサ嬢、こんな所にいたのか! ……学園に着いていると側近に報告を受けたが、時間になっても来ないから迎えにきた――ん? ところで、フォックス王子は何をされているのですか?」

 同時に発した、オレの声とフォルテの声がかぶる……。

(あ、ルテだ)

「ごきげんよう、フォルテ殿下」
「やあ、ロッサ嬢」
 
 2人のやりとりと、オレはルテの声に安心して彼を見た――そこには、いつもと違う貴族服とでもいうのか……高価な衣装を身につけたルテ――フォルテ王子がいた。
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