女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。

40

　クマ熊食堂の端のテーブルでオレ、フォルテ、反対側にロッサお嬢が座り話しはじめた。シンギとマヤは厨房で夜ご飯を作ってくれている。

　オレとフォルテは今日あった出来事を、掻い摘んでロッサお嬢に話した。ロッサお嬢はその話を聞き、ハッとして何か気付いたのか眉をひそめた。

「タヤ、フォルテ殿下……まずいわ。フォックス殿下はタヤに執着しはじめているわ。やっぱり、めずらしい回復魔法とその可愛い見た目ね」

「フォックスが執着？　オレの見た目が可愛い？」
　
「ヤツが執着だと？　タヤはすべてが可愛いが――その可愛さに、あんな残酷な事をフォックスがおこしたのか？」

　フォルテの質問に、ロッサお嬢は首を傾げ。

「うーん、真相はまだわからないですわ。今から私が話す話は、この世界に似たゲームの話になるのだけど……」

「ロッサお嬢、話してくれ」
「ロッサ嬢、お願いする」

「わかった。じゃ、話すわね。今、フォルテ殿下とタヤは恋人同士で、愛し合っているでしょう？　その2人の愛が深ければ深い程起こるの。タヤがフォックス殿下とフラグを立ててしまったから……フォックス殿下はタヤに執着していて狙っているの。まあ、今回のやり口は非情すぎだけど」

「その、ロッサ嬢な話だと。また、タヤはフォックスに狙われるのか？」

「狙われるわね。あの子が欲しい、どうしても手に入れたい。「そうだ、アレを使用して、アイツから奪えばいいんだ。」ってセリフがあったわ。この後、私がこの世界に転生したらしくて、アレの意味は思い出せなくて……わからないの」

「そうか……」

　と、フォルテが何か考える仕草をして黙った。

　

「なあロッサ、俺がフォックス殿下と会わないよう、気をつけるだけじゃダメなのかな？」

「今日のやり口だけど……気をつけるだけじゃ、ダメだと思う。フォックス殿下はもっと卑怯な手を使って、タヤを奪いにくるかもしれないわ。それでね、私のいい案があるのだけど――どう聞く？」

　それに、オレとフォルテは頷いた。


　シンギが持ってきたシュリンフライ、とパン、タルタルソース。今日は自分で好きなだけ、シュリンフライにタルタルソースをつけて食べるスタイルだ。

　食事をしながら"いい案,と言ったロッサお嬢の話を聞く。

「ロッサ嬢、タヤにあまりひどい事をさせるなよ」
「わかっているわ、タヤがする事は簡単なことよ」

　ニンマリ笑いロッサお嬢は話しはじめた。
　


　そのロッサお嬢の話の後――熊クマ食堂にオレの声があがった。

「はあ？　俺がロッサのメイドか従者になる？　無理だって、そんな教育受けてない！」

「平気よ。喋らず私の後を歩き、貴族と出会ったら私が「ごきげんよう」と声をかけるから、タヤは頭を下げるだけでいいのよ」

　――そんな簡単にできるのか？

「クク……タヤが、メイドか従者か……メイドがいいな」
　
「じゃ、メイドで決まりね。いただきまーす！」

　ロッサお嬢が楽しそうに手を叩き。テーブルの揚げたて、シュリンフライにかぶりついた。

　――ん？　ちょっと待て、メイドって……女性で、スカートじゃないか？

「ロッサお嬢、オレが女装するのか？」

「んん、サクサク、エビフライ美味しい。――そうよ、メイド服はこちらで準備しますので、フォルテ殿下はタヤの見た目を私と同じ、白兎に変える魔導具を用意してください」

　コクッと頷くルテ、どことなく楽しそうだ。

「魔導具だな、わかった。明日ここに届けてもらうよ。ロッサ嬢はタヤを明後日から、学園に連れてきてくれるか？」

「え、学園？」

「学園ですね、了解ですわ。それにフォルテ殿下と、婚約破棄の話も進めないといけませんわ」

　オレの意見を聞かず、2人だけで楽しそうに話が進んだ。