上 下
40 / 59

37

しおりを挟む
 フォルテと荷馬車でローランの街から、採取場所のシンガリアの森に移動した。森の奥では討伐が行われているのか、モンスターの鳴き声が入り口まで聞こえた。
 
 隣のルテは森を見上げ眉をひそめる。

「今日は森が……ざわついているな。私がススリとマゼラ草を鑑定スキルでみつける。見つかったら、タヤにもわかりやすく薬草に赤い印をつけるから――タヤは採取スキルで印を見つけて採取してね」

「わかった、あまり無理するなよ」
「わかってるよ」

 高い薬草鑑定スキルを持つ、フォルテだからできる技。
 フォルテはパッパと見つけ、印を付けていっている。

「じゃ、オレもやりますか【採取】」

 フォルテが薬草鑑定スキルを使い見つけ、赤い印をつけた薬草を自分の採取スキルを使い、カゴに採取していく。

 ものの数分で、カゴはススリとマゼラ草でいっぱいになる。量的にこれなら二人分ありそうだ、冒険者ギルドに報告に帰ろう、フォルテを呼ぼうとしたとき。

 リー、リンリン! ……リンリン。微量の魔力を含む、鈴の音が聞こえてきた。

(なんだ? 鈴の音が近い? ……いや、こっちに向かってきている)

「タヤ、私の近くに」
「お、おう!」

 異様な雰囲気を感じたのか、フォルテは腰の剣を抜き辺りを見回す。オレも腰の小刀ナイフを抜き、構えながらフォルテに近付いた。

 鈴の音は直ぐそこ――シンガリアの森の出入り口まできている……『くる!』と、二人同時に息を吸ったとき。
 
 近くの茂みからオレと同じ兎族の――小柄な男性3人が飛び出てくる。その小柄な3人の男性は傷だらけで、口は布で塞がれ、首には"虹色に光る鈴"がついていた。
 

「まずい! アレは"モンスターを呼び寄せる魔導具"だ――」

 
「え?」

 3人の後を。ガサガサ茂みを揺らし――虹色の鈴を付けた小柄な男性の後を追うように。2メートル以上はありそうな、大型モンスターが茂みから飛び出てきた。
 


 グオオォォ――!


「「「うっ、ンンンン――!!」」」

 3人は同時に怯える叫び声を上げたが、口は布に覆われていて、こもった声が響くだけだった。
 

「声を出すなよ、タヤ……あ、あれはグリズリー(灰色熊)だ!」

「ハァ? グリズリー? シンガリアの森の奥深くにいる……強力な熊型のモンスターだぞ! どうしてここに?」

 現れたグリズリー――モンスターの瞳は真っ赤に染まり、口からはよだれが垂れ流れていた。ひとりの兎族の男性は恐怖からか……足がもつれて転倒してしまう。


「ンン――!」
「ン――――!!」


 2人は駆け寄り、倒れた男性を守ろうとした――そこを、めがけて襲いかかるグリズリー。


 ――ダメだ、ダメだ! タヤの足は彼らに向けて動く。

 
「いくな! 待て、タヤァ――!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで

キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────…… 気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。 獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。 故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。 しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?

【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

うずみどり
BL
異世界に転移しちゃってこっちの世界は甘いものなんて全然ないしもう絶望的だ……と嘆いていた甘党男子大学生の柚木一哉(ゆのきいちや)は、自分の身体から甘い匂いがすることに気付いた。 (あれ? これは俺が大好きなみよしの豆大福の匂いでは!?) なんと一哉は気分次第で食べたことのあるスイーツの味がする身体になっていた。 甘いものなんてろくにない世界で狙われる一哉と、甘いものが嫌いなのに一哉の護衛をする黒豹獣人のロク。 二人は一哉が狙われる理由を無くす為に甘味を探す旅に出るが……。 《人物紹介》 柚木一哉(愛称チヤ、大学生19才)甘党だけど肉も好き。一人暮らしをしていたので簡単な料理は出来る。自分で作れるお菓子はクレープだけ。 女性に「ツルツルなのはちょっと引くわね。男はやっぱりモサモサしてないと」と言われてこちらの女性が苦手になった。 ベルモント・ロクサーン侯爵(通称ロク)黒豹の獣人。甘いものが嫌い。なので一哉の護衛に抜擢される。真っ黒い毛並みに見事なプルシアン・ブルーの瞳。 顔は黒豹そのものだが身体は二足歩行で、全身が天鵞絨のような毛に覆われている。爪と牙が鋭い。 ※)こちらはムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ※)Rが含まれる話はタイトルに記載されています。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

異世界転移したら獣人騎士団長に拾われました。

どらいもなか
BL
八戸 那桜(はちのへ なお)はどこにでもいる一般的な大学生だった。試験期間が終わり、友達と食事をして酒を飲んだ。酒はあまり強くないが、楽しくなってついつい飲み過ぎてしまう。友達が心配するも「大丈夫だから」と、フラフラしながら自分の足で自宅へ向かった。しかし、自宅アパートへ着くまえに倒れそのまま意識を手離した。 目を覚ますとそこは人間が滅び、獣人が住む世界だった。 (綺麗な白い虎が喋ってるし、服着てるし、二足歩行だし!) がんばり屋さんで鈍感な主人公が、騎士団長に大切にされる物語。 獣人×人間の話です。 ハッピーエンド目指します。 背後注意の回には * 付けます。 タイトルちょこっと変えました(2022/2/14)。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

【完結】この手なんの手、気になる手!

鏑木 うりこ
BL
ごく普通に暮らしていた史郎はある夜トラックに引かれて死んでしまう。目を覚ました先には自分は女神だという美少女が立っていた。 「君の残された家族たちをちょっとだけ幸せにするから、私の世界を救う手伝いをしてほしいの!」  頷いたはいいが、この女神はどうも仕事熱心ではなさそうで……。  動物に異様に好かれる人間っているじゃん?それ、俺な?  え?仲が悪い国を何とかしてくれ?俺が何とか出来るもんなのー?  怒涛の不幸からの溺愛ルート。途中から分岐が入る予定です。 溺愛が正規ルートで、IFルートに救いはないです。

ヤンデレ王子と哀れなおっさん辺境伯 恋も人生も二度目なら

音無野ウサギ
BL
ある日おっさん辺境伯ゲオハルトは美貌の第三王子リヒトにぺろりと食べられてしまいました。 しかも貴族たちに濡れ場を聞かれてしまい…… ところが権力者による性的搾取かと思われた出来事には実はもう少し深いわけが…… だって第三王子には前世の記憶があったから! といった感じの話です。おっさんがグチョグチョにされていても許してくださる方どうぞ。 濡れ場回にはタイトルに※をいれています おっさん企画を知ってから自分なりのおっさん受けってどんな形かなって考えていて生まれた話です。 この作品はムーンライトノベルズでも公開しています。

処理中です...