109 / 110
104
しおりを挟む
ルールリア王太子殿下は私の話を聞かず、側妃にせず、ロローナさんを選んだ。私は彼に必要とされていない、ただ己を犠牲にして、執務、視察と働くだけの存在。
――私の幸せは何処にあるの?
(浮気もその理由だけと。優しくそれたかった、幸せになりたかった……だから、私は離縁の道を選んだ)
カサロの森でシシと出会い。シシに愛され、優しくされ、私は必要とされた。愛する息子のチェルも生まれてから5年もたった。いま私はシシとチェル、離れているけど両親がいて、すごく幸せなの。
それに、向こうは見た目が変わったし、興味もない私のことなど気付かないだろう。
〈シシ、彼らが来たら、すぐに私たちは森をでましょう〉
〈ああ、そうした方がいいね〉
「パパ、ママ……ボク、おねむ」
〈眠そうだ。アーシャ、チェルをよろしく〉
そろそろお昼寝の時間だからか、チェルはシシの上であくびをして、いまにも眠ってしまいそうだ。私はシシの背中から、チェルを受け取り抱っこした。
「チェル、眠っていいからね」
「うん、ママ」
チェルは私の腕の中で、よほど眠かったのか、すぐにスースー寝息をあげた。シシが眠ったチェルに頬ずりをして、私にもする。
シシに頬ずりを返す、私の姿を見ていた、ロローナさんはフフッと笑う。
「あなたとその犬、なんだか夫婦みたい……あなた、犬と結婚しているの?」
犬⁉︎ その言い方は失礼すぎて、ムッとした。
シシもこの言い方に、尻尾をブンブンと振っている。
「なら、なんなのですか? ――それに、彼は犬じゃないわ、私の大切なパートナーよ!」
「パートナー? ヘェ~あなた、物好きね」
ロローナさんにシシのいいところを伝えたかったが、複数の足音が近付く音が聞こえた。どうやらルールリア王太子殿下の一行がこの場へと来たみたい。
馬に乗る騎士の後に続き、馬車に乗る王太子殿下は中からロローナさんを見つけると「ロローナ、迎えに来たよ」と声をかけた。
「ルル、迎えに来てくれたのね、ありがとう」
彼の瞳が、彼女の側にいる私たちをとらえた。
その途端、彼が薬指に付けている指輪が淡く光る。その光がなんなのかはわからないけど、すぐに、この場から離れて方がいいと感じた。
ロローナさんが騎士に、馬車までエスコートされる。
〈シシ、ロローナさんはルールリア王太子殿下と出会うことができたわ。チェルも眠ってしまったから、私たちは行きましょう〉
〈アイツが……そうか。アーシャわかった、行こう〉
シシと念話を交わして、私たちはこの場を去ろうとしたが、ルールリア王太子殿下が「待て、アーシャ嬢」と私の名前を呼んだ。
「……君は、見た目が変わったけど、アーシャ嬢だろ? こんなところにいたのか……その身なり、そうとう生活に困っているだろう? 城へ、その子と一緒に帰っておいで」
私がそうとう生活に困っている? 今、私が身に付けている、動きやすい服を見て言っているみたい。――それと、その子? チェルのことを言っているの?
「アーシャ嬢、帰っておいで」
嫌な事だし。
無理な話しだ。
「えっと……殿下にバレているのなら、ハッキリ言います。私たちは離縁しています。それに私はいま幸せで、生活もすこしも困っていません」
チェルを胸に抱っこしたまま頭を下げて、シシと離れようとした――その私に。
「その子は僕との子供だろう? 王家に伝わる魔導具の指輪が示している、その子は王家の血を引く子供だ。アーシャ嬢をこのまま返すわけにはいかない。お前ら、アーシャ嬢を止めろ」
ルールリア王太子殿下の命令で近衛騎士、騎士団が私達を囲んだ。
――私の幸せは何処にあるの?
(浮気もその理由だけと。優しくそれたかった、幸せになりたかった……だから、私は離縁の道を選んだ)
カサロの森でシシと出会い。シシに愛され、優しくされ、私は必要とされた。愛する息子のチェルも生まれてから5年もたった。いま私はシシとチェル、離れているけど両親がいて、すごく幸せなの。
それに、向こうは見た目が変わったし、興味もない私のことなど気付かないだろう。
〈シシ、彼らが来たら、すぐに私たちは森をでましょう〉
〈ああ、そうした方がいいね〉
「パパ、ママ……ボク、おねむ」
〈眠そうだ。アーシャ、チェルをよろしく〉
そろそろお昼寝の時間だからか、チェルはシシの上であくびをして、いまにも眠ってしまいそうだ。私はシシの背中から、チェルを受け取り抱っこした。
「チェル、眠っていいからね」
「うん、ママ」
チェルは私の腕の中で、よほど眠かったのか、すぐにスースー寝息をあげた。シシが眠ったチェルに頬ずりをして、私にもする。
シシに頬ずりを返す、私の姿を見ていた、ロローナさんはフフッと笑う。
「あなたとその犬、なんだか夫婦みたい……あなた、犬と結婚しているの?」
犬⁉︎ その言い方は失礼すぎて、ムッとした。
シシもこの言い方に、尻尾をブンブンと振っている。
「なら、なんなのですか? ――それに、彼は犬じゃないわ、私の大切なパートナーよ!」
「パートナー? ヘェ~あなた、物好きね」
ロローナさんにシシのいいところを伝えたかったが、複数の足音が近付く音が聞こえた。どうやらルールリア王太子殿下の一行がこの場へと来たみたい。
馬に乗る騎士の後に続き、馬車に乗る王太子殿下は中からロローナさんを見つけると「ロローナ、迎えに来たよ」と声をかけた。
「ルル、迎えに来てくれたのね、ありがとう」
彼の瞳が、彼女の側にいる私たちをとらえた。
その途端、彼が薬指に付けている指輪が淡く光る。その光がなんなのかはわからないけど、すぐに、この場から離れて方がいいと感じた。
ロローナさんが騎士に、馬車までエスコートされる。
〈シシ、ロローナさんはルールリア王太子殿下と出会うことができたわ。チェルも眠ってしまったから、私たちは行きましょう〉
〈アイツが……そうか。アーシャわかった、行こう〉
シシと念話を交わして、私たちはこの場を去ろうとしたが、ルールリア王太子殿下が「待て、アーシャ嬢」と私の名前を呼んだ。
「……君は、見た目が変わったけど、アーシャ嬢だろ? こんなところにいたのか……その身なり、そうとう生活に困っているだろう? 城へ、その子と一緒に帰っておいで」
私がそうとう生活に困っている? 今、私が身に付けている、動きやすい服を見て言っているみたい。――それと、その子? チェルのことを言っているの?
「アーシャ嬢、帰っておいで」
嫌な事だし。
無理な話しだ。
「えっと……殿下にバレているのなら、ハッキリ言います。私たちは離縁しています。それに私はいま幸せで、生活もすこしも困っていません」
チェルを胸に抱っこしたまま頭を下げて、シシと離れようとした――その私に。
「その子は僕との子供だろう? 王家に伝わる魔導具の指輪が示している、その子は王家の血を引く子供だ。アーシャ嬢をこのまま返すわけにはいかない。お前ら、アーシャ嬢を止めろ」
ルールリア王太子殿下の命令で近衛騎士、騎士団が私達を囲んだ。
121
お気に入りに追加
451
あなたにおすすめの小説
【本編完結】隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として王女を娶ることになりました。三国からだったのでそれぞれの王女を貰い受けます。
しろねこ。
恋愛
三国から攻め入られ、四面楚歌の絶体絶命の危機だったけど、何とか戦を終わらせられました。
つきましては和平の為の政略結婚に移ります。
冷酷と呼ばれる第一王子。
脳筋マッチョの第二王子。
要領良しな腹黒第三王子。
選ぶのは三人の難ありな王子様方。
宝石と貴金属が有名なパルス国。
騎士と聖女がいるシェスタ国。
緑が多く農業盛んなセラフィム国。
それぞれの国から王女を貰い受けたいと思います。
戦を仕掛けた事を後悔してもらいましょう。
ご都合主義、ハピエン、両片想い大好きな作者による作品です。
現在10万字以上となっています、私の作品で一番長いです。
基本甘々です。
同名キャラにて、様々な作品を書いています。
作品によりキャラの性格、立場が違いますので、それぞれの差分をお楽しみ下さい。
全員ではないですが、イメージイラストあります。
皆様の心に残るような、そして自分の好みを詰め込んだ甘々な作品を書いていきますので、よろしくお願い致します(*´ω`*)
カクヨムさんでも投稿中で、そちらでコンテスト参加している作品となりますm(_ _)m
小説家になろうさんでも掲載中。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる