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 ワーグの子供は突然あらわらた私たちに気付き「グゥ――」っと威嚇した。そうだろう、知らない人物がゾロゾロと現れたのだから驚くのもわかる。

「驚かせてごめんね。でも私たちはあなたに危害や、捕まえにきたんじゃないから」

「グゥ、グゥ?」

 威嚇をやめたワーグの子供は、私たちに何か訴えかけるように話すが。

 この子が何を喋ったのか分からず、シシを見ても、相手が子供だからか首を傾げていた。誰もがこの子の言葉を理解できないのかと思ったが、抱っこしていた子フェンリルのチェルが「ボク、わかるよ」と私の腕中から飛び降りて、ワーグの前にトテトテ走って行く。

「ボクの名前はチェル。君の名前がわからないから、グゥちゃんって呼ぶよ」
 
「グゥ!」

 ワーグの子供――グゥちゃんは自分の言葉がわかる、チェルに少し心を許した。2人の「グゥ」「え、そうなの」ほんわなやりとりをはじめた。

 ひと通り、グゥの話を聞いたチェルは私に。

「ママ、あのね」

 と、どうやらグゥちゃんはこの場に、まだお父さんとお母さんがいるらしく、ここを離れたくないと言っているみたい。

「ここに、お前さんの両親がいるのか。よし! ――この洞窟に瘴気が出ないのなら、グゥはここにいてもいいぞ。食べ物はワシが持ってくる」

 ドワーフの長、スノがグゥを任せろと胸を叩く。グゥも「ここに、いていい」と言われて、嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねた。

「よかったね、グゥちゃん!」
「グゥ――!」
 
「よかったなグゥ。さぁ、はやく採掘穴の調査をはじめよう」

 アギの言葉で私は杖を構え、グゥがいた後ろの採掘穴を鑑定魔法を使い鑑定した。

(多少の瘴気は残るものの、浄化は出来たみたいだ)

「シシ、みんな。もう一度、浄化魔法を使えば大丈夫だと思うわ」

「ああ、大丈夫そうだな」
 
 魔法で鑑定する私の横で、シシも気配を探って頷く。

「それはよかった――でもスノ、すぐに酒を持ってポス様に会いに行って、そのスッカラカンの神球に神力をいれてもらえ。そうすれば採掘中に瘴気が出てもその球で祓える」

「そうじゃな。明日にでもドワーフ酒を持って、ポスに会いに行ってくる」

「スノ、忘れんなよ」
「……忘れんよ」

 スノとアギの話を聞きながら、私は採掘穴に浄化魔法をかけた。魔法をかけ終わるとアギが寄ってきて、穴に持ってきた生命の木――トマの枝を置いた。

「グゥの両親への供物だ。グゥのことは俺たちが守る、だから安らかに眠れ――スノ、この穴は採掘をやめて埋めてしまった方がいい」

「そうじゃな。……じゃが、消耗した体力がまだ回復しておらんから、みんなに伝えてから埋めるとしよう」

「だな」

 だったら私がと、杖を構えようとしたがシシに止められる。この地はドワーフ達のもの、彼らには彼らのやり方があると、シシは教えてくれた。
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