上 下
75 / 110

70

しおりを挟む
 翌日。オールの森の北と東側の浄化を終えて、私たちはお昼頃シシの背中に乗り。――この大陸の西側、海沿いのリポの森を目指していた。途中で見つけた海沿いの街の近くでシシの休みと。チェルが書いた手紙を描いた絵、スノーロップの花と一緒にナナちゃんへとフクロウで送った。

 ナナちゃんからの手紙の返信は明日くるだろう。その返信の手紙をワクワク持つ、チェルの可愛い姿を思いうべながら。私はオレンジ水をタップリボールで作り、氷魔法で冷やした。

「シシ、チェル、オレンジ水出来たわよ」
「アーシャ、ありがとう。ん~オレンジ水、美味い!」
「ママ、ボクも飲みたい、欲しい」
「はい、はい。チェルの分もあるわよ」

 小さなボールに冷えたオレンジ水をいれて、チェルの前に置き、自分のオレンジ水に氷をコロンコロンと出した。

「ふうっ~オレンジ水おいしい。シシ、ここは海沿いに近い街だからか、美味しそうな匂いがするわね」

 ――多分だけど、この匂いはイカ焼きの匂いかしら?

 シシとチェルは鼻をクンクン動かして、ペロンと舌舐めずりした。

「ああ、いい匂いがするな。買っていくか」
「ボク食べたい」
「じゃここでチェルと一緒に待ってて、買ってくるわね」

 私はお財布を持ち、いい香りがする街へと向かった。

「いらっしゃい! 粋ないいの入ってるよ~!」
「お客さん、見ていってね! オマケするよ」
「焼きたてだよ、見てって~!」

 店の前で、客引きをする活気の良い街の中を歩き、いい匂いの正体を見つけた。

(え、イカカ焼き?)

 イカカ焼きとは、イカ焼きのことだった。隣の店ではたこ焼きに似たエビン焼き(エビ焼き)も売っている。私は美味しそうだからと、両方を買って街を出ようとした。その私の足元によれた紙が、風に乗って飛んできた。
 
 ――号外?

 よれた紙を拾った私は、その記事を読み驚いた。
 この書かれた記事が嘘かもと思い、もういいど読み、笑みが漏れる。

(嬉しい。ようやく、ようやくだ。ロローナさんに聖女の力が芽生えて、彼女が聖女になったわ。これで、私が浄化に出なくても大丈夫だわ)

 シシに、早くこの記事の内容を伝えないと、と。私は焼きたてのイカカ焼きとエビン焼き、この号外の紙を持って、ウキウキとシシとチェルが待つ場所へと戻った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

【完結】婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。

里海慧
恋愛
公明正大で優秀な王太子フィルレスが貴族が集まる夜会で、帝国の皇女から婚約破棄された。 その現場に居合わせた宮廷治癒士のラティシアは、自分の過去を思い出す。 ラティシアもかつて、義妹に婚約者と実家の伯爵家を奪われ追い出されていた。今では治癒士として、王城で働いている。 数日後、王城の治癒室へ急患がやってきたが、実は変化の魔法をかけたフィルレスだった。 一般の治癒士が王族の身体に触れるのは処罰の対象になる。 自分の不運を呪いながらも、同じ経験をしたフィルレスを不憫に思い、婚約破棄され傷ついた心が軽くなればと懸命に慰めた。 翌日フィルレスの呼び出しに応じると、なんと腕を買われて専属治癒士へと抜擢される。 喜ぶラティシアだが、出勤初日になぜかドレスに着替えさせられ連れてこられたのは、例の夜会があった会場だ。 そこで告げられる衝撃の事実。 いつのまにかラティシアがフィルレスの婚約者になっていた。 実はフィルレスが腹黒だと知り、なんとか婚約解消してもらおうと奔走するも——? 腹黒王太子と仕事に生きる治癒士のラブストーリー。 ※全80話、完結まで執筆済みです。3/24完結。

寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ
恋愛
エリーゼは、王妃になる予定だった。 故郷を失い後ろ盾を失くし代わりに王妃として選ばれたのは後から妃候補となった侯爵令嬢だった。 聖女の資格を持ち国に貢献した暁に正妃となりエリーゼは側妃となったが夜の渡りもなく周りから冷遇される日々を送っていた。 日陰の日々を送る中、婚約者であり唯一の理解者にも忘れされる中。 長らく魔物の侵略を受けていた東の大陸を取り戻したことでとある騎士に妃を下賜することとなったのだが、選ばれたのはエリーゼだった。 下賜される相手は冷たく人をよせつけず、猛毒を持つ薔薇の貴公子と呼ばれる男だった。 用済みになったエリーゼは殺されるのかと思ったが… 「私は貴女以外に妻を持つ気はない」 愛されることはないと思っていたのに何故か甘い言葉に甘い笑顔を向けられてしまう。 その頃、すべてを手に入れた側妃から正妃となった聖女に不幸が訪れるのだった。

[完結]病弱を言い訳に使う妹

みちこ
恋愛
病弱を言い訳にしてワガママ放題な妹にもう我慢出来ません 今日こそはざまぁしてみせます

【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに 11年後、もう一人 聖女認定された。 王子は同じ聖女なら美人がいいと 元の聖女を偽物として追放した。 後に二人に天罰が降る。 これが この体に入る前の世界で読んだ Web小説の本編。 だけど、読者からの激しいクレームに遭い 救済続編が書かれた。 その激しいクレームを入れた 読者の一人が私だった。 異世界の追放予定の聖女の中に 入り込んだ私は小説の知識を 活用して対策をした。 大人しく追放なんてさせない! * 作り話です。 * 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。 * 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。 * 掲載は3日に一度。

あなたを愛していないわたしは、嫉妬などしませんよ?

ふまさ
恋愛
 目の前で抱き合う、婚約者であるダレルと、見知らぬ令嬢。立ち尽くすアレクシアに向き直ったダレルは、唐突に「きみには失望したよ」と吐き捨てた。 「ぼくとバーサは、ただの友人関係だ。なのにきみは、ぼくたちの仲を誤解して、バーサを虐めていたんだってね」  ダレルがバーサを庇うように抱き締めながら、アレクシアを睨み付けてくる。一方のアレクシアは、ぽかんとしていた。 「……あの。わたし、そのバーサという方とはじめてお会いしたのですが」  バーサは、まあ、と涙を滲ませた。 「そんな言い訳するなんて、ひどいですわ! 子爵令嬢のあなたは、伯爵令嬢のわたしに逆らうことなどできないでしょうと、あたしを打ちながら笑っていたではありませんか?!」 「? はあ。あなたは、子爵令嬢なのですね」  覚えがなさ過ぎて、怒りすらわいてこないアレクシア。業を煮やしたように、ダレルは声を荒げた。 「お前! さっきからその態度は何だ!!」  アレクシアは、そう言われましても、と顎に手を当てた。 「──わたしがあなた方の仲を誤解していたとして、それがどうしたというのですか?」 「だ、だから。バーサに嫉妬して、だから、ぼくの知らないとこでバーサを虐めて、ぼくから離れさせようと……っ」 「そこが理解できません。そもそもそのような嫉妬は、相手を愛しているからこそ、するものではないのですか?」  ダレルは、え、と口を半開きにした。  この作品は、小説家になろう様でも掲載しています。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【完結】ずっと大好きでした。

猫石
恋愛
私、クローディア・ナジェリィは婚約者がいる。 それは、学年一モテると持て囃されているサローイン・レダン様。 10歳の時に婚約者になり、それから少しづつ愛を育んできた。 少なくとも私はそのつもりだった。 でも彼は違った。 運命の人と結婚したい、と、婚約の保留を申し出たのだ。 あなたの瞳には私が映らなくて、悲しくて、寂しくて、辛い。 だから、私は賭けに出た。 運命の人が、あなたかどうか、知るために。 ★息抜き作品です ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 小説家になろう様にも投稿しています なろうさんにて 日別総合ランキング3位 日別恋愛ランキング3位 ありがとうございますm(*_ _)m

処理中です...