72 / 110
67
しおりを挟む
ここはアウスターの王都、王城のルールリアの執務室。ルールリアは執務をしながら、執務机に置いたランタン魔吸い石を見てニンマリした。
(怪しかったが。あの商人がくれたランタンは凄い効果だ。これさえあれば瘴気が払える)
王都の周りに遠征した騎士団から、森の瘴気をこのランタンで払ったと報告を受けた。しかし、騎士団が瘴気を払ったと国民達に伝えるのは、少々信憑性にかける。
――こう国民が喜ぶ人物……誰がよいか。
「そうだ、ロローナを聖女にすれば良い。彼女なら上手く聖女の役をやってくれるだろうし、文句ばかり言う父上と母上も喜ぶだろう」
ルールリアはすぐ側近と近衛騎士ラルを呼び、王都にある新聞社へと向かわせた。翌日、アウスター国に聖女誕生と書かれた、号外が国民達に配られた。
この号外をみた国民は喜び、聖女誕生を喜んだ。
そしてルールリアがロローナに聖女になったと伝えると、彼女は大喜びだった。
「え、私が聖女になったの? すごい~がんばる」
「1週間後、国民へお披露目をするから、新しいドレスを作ろう」
「うれしい! ドレスは可愛いのがいいわ」
そんなこんなで王都に、ニセの聖女ロローナが誕生したのだった。
+
王都から離れた南のオールの森にいる。私たちは早朝、前日訪れたエルフの村へと向かい、浄化魔法を使用した。長のアギの体調もよくなり、エルフ達、生命の木――精霊のトマも元気になった。
「これでよし。しばらくは大丈夫だと思います」
「ありがとう、体が嘘みたいに軽い。こんな日がくるとは思っていなかった。シシの嫁さんがきてくれて助かった」
〈ええ、ほんと後少し遅かったら危なかったわね。ほんとうに助かったわ。お礼にこれを持って行って〉
精霊のトマから、生命の木の枝で作ったお守りを家族分もらった。この生命の木の枝は、触れば怪我の回復をしてくれる貴重な物だ。
「貴重な物をありがとうございます、大切に使います」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「悪いな、大切に使わせてもらうよ」
エルフの村はこれで安心だと。私たちはオールの森を見てまわるため、森へ戻ろうとした。その私たちをアギが呼び止めて、西側の海近くにあるリポの森に住む、ドワーフたちを助けてやってほしいと言った。
「ドワーフに、何かあったのか?」
「ああ、オレたちとドワーフはあまり仲が良くはないが……あちらの森も瘴気に覆われたと。今朝、ドワーフが使用する「知らせ鳥」が知らせにきた」
「なに、知らせ鳥がきたのか!」
アギは頷く。
「ドワーフたちは知らせ鳥を飛ばして、他の種族に助けを求めている。準備ができしだい向かおうと思うが……オレたちも瘴気が消えたばかりで、すぐには行けないし。他の種族が、どう動いたのかわからない」
「わかった。オールの森を見まわったすぐ、西のリポの森に行くよ」
ありがとう。と、私たちはアギたちと別れ、エルフ村からオールの森に戻った。
(怪しかったが。あの商人がくれたランタンは凄い効果だ。これさえあれば瘴気が払える)
王都の周りに遠征した騎士団から、森の瘴気をこのランタンで払ったと報告を受けた。しかし、騎士団が瘴気を払ったと国民達に伝えるのは、少々信憑性にかける。
――こう国民が喜ぶ人物……誰がよいか。
「そうだ、ロローナを聖女にすれば良い。彼女なら上手く聖女の役をやってくれるだろうし、文句ばかり言う父上と母上も喜ぶだろう」
ルールリアはすぐ側近と近衛騎士ラルを呼び、王都にある新聞社へと向かわせた。翌日、アウスター国に聖女誕生と書かれた、号外が国民達に配られた。
この号外をみた国民は喜び、聖女誕生を喜んだ。
そしてルールリアがロローナに聖女になったと伝えると、彼女は大喜びだった。
「え、私が聖女になったの? すごい~がんばる」
「1週間後、国民へお披露目をするから、新しいドレスを作ろう」
「うれしい! ドレスは可愛いのがいいわ」
そんなこんなで王都に、ニセの聖女ロローナが誕生したのだった。
+
王都から離れた南のオールの森にいる。私たちは早朝、前日訪れたエルフの村へと向かい、浄化魔法を使用した。長のアギの体調もよくなり、エルフ達、生命の木――精霊のトマも元気になった。
「これでよし。しばらくは大丈夫だと思います」
「ありがとう、体が嘘みたいに軽い。こんな日がくるとは思っていなかった。シシの嫁さんがきてくれて助かった」
〈ええ、ほんと後少し遅かったら危なかったわね。ほんとうに助かったわ。お礼にこれを持って行って〉
精霊のトマから、生命の木の枝で作ったお守りを家族分もらった。この生命の木の枝は、触れば怪我の回復をしてくれる貴重な物だ。
「貴重な物をありがとうございます、大切に使います」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「悪いな、大切に使わせてもらうよ」
エルフの村はこれで安心だと。私たちはオールの森を見てまわるため、森へ戻ろうとした。その私たちをアギが呼び止めて、西側の海近くにあるリポの森に住む、ドワーフたちを助けてやってほしいと言った。
「ドワーフに、何かあったのか?」
「ああ、オレたちとドワーフはあまり仲が良くはないが……あちらの森も瘴気に覆われたと。今朝、ドワーフが使用する「知らせ鳥」が知らせにきた」
「なに、知らせ鳥がきたのか!」
アギは頷く。
「ドワーフたちは知らせ鳥を飛ばして、他の種族に助けを求めている。準備ができしだい向かおうと思うが……オレたちも瘴気が消えたばかりで、すぐには行けないし。他の種族が、どう動いたのかわからない」
「わかった。オールの森を見まわったすぐ、西のリポの森に行くよ」
ありがとう。と、私たちはアギたちと別れ、エルフ村からオールの森に戻った。
64
あなたにおすすめの小説
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
【完結】わたしの婚約者には愛する人がいる
春野オカリナ
恋愛
母は私を「なんて彼ににているのかしら、髪と瞳の色が同じならまるで生き写しだわ」そう言って赤い長い爪で私の顔をなぞる仕種をしている。
父は私に「お前さえいなければ、私は自由でいられるのだ」そう言って詰る。
私は両親に愛されていない。生まれてきてはいけない存在なのだから。
だから、屋敷でも息をひそめる様に生きるしかなかった。
父は私が生まれると直ぐに家を出て、愛人と暮らしている。いや、彼の言い分だと愛人が本当の妻なのだと言っている。
母は父に恋人がいるのを知っていて、結婚したのだから…
父の愛人は平民だった。そして二人の間には私の一つ下の異母妹がいる。父は彼女を溺愛していた。
異母妹は平民の母親そっくりな顔立ちをしている。明るく天使の様な彼女に惹かれる男性は多い。私の婚約者もその一人だった。
母が死んで3か月後に彼らは、公爵家にやって来た。はっきり言って煩わしい事この上ない。
家族に愛されずに育った主人公が愛し愛される事に臆病で、地味な風貌に変装して、学園生活を送りながら成長していく物語です。
※旧「先生、私を悪い女にしてください」の改訂版です。
病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる