浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と共に幸せに暮らします。

にのまえ

文字の大きさ
60 / 110

55

しおりを挟む
 精霊に続いてエルフまでいるなんて……「金髪、碧眼、色白、細身、耳長カッコいい! ヒヤッホォー!」と叫んでいた、前世の自分を思い出した。こちらに転生したあとも、エルフにかんする書物を何冊か読んだけど。どれも仮想すぎる物語ばかりで――エルフは物語の中にだけに存在している、架空の人物だと思っていた。

「アーシャ、チェル、オールの森は今、非常に危険な状態だ、ボクの側から離れることは許さない。特にアーシャ! 森で珍しい草、花、動物をみて研究がしたくなっても。この浄化が終わるまでは近寄らない! 本気で怒るからね」

「ママ、パパの言うことを聞くの! やぶったらプンプンする!」
 
「は、はい。聞きます」

 シシだけではなく、チェルにまで心配はかけられない。けど、森に入る前に、私はやっておきたいことがあった。

「でもシシ。5年前と森の大きさが変わっているかもしれないから、一度オールの森全体見ておきたいわ。ホウキで飛んで見てきてもいい?」

 私がこの森に訪れたのは5年前だ。
 どこが変わったのか、空から見ておきたい。

「わかった。でもアーシャ、1人では行くのはダメだ、ボクとチェルも一緒にいく」

「……ええ、わかったわ」

 お昼ご飯の片付けをしたあと、チェルと私はシシの背中に乗って飛空魔法をかけた。シシの体が魔法で浮き上がり、空をかけ、オールの森が一望できる。

「どう、どこか変わった?」
「すこし待って、いま地図を見て確認しているから」
「わかった」

 私が持っている、5年前の地図と今の森を見比べた。元々広いオールの森は5年前に比べて、更に面積を広げたようだ。

(だからか、どのあたりの瘴気が濃いのかわからない。やはり確認しながら、森の中を歩くしかないか)

 とりあえず、目に見えた瘴気の箇所を地図に記した。

「ママ、見て! 下に大きな木があるよ」
「まぁ、ほんと、すごく大きな木ね」

 チェルが見つけた木は『迷子防止の木』と言われる木。いくらサーチの魔法、地図を持ってこの森には入っても、広いオールの森では道に迷う人が多かった。そのため、森の各箇所の木に魔法がかられている。魔法がかけられた木に触れると、オールの森の地図が浮かび、行きたい道を示してくれる。

 他の森もだけど、この森は人一倍道に迷う人が多かったため。施設、テーマパークの案内板をイメージした。

 5年前、迷子防止の木はここまで育っていなかった。こんなにも木々、緑が育つよい土地なのに……今、瘴気が溢れてしまい、ここに住む動物たちが魔物化している。早く浄化を始めなくてはならない。

 ――私は空から眺め、地図に変わった箇所をペンで記した。

「シシ、聞いて。5年前よりもオールの森の面積が広くなっているわ。だから、浄化に時間がかかると思うの。――それと、シシが言ったエルフ族にも会えないかしら?」

 さっき森から聞こえた「助けて」の声が彼らだとすると。彼らが住む場所まで、瘴気が入り込んでいることになる。――そうなのだとしたら。オールの森の浄化は彼らの住処まで、浄化しないと終わったことにはならないと、私は思う。

「アーシャ、彼らがボクたちを受け入れてくれるかは、森に入らないとわからない」

「そう、わかった。シシ、チェル、明日、オールの森の南側。国境近くの森から浄化を始めようと思うわ」

 浄化をはじめる場所を決めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【完結】わたしの婚約者には愛する人がいる

春野オカリナ
恋愛
 母は私を「なんて彼ににているのかしら、髪と瞳の色が同じならまるで生き写しだわ」そう言って赤い長い爪で私の顔をなぞる仕種をしている。  父は私に「お前さえいなければ、私は自由でいられるのだ」そう言って詰る。  私は両親に愛されていない。生まれてきてはいけない存在なのだから。  だから、屋敷でも息をひそめる様に生きるしかなかった。  父は私が生まれると直ぐに家を出て、愛人と暮らしている。いや、彼の言い分だと愛人が本当の妻なのだと言っている。  母は父に恋人がいるのを知っていて、結婚したのだから…  父の愛人は平民だった。そして二人の間には私の一つ下の異母妹がいる。父は彼女を溺愛していた。  異母妹は平民の母親そっくりな顔立ちをしている。明るく天使の様な彼女に惹かれる男性は多い。私の婚約者もその一人だった。  母が死んで3か月後に彼らは、公爵家にやって来た。はっきり言って煩わしい事この上ない。  家族に愛されずに育った主人公が愛し愛される事に臆病で、地味な風貌に変装して、学園生活を送りながら成長していく物語です。  ※旧「先生、私を悪い女にしてください」の改訂版です。

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

処理中です...