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(閑話)ロローナの転生が遅れた理由

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 私は伯爵家の令嬢、ロローナ・ギロンド。このファンタジー恋愛小説のヒロインで、前世の記憶がある転生者。女神にこの異世界に転生できると聞いてワクワクした。

 でも待って。

 これって攻略対象がいる乙女ゲームとは違い、小説だから恋愛の相手は1人。たしか、脇役もいたけど、結ばれるのは王子よね。

 ん――、私ってめんどくさいことが嫌いなの。

 だから私はこう考えた。私には魅了魔法があるし、めんどうな学園に通わず3年後に15? 16? の若くて、可愛い私がドーンと登場するの。

 いらない……あ、出番が終わった悪役さんにはサッサと退場してもらって、ヒーローとパパッと結ばれちゃえばいい。

 女神にそのようにしてもらえれば。私はこの辺でなんにもせず、のんびり3年間過ごせるし。大嫌いな学校とか、勉強もしなくていい。転生してすぐお金持ちのヒーローと出会い、すぐ結婚して、毎日ゴロゴロして贅沢ができる。

 ――私ってアッタマいい!

 この事を女神にお願いしたら「あなた珍しいわね、いいわよ」って言ってくれた。せっかく異世界に転生するのだから面倒ごとは"なし"で、ラクして、楽しく生きたい。痛いのは嫌いだし、悪女さんなんかに虐められたくないもん。

 そうだ。小説だと私がヒロインで聖女らしいけど、私の出番は最後の見せ場のときよ。それまでのお膳立ては、誰かがやってくれるはずだから――その人に任せたわ!


 ウキウキと魂の姿で我儘を言う少女を、女神は時がくるまで眠らせた。女神は両親から愛を貰えず育った少女に、新たらな異世界で愛がある人生を渡そうと思っていたのだ。

(この魂、子供から育つのが嫌なのなら。わたしが作った魂を入れて、その魂が15か、16に育ったらこの少女の魂を入れればいい)

 女神はこのとき準備していた渡す力を、先に転生したアーシャへと授け――目の前で眠る魂に。

(あなたに渡すはずだった力以上の力を使い、新たな魂を作った。あなたばかり優遇するとわたしが神様に怒られるので。作った力はあの人に渡し、あなたにはもう何も渡せない――それは、あなたが望んだことだから仕方がないわね)

 そして時が来て、少女が望んだ歳に転生したヒロインのロローナは王子と意図的に出会う。このとき、王子がロローナに惹かれたのは彼女の見た目。
 
 彼女は聖女の力を持たない。ヒロイン特典のお粗末な魅了魔法しか持たない、女の子だということは女神しか知らない。
 
 ――ヒロインで、聖女の、伯爵家令嬢ロローナ! 爆誕!

 と、少女はこの異世界に転生した。
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