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その頃、王城では

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 王国所属の騎士団は、王都から出て東の森でオオトカゲの魔物との戦いに苦戦していた。ほんの数日前まで、いくら瘴気をまとい巨大化したオオトカゲでも。騎士団長、副団長、騎士団員たちがいれば余裕で戦えていた。

 だが南の森の一件から、状態が違ってきている。

「クッ! ……団長おかしい! 騎士団一の俺の剣がはじかれる!」
 
「オオトカゲの尻尾攻撃が当たっただけで、鎧が壊れた!」
 
「こちら魔術師隊。全員、魔力切れで戦えません!」
「負傷者数名、回復係の聖職者! はやく治療してくれ!」

「無理です! 負傷者が多く我々の回復魔法では間に合いません! ここは、一旦引いた方がいいと思われます!」

 その言葉を持っていたと言わんばかりに。騎士団長は自分だけが持っている魔物焼けの煙玉を使い、オオトカゲの攻撃範囲から、負傷者を担ぎ逃げ延びた。

「「「助かった――」」」

 森を抜けて騎士団、魔術師隊、聖職者たちは安堵したし。この魔物避けの煙玉がなかったら……もっと多くの怪我人いや『全滅していたかもしれない』と誰もが思っていた。

 ――いま使用した魔物避けの煙玉は。

 前王太子妃の離れにある普段は誰も立ち寄らない、埃を被った研究室を粗探しした時に見つけたもの。――この煙玉を死傷者を出した南の森で、一応持ってきていた騎士団長がいちかばちか使用したところ。その魔物避けの煙玉は大型の魔物が痺れさせ、煙に巻くといった優れものだったが。

 誰1人として、その煙玉を作った本人の名前を口に出さなかった。当時は「そんなもの効くはずがない」と、彼女の研究をバカにしていた。だから「王太子妃の研究は本物だった」と彼らは、今更いえないのだ。

「魔術師、この煙玉を作れないのか?」
「その煙玉……我々の力をもちましても……錬金術師もいまだ研究中だと申しておりました」

 騎士団長は後5個かと。残り少ない魔物よけの煙玉を見つめた。

 

 一方変わって現王太子妃は。王太子殿下の執務室で、簡単なハンコ押しの執務を手伝っていた。そのに慌てた様子の宰相代理が入ってきて、東の森に向かった騎士団、魔術師、聖職者がオオトカゲの魔物から逃げたと報告した。

 その報告を受けた、ルールリア王太子殿下は眉をひそめた。

「宰相代理、その報告は誠か?」
「はい、ただいま早馬にて報告を受けました」
「その話はおかしいな。いきなり魔物が強くなったのか? ほんの前まで、簡単に倒せた魔物ではないのか?」

 簡単な書類にハンコを押しながら、聞き耳を立てていた齢27となったロローナは「遂に私の出番が来ちゃった?」と、表情には出さず心の中でニンマリしていた。

 彼女は女神に伝えていた通り、16歳のときにギロンド伯爵家の令嬢として転生した。そこから始まる彼女の令嬢としての生活は――美味し食事、やさしい両親、何もせずとも与えられる贅沢な日々。また舞踏会、お茶会といった素敵な人たちに囲まれた。

(これを体験せず、ルールリアとの結婚は考えれない!)

 彼女が当初、計画していた15、16歳に王太子殿下と出会う計画は早々に破綻した。――しかし彼女の考えは。女神と会い、女神に伝えた頃と、なんら変わっていない。

 ――私がヒロインで聖女、すべてを手に入れて、楽しく幸せになるわ。
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