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 その瞳、この男は私がアーシャなのか探っている。

 今回、ラルが選ばれてシシカバに来た理由は。婚約者となった子供の頃、学園、殿下と結婚をして王太子妃なった私を。友、幼馴染、近衛騎士としてルールリア殿下の近くで見てきた。

(それとも、あの結婚の申し込みと関係があったりして……なぁーんて冗談。さてと、この場をどう切り抜けようかしら)

 いまはシシの魔法で眠っている、チェルが目を覚ますかも知れないし。シシがキレたら……冒険者ギルド自体が消えてなくなる。

 私は気持ちを落ち着かせて、低い声のまま答えた。

「ええ、毒肉を見つけたのは私ですが。それがどうか致しましたか?」

「魔物の毒肉が分かるなんて、すごい能力ではありませんか!」

「すごい能力? 果たしてそうでしょうか? 恥ずかしい話……私は新人冒険者のとき誤って、毒肉を食べてしまい、死線を彷徨いまして……そこから魔物肉の研究をしているので。毒肉を見つけられたのだと思いますよ」

 そう伝えると。
 ラルは大袈裟に手を叩き。

「おお、それは凄い! 研究で、魔物の肉と毒肉を見分けれるまでなるとは! 君は努力家なんですね。私はまだ見分けがつきません、ハハハ」

(でしょうね。……私は魔物について、たくさん研究してきました。それに引き換え騎士団ときたら……)

 私が王太子妃だった頃。浄化に出向いた森で「毒があるかないか、確認するまで待ってください」と伝えた魔物を勝手に捌いて、焚き火で焼き食べてしまい。毒で倒れたあなた達を治療したのを覚えています。

 いちど危険な目にあった騎士団にも。魔物について知って欲しくて、魔物肉の解体書を作り渡しても誰にも読まれず。それなら彼らを集めて、みずから講義をしようとしましたが誰も集まらず。――無理そうなのであきらめました。

「ギルドマスター、お時間をとらせて悪い。私の聞きたい話は聞けました」

 彼は大きく頷き、疑いの瞳をやめると、私に向けてニッコリ微笑んだ。それが何を意味するのか私にはわからず、彼のつぎの発言を待った。

 ラル・ローズキスは。

「あなたは魔力は低いが、素晴らしい冒険者だ。何よりあなたの傷付いた手が物語っている。私が今、探している人は美しい容姿と手を持つ、素晴らしい人……すみません、人違いだったようです。私は次の任務がありますので、これで失礼します」

 いいたいことを早口で言いうと、深く頭を下げ、ソファから立ち上がり応接間を出ていった。
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