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 誰かの結界にはいるとき、肌がピリピリすることが分かった。――これはお父様とお母様に伝えなくてわ。おふたりは面白いといって研究をはじめるだろう。

 結界の中――精霊の地はルーレンズの森よりも、ひどく瘴気に覆われていた。なぜここが? ここは神聖な神の土のはず。私は乗ってきたホウキの高度をあげ、精霊の地すべてを見渡し、魔法で鑑定をした。

(え、ウソ。この精霊の土の下に巨大な魔力を感じる。……だけど、それは生命体ではなく、何か大きな塊? だとすると核、魔石……)

 土地の下に何かが眠っている。それが魔物だとすると、お父様の変異した魔石。私の魔物の核。
 
 この仮説は正しかったとなる。その答えを知るために精霊たちが守る、この土を穢す(けがす)ことはできない。

(私が……精霊の地に入れてもらえるだけでも、ありがたいわ。はやく浄化しなくちゃ)

「えっと、シシからの手紙によると。この近くの、モコモコオオカミの村にいるのよね」

 私は鑑定魔法をやめて、シシとチェルがいる村へと向かった。


 
 たどり着いた、モコモコオオカミの村はシシの結界で守られていた。その結界は私たちが使う魔法式の魔法とは異なり、シシの魔力の力と生命力によって作られた結界。彼がどれほどの力を持つかわかる結界だ。

(いつ見ても、力強くてステキな結界だわ。……でも一晩はもったかもしれないけど、いま瘴気が溢れてしまったら、結界を張ったシシにまで影響してしまう)

 私はホウキに乗ったまま杖をとりだし構えて、精霊の地すべてに、ありったけの魔力を使い浄化魔法を唱える。

「【この土に浄化の光を願う】」

 私の下に巨大な魔法陣が現れて、精霊の地に浄化の光を降らした。シシは私の魔力を感じたのだろう、一軒のモコモコオオカミの家から、外に飛び出てきて、空をホウキで飛ぶ私を呼んだ。

「やっぱり、この魔力はアーシャだったか。――アーシャ! 魔力の出し過ぎだ、倒れてまう!」

 シシは、広い精霊の地すべての浄化をする私を止めた。そんな彼に私は"大丈夫"だと微笑む。
 
「シシ、私は平気よ。でも浄化が終わったら魔力が枯渇するかもしれないから、受け止めて欲しいわ」

「……クソッ、分かった。ぜったいに受け止める!」

「うん、ありがとう」

 シシに任せて私は。私のすべての魔力を使用して、精霊の地すべての瘴気を浄化した。
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