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 シシとチェル、モコモコオオカミでルーレンズの森に向かい――モコモコオオカミの長と会い、私が精霊の土地に入れないか話をしてくると言った。

「気を付けてね。チェル、パパの言うことをちゃんと聞くのよ」
 
「うん、いってきます」
「アーシャ、長との話が長くなりそうだったら、フクロウを飛ばすよ」

「ええ、お願いね」

 モコモコオオカミはチェルの側から、トコトコ私の足下に来て。

「キュ、キュ」

 と鳴いた。
 それを聞いた、チェルが通訳してくれる。

「ママ「ボクもがんばる」って言ってるよ」
「そうなの、ありがとうチェル。あなたも無理せず、がんばってね」

「キュ――!」

「みんな、気を付けてね!」

 シシの背に乗って、ルーレンズの森に向かう、みんなを見送った。



 ――5年もの間、聖職者たちは何をしていたの? 憤り(いきどおり)を感じる。
 
 私が離縁をして王族から去り。5年間ものあいだ放置され、浄化されずにいた、国の森に瘴気が溢れだした。そして今、精霊モコモコオオカミの住処まで、瘴気が溢れだしてしまった。これは一大事。一刻も早く浄化の旅に出ないと、森に住むものすべての、かわいい動物までもが魔物になってしまう。

「先に、浄化の旅にでた方がいいわ」

 私は冒険者ギルドに"明日の午後にでも話ができませんか"と書いた手紙をフクロウで送り。使っていない木箱に空間魔法をかけて、無限ボックスを作った。――この無限ボックスに、ギルドで買い取った魔物をしまってもらえばいい。

 ボックスの中に入れた魔物の肉は風化せず、たくさんの魔物もしまえて、状態も入れたときのまま保たれる。この無限ボックスはそれほど大きくない木箱だから、ギルドに置いても邪魔にもならないだろう。

 問題は魔物の買い取り金だ。買い取り額は冒険者ギルドに決めてもらい、料金も出してもらうか。彼らが無理だと言ったら、どうせ魔物肉を買い取るのは私だし、私の資金を提供しよう。


 時刻は夕方、夕食を作っていた私の元に。冒険者ギルドから、フクロウが返信の手紙を持って帰ってきた。その手紙を開くと"明日の午後3時に来てください"と手紙には書いてあった。

 ……ギルドに、明日3時ね。

 私は明日持って行くポーションと無限ボックス。シシとチェルの食事も帰ってきたら出せるように、アイテムボックスにしまった。



 夕食をとったあと。私は部屋に戻り、本棚から一冊の本を取り、ペラペラとめくった。

(私が王太子妃の頃は、他国の聖職者の歴史書を書庫で読んだものね。他国はアウスターと他国の違い……)

 東の国スローでは聖女が毎年、聖地巡礼をして土地を浄化していた。

 南の国ランダでは各地の教会に国が派遣する聖女がおり、無償で国民のケガを治し、土地を浄化している。

 他の国も巫女、聖女という職業があると書いてあった。

 アウスターでも。10歳になった人々は貴族、国民に限らず魔力測定をするが、魔力量の多い者しか優遇されない。

 これが貴族ならば魔力量が多い、少なくても王都学園で、家で家庭教師から習えるが。平民は魔力があろうがなかろうが、学園で魔力について教える者がいない。

 基礎から習えば、能力が開花する者もいるはず。平民が通う学園でも、魔力の使い方を習わせたいと願ったが。「平民に魔力の使い方だと? アーシャ妃はおかしなことを考える」ルールリア王太子殿下の一言で貴族たちに笑われて、その話はなくなってしまった。

(向上心のある者を育てれば聖職者となり、浄化魔法を使える者がいたかもしれないのに……)

 私はため息をつき、手にした本を本棚に戻した後。王太子妃のとき、浄化を行なった国中の森の箇所を詳しく書いた雑記帳を開いた。
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