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瘴気――私が5年間ものあいだ研究して、ある仮説を立てた。瘴気が溢れる木々、湖、洞窟といった所に魔物がいると考えた。いると言うのはおかしいけど。
私はその場所で寿命などで死んでしまった、ドラゴン級の魔物が埋まっているのでは? と考えた。長い年月が経ち死骸の肉と骨は土に帰りそこに残った魔物のコア――芯がある。
魔物と瘴気は切り離せない、魔物は瘴気の中で力がパワーアップする。魔物のコアは瘴気をまとっているのでは?
小型、中型の魔物のコアは年月と共に風化するが。ドラゴン級の大型と言われる、魔物のコアは風化はせずに残り瘴気を放っている。
――コアの形も大きいんじゃないかしら?
浄化すればひととき瘴気はなくなるが、浄化が消えてしまえば、コアから瘴気が溢れるのではないのかと考えた。
(この研究結果をお父様に書いて送ればいいかしら? ……文字はルーン文字よね)
それにしてもルールリアは私が生活に困るだとか……今更、聖女にしてやるとか、どの口がモノを言っているのだろう――非常に腹立たしい。
5年も経つのにちっとも成長していない? ……いいえ、歳をとって太々しくなった。
「ママ?」
「その手紙に何か良くないことが、書いてあったのか?」
洗面所から戻ったシシとチェルは、キッチンで手紙を読んで、ため息をつく私に声をかけた。それにコクッと頷き、シシにお父様からの手紙を渡す。
「ルーン文字か、アーシャの父らしいな」
「そうでしょ」
シシは抱っこしているチェルを食卓の子供椅子に下ろし。手紙を開き、読み終えると私と同じ表情を浮かべた。
「なんて傲慢な奴だ。アーシャはものじゃなく、僕の可愛い奥さんだ!」
「チェルの、可愛いママだ!」
チェルがシシの雰囲気を真似た。それだけで嫌な気持ちは晴れ、シシと私に笑顔が戻る。よかった……チェルはあの人の悪い所を受け継ぐことなく、素直でいい子に育っている。
「さぁ、朝食にしましょう」
私は食卓に、出来上がった朝食を並べた。
❀
王城、ルールリアの執務室。彼の執事が報告書を片手に現れた。
「ご報告いたします、ルールリア様。北と南の他、王都近くの森で魔物の存在を確認いたしましたので、ギルドに討伐依頼をいたしました」
「そうか、ありがとう……それで、公爵家の動きは? 絶対に公爵はアーシャの居所を知っている。昨日は急であのような態度を僕にとったが、僕からの申し出に喜び伝えているはずだ」
アーシャ、喜べ聖女だぞ。
この国を守れると、彼女は喜んでやってくるに違いない。昔から僕に力を見せびらかし、国中の浄化と魔物討伐をしていた。――手柄すべて彼女がいなくなるまで、王家の元になったが。今度はその栄光を自分の手にできるんだ、喜んで姿を現すに決まっている。
数年前。
『ルールリア様、北と西の森で見つけた魔物を討伐し、その肉を解体して市場に卸しましたわ。双方の森の浄化は終わっていますので、魔物の心配は入りません』
と、笑顔で自慢していたものな。
ルールリアは彼女がどうして、ここまでやったのかを気付いていない。ただ、己の欲のためではなく、純粋にルールリアの為に、国民の事を想い行動していただけ。それを、力を見せびらかしているとしか、受け取れないルールリア。そんな男の元になど――今、幸せなアーシャが帰るわけがないのだ。
「早く、この事態に終止符を打ち、父上にロローナ嬢との結婚のお許しをいただかねばならない。その為にはアーシャをはやく見つけなくては」
アーシャを見つけて僕が愛の言葉をささやけば、アイツはまた僕の為に動くだろう。
「逐一(ちくいち)シシリア公爵の動きを見張れ!」
「はっ、かしこまりました」
いくら魔法に精通した公爵も。我々、王家がしたがえる隠密部隊の感知までは出来まい。早く、アーシャの居所を教えるのだ。
私はその場所で寿命などで死んでしまった、ドラゴン級の魔物が埋まっているのでは? と考えた。長い年月が経ち死骸の肉と骨は土に帰りそこに残った魔物のコア――芯がある。
魔物と瘴気は切り離せない、魔物は瘴気の中で力がパワーアップする。魔物のコアは瘴気をまとっているのでは?
小型、中型の魔物のコアは年月と共に風化するが。ドラゴン級の大型と言われる、魔物のコアは風化はせずに残り瘴気を放っている。
――コアの形も大きいんじゃないかしら?
浄化すればひととき瘴気はなくなるが、浄化が消えてしまえば、コアから瘴気が溢れるのではないのかと考えた。
(この研究結果をお父様に書いて送ればいいかしら? ……文字はルーン文字よね)
それにしてもルールリアは私が生活に困るだとか……今更、聖女にしてやるとか、どの口がモノを言っているのだろう――非常に腹立たしい。
5年も経つのにちっとも成長していない? ……いいえ、歳をとって太々しくなった。
「ママ?」
「その手紙に何か良くないことが、書いてあったのか?」
洗面所から戻ったシシとチェルは、キッチンで手紙を読んで、ため息をつく私に声をかけた。それにコクッと頷き、シシにお父様からの手紙を渡す。
「ルーン文字か、アーシャの父らしいな」
「そうでしょ」
シシは抱っこしているチェルを食卓の子供椅子に下ろし。手紙を開き、読み終えると私と同じ表情を浮かべた。
「なんて傲慢な奴だ。アーシャはものじゃなく、僕の可愛い奥さんだ!」
「チェルの、可愛いママだ!」
チェルがシシの雰囲気を真似た。それだけで嫌な気持ちは晴れ、シシと私に笑顔が戻る。よかった……チェルはあの人の悪い所を受け継ぐことなく、素直でいい子に育っている。
「さぁ、朝食にしましょう」
私は食卓に、出来上がった朝食を並べた。
❀
王城、ルールリアの執務室。彼の執事が報告書を片手に現れた。
「ご報告いたします、ルールリア様。北と南の他、王都近くの森で魔物の存在を確認いたしましたので、ギルドに討伐依頼をいたしました」
「そうか、ありがとう……それで、公爵家の動きは? 絶対に公爵はアーシャの居所を知っている。昨日は急であのような態度を僕にとったが、僕からの申し出に喜び伝えているはずだ」
アーシャ、喜べ聖女だぞ。
この国を守れると、彼女は喜んでやってくるに違いない。昔から僕に力を見せびらかし、国中の浄化と魔物討伐をしていた。――手柄すべて彼女がいなくなるまで、王家の元になったが。今度はその栄光を自分の手にできるんだ、喜んで姿を現すに決まっている。
数年前。
『ルールリア様、北と西の森で見つけた魔物を討伐し、その肉を解体して市場に卸しましたわ。双方の森の浄化は終わっていますので、魔物の心配は入りません』
と、笑顔で自慢していたものな。
ルールリアは彼女がどうして、ここまでやったのかを気付いていない。ただ、己の欲のためではなく、純粋にルールリアの為に、国民の事を想い行動していただけ。それを、力を見せびらかしているとしか、受け取れないルールリア。そんな男の元になど――今、幸せなアーシャが帰るわけがないのだ。
「早く、この事態に終止符を打ち、父上にロローナ嬢との結婚のお許しをいただかねばならない。その為にはアーシャをはやく見つけなくては」
アーシャを見つけて僕が愛の言葉をささやけば、アイツはまた僕の為に動くだろう。
「逐一(ちくいち)シシリア公爵の動きを見張れ!」
「はっ、かしこまりました」
いくら魔法に精通した公爵も。我々、王家がしたがえる隠密部隊の感知までは出来まい。早く、アーシャの居所を教えるのだ。
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