上 下
35 / 47
空森島

十四

しおりを挟む
 さすが獣人、耳がいい。それに、この子のサーチ魔法はかなりレベルが高い。
 それを知ったサン先生がノーコンな俺の手伝いとしてよこしたのか? 

 彼女のおかげで、ポーションが一本で済んた。

「ありがとう、マジで助かった。遅くなったけど……朝食にしよう」

 俺よりも頭ひとつ分低い、彼女は見上げながらうなずいた。

「はい、ローリス君」

「おっ、俺の名前知ってたんだ。君はヌヌさんていうんだよね。歳は?」

「十七歳……白猫族です」

 俺よりも二歳年上で白猫族? 獣人で猫の中にも族互いがあるのか。俺が生まれた森にはいなかった種族だな。となると、別の国から来たのかもしれない。

 んー、あまり。そのことに関しては聞きたくない。
 後五年――王子に勇者の力が芽生えるらしいけど。それから先のことは俺にもわからない。

「俺は十五歳、見ての通りエルフな」

「はい、サン先生から聞いています。方向音痴のローリス君だと」

 ――サン先生、ほんとうだから怒れない。

「ハハッ、そこまで知ってるのか。じゃ、迷子にならないよう、王都に降りたら手を繋いでくれる?」

「はい、お姉さんがローリス君を迷子にさせません」

 ガッツポーズする彼女はやっぱり可愛い。
 朝食の後――温室の手入れをスライムたちと始めた。ヌヌもついてきて温室に咲く、草と花を楽しげにみている。

「ローリス君。これ全部、薬になるのですか?」

「ああ、なるよ。ポーション、腹痛、頭痛薬、傷薬……ハーブは料理に使う」

「料理に使うのか……なんでもいってください、私もお手伝いします」

「ありがとう。夜になったらサン先生を呼んで、ヌヌさんの今後を話さないといけない。空森島にずっといるのか、通いにするのとかさ。もしかすると一回きりかもしれないし」

 サン先生のことだ、試しに送ったのかもな。

「今日はもうないと思うから。ヌヌさん、森の探索、昼寝、読書とか、いまから自由に過ごして」

「はい、ローリス君は何をするんですか?」

「俺? 俺はいまから昼飯つくりと、夕飯の仕込みかな。遠征に行っていた友が帰ってくるんだ。美味い飯をここで食べてもらう」

「お友達ですか……」

「ああ、友達なんだけどテイムしちゃってさ……特別に空森島に呼べるんだ。ヌヌさんもたくさん食べてね」

 モンスター討伐で遠征していたエンから帰ると、さっき通信具に連絡が入った。
 夕飯はバーベキューコンロで、ピザを焼こうとおもっている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。 旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

パワハラで人間に絶望したサラリーマン人間を辞め異世界で猫の子に転生【賢者猫無双】(※タイトル変更-旧題「天邪鬼な賢者猫、異世界を掻き回す」)

田中寿郎
ファンタジー
俺は自由に生きるにゃ!もう誰かの顔色を伺いながら生きるのはやめにゃ! 何者にも縛られず自由に生きたい! パワハラで人間に絶望したサラリーマンが異世界で無敵の猫に転生し、人と関わらないスローライフを目指すが…。 自由を愛し、命令されると逆に反発したくなる天邪鬼な性格の賢者猫が世界を掻き回す。 不定期更新 ※ちょっと特殊なハイブリット型の戯曲風(台本風)の書き方をしています。 視点の切り替えに記号を用いています ■名前で始まる段落:名前の人物の視点。視点の主のセリフには名前が入りません ◆場所または名前:第三者視点表記 ●場所:場所(シーン)の切り替え(視点はそこまでの継続) カクヨムで先行公開 https://kakuyomu.jp/works/16818023212593380057

職業・「観客」ゥ!?

花山オリヴィエ
ファンタジー
主人公「イツキ」はマンガやアニメ、小説などみることが大好き。ある日、舞台を見ている最中の事故で異世界へ。そこはファンタジーの世界で、与えられた職業は戦士でも魔法使いでもなく「観客」ゥ!? 実際に生きていくのは大変で…… でも気のいい仲間と共に生活すると、幻想の動物や魔物、剣と魔法の世界で、見るものは新しく、食べるものは美味極まりない! そして見ているだけですべてが完結って本当ですか!?  注意)本作では主人公のチートスキルによる無双は登場しません。 第1部完了。 物語はまだ続きます。 鋭意執筆中で御座います。 ◆皆様からのご支援を頂き感謝しております。◆ いいね や エール機能は非常に有難く、モチベーションの向上につながります。 誤字脱字や指摘に関しては近況ボード等でご指摘いただけますと幸いです。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります

樹結理(きゆり)
恋愛
突然異世界に召還された平々凡々な女子大生。 勇者になれと言われましたが、嫌なので引きこもらせていただきます。 平凡な女子大生で毎日無気力に過ごしていたけど、バイトの帰り道に突然異世界に召還されちゃった!召還された世界は魔法にドラゴンに、漫画やアニメの世界じゃあるまいし! 影のあるイケメンに助けられ、もふもふ銀狼は超絶イケメンで甘々だし、イケメン王子たちにはからかわれるし。 色んなイケメンに囲まれながら頑張って魔法覚えて戦う、無気力女子大生の成長記録。守りたい大事な人たちが出来るまでのお話。 前半恋愛面少なめです。後半糖度高めになっていきます。 ※この作品は小説家になろうで完結済みです

処理中です...