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 王城で迷子の俺は――蜂蜜色の髪、ブルーの瞳の小さな天使に出会った。

 オッサンと副団長、みんなは目的地の王城についた。二人は城を守る門番に話しをして、木製の門を開けてもらう。
 みんなとサン先生、俺が門を通る時。門番の二人は胸元にかかる迷子札を見たのか、笑っいながらオッサンに小声でいった。

「か、彼がそうなのですか?」
「迷子札……笑える」

 ……それ、聞こえてるんだ。子供だから泣くぞ! 喚くぞ!

 この札になんて書かれているかというと『エルフ族のローリス君(10)彼はいま迷子です。亜人施設以外、外で、一人の彼を見た方は至急騎士団までご連絡してください。』……前は「迷子のローリス君 十歳」だけだったのに恥ずかしい。

 これを書いたのは騎士団長のオッサンだ。書く場面をいっしょに眺めていた副団長の優しい視線が、何故か悲しかったことを覚えている。



 ホンモノの城だ、城を見上げた俺は興奮した。
 
 ――ウオォ! スゲェ!

 王城の中は外もファンタジー満載だった。ターコイズ色の屋根、石垣で作られた城壁、バラが咲く庭園、石膏で作られた人魚が真ん中に立つ噴水ーー写真では見たことがあったけど、実際に見た城は迫力があって綺麗だ。

 廊下を照らすデカいシャンデリア、壁画、彫刻、柱と、何処を見ても芸術作品。ここで王ーー勇者の末裔は暮らしているのか。

 まあ綺麗だけど……なんというか掃除が面倒そうだな。前、一LDKの部屋の掃除すら面倒だったし、いま住んでいる部屋の掃除も適当だ。

 とくに鉄格子の窓なんて、一個ずつ拭きたくない。

「クク、坊主、そんなに面白いか?」

 オッサンはキョロキョロ見回し、瞳を輝かす俺に声をかけた。

「面白い!」

「素直ですね。ここで暮らせると言ったら、どうしますか?」

 ――暮らす?

「断る! なんていうか華やかすぎて落ち着かないし、迷ったらと思うと怖い」

「迷子……フフッ、ローリス君はそうですね」

「クックク、ローリス迷子になるなよ」

 エンを含め周りの仲間が笑い、サン先生も何かいうのかと思ったけど……城が嫌い! だとわかるくらい、外をみながら隅っこを歩いていた、

 ……サン先生。

(わかるーーすれ違うメイド、貴族などエルフのを見る目が違う感じがする。周りの子供エルフの俺たちを見る周り目と、サン先生を見る目はまた違う『あの目はアレだ!』友達と行った合コンーー俺の隣に座ったイケメンの友を獲物を狙う女子の瞳だ! 狩人――好きあらば、友にお近付きになりたいとわかって、怖かった)

 異世界だと男も女も変わらない。見た目がいいエルフだからかな? 特に綺麗なサン先生は舐めるように見られていた。

 ……ケッケケ、可哀想だけどいい気味だ。


 ブルブル、大理石の床――日の当たらない廊下は冷えてもよおした。

「俺、トイレに行きたい」

「私も、です!」

 すかさずサン先生も手を上げた、どうやら耐えれなくなってトイレに逃げたいらしい。

「わかった。他に行きたい人はいるか? ……ウム、いないようだな。サン先生は何度か城に来ているから、王の間の場所を知っているな?」

「はい、知っています。ローリス君、一緒に行きましょう!」

 サン先生に手を引かれてトイレに行ったまではよかった……トイレを済ませて、廊下でサン先生を待っている。

 うーん。外で待つもジロジロ見られて、気分が良くない。


 ――トイレの外で待って、三分後。

 サン先生が出てこずトイレの中を見たがいない……おかしい、俺が出る時にはまだ個室にいたはず。

 ……あ、微かに残る魔力。


「…………ゲッ! サン先生、自分だけ魔法を使って消えたなぁ!」

 はじめての王城に方向音痴の俺……『わからない場所で、無闇に歩き回ってはいけません。』その教えは頭から飛んだ。

(こえぇ、何処だよここ……)

 壁にかかる絵、肖像画が、周りの大人達が大きく怖く見えた。迷子札を見せて目的地まで、連れて行ってもらえることすらも忘れた。

 元々、人見知りだったから、とにかく怖い。
 城の中を歩き回って、しまいには誰もいない廊下に俺はいた。

 ――心細くなって、我を忘れて"ガックリのポーズ"で泣いたね。

 そんな俺に数人の大人を連れた、蜂蜜色の髪、青い瞳の天使が舞い降りる。

「どうしたのですか?」
「……ウッグ、ここが何処だかわからん」

 すかさず俺の迷子札を見て天使は微笑み、そばにいた大人達に何か話す。

「……ですが」

 と、言われても。

「ボクは大丈夫です、この方を連れて向かいます」

「そうですか。……わかりました、私たちは先に説明に向かいます」

「失礼します」

「うん、ありがとう」

 天使に頭を下げてどこかに行ってしまう。大人一人残した方がいいのでは、と思ったけど。

「エルフの君が怖がらないように、側近達には先に行ってもらったよ。さあ、涙を拭いて、ボクと一緒に王の間に行こう」

 小さな天使はとても優しかった。
 
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