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 ここにきて一ヶ月――魔力の扱い方、魔法の使い方を同じエルフのサン先生に習った。書庫で魔導者を読み転移魔法とサーチ魔法も徐々に覚えたーーこの日の夜、俺は自分の部屋で『サーチ』魔法を試してみることにした。

 ベッドに座り、エンと一緒に描いた施設の見取り図を頼りにサーチ魔法を使った。俺の目の前に建築家が作る模型のような――緑に光る二階建ての建物が浮かんだ。

(スゲェ、施設だ! コレなら建物の内装がわかる)

 見取り図と建物を見くらべる――ここ、二階の角っこが俺の部屋で隣は仲間達の部屋が並ぶ。そして廊下を挟んだ反対側にサン先生、騎士の仮眠室がある。

 一階は講義室、書庫、食堂、風呂場だ。

 自分の部屋から一階の各所に行けるように、その模型をみながら転移魔法をかけていった。

「一階の講義室の前、書庫……食堂、風呂場……よし」

 失敗していなければ、すべての場所に部屋から行けるようになったはず。

(迷子ともおさらばだ!)

 と、喜んでいたが俺は肝心なことを忘れていた。

 部屋から各所に行けるようにはなったが、そこに問題があった――まだ不完全な転移魔法の為に食堂から講義室、部屋に戻る、風呂場から書庫などに行けず迷子。

「まだ、完全じゃなかったのか」
「ああ、まだダメだ……部屋まで送ってくれる?」
「……ククッ、わかった」
 
 結局、友となった竜人エンに頼る羽目になった。

 ――クッ、失敗だ!







 アレから色々試して、女性人から嫌われた……
 昨夜、転移魔法を失敗して女子風呂に落ちたのだ。そのとき、ちょうど女子の入浴中で、施設事務員(騎士以外、ここの職員たちはみんな亜人)の獣人のミヤさんとトールさんの間に俺は落ちた。

(お二人は猫獣人)

 エンは魔力で俺がどこに落ちたが気が付いたが、場所が場所だけに助けにこれず――俺はお姉様方に捕まりひん剥かれて「いけない子ね」「ローリス君、洗ってあげる」と全身組まなく洗われて、アソコも触られたが。お二人のたわわな胸、魅力なボディを拝めたのでよしとしよう。

(ラッキースケベだな――前世では考えられないことだし、お二人の胸は柔らかかった)

「ローリス君のスケベ!」
「エッチ!」
「バカ!」

 フフッ、何度でも言えばいい――君たちの"ちいぱい"もよかったよ。翌日、話を聞いた他のやつには"羨ましい"と言われ、サン先生には「困った子ですね」と言われてしまい。コレからも実験するのならと、女子のお風呂場などに入れないよう魔法をかけてもらった。

 しばらく"あの時は転移魔法を失敗した"と、女子に言っても信じてもらえなくて距離を置かれたけどね。


  ――好きで、覗いたんじゃねぇ!


 エンと魔法陣の書き換えなど……色々やったがうまくいかず、仕方がなくサン先生にも相談した。

 彼は意味深な微笑みを浮かべて、

「各所に転移で移動する? だからこの前、失敗して女子風呂に落ちたのですか……まあ、面白い発想ですね。なんというか力の無駄遣い――しかし、ローリス君はそれくらいしないと、いけないくらいの方向音痴ですからね」

「……ハハッ、そうですね」

 クッソ! 言いたい放題言いやがって……ほんとうだから言い返せない。
 
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