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三
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んっ、ここは?
目覚めたボクは瓦礫の中にいた。周りに建物もなく、森も、人すらいない壊れた、だだっ広い平野……もしやここはセレーサが吹き飛ばした元いた世界? ほかも地面は割れ、盛り上がり、吹き出した地下水は水溜りを作っていた。
こんな壊れた世界に彼女は生きているのか?
「セレーサ?」
探そうとしたボクの近くに誰かいた。
「あら貴方、目が覚めたの?」
金色の長い髪と金色の瞳の、見知らぬ女性がボクを見下ろしていた……何かおかしい。この女性との視線が違う。ボクは近くの水溜りまで行き自分の姿を見た。
「え、光の球?」
ボクは人ではなく、プカプカ浮かぶ光る球だった。
「魂を感じてきてみれば――貴方、こちらに戻ってきてしまったの? あのまま、いれば貴方はは幸せなれた。あの世界はわたくし『ときの女神』がセレーサが望み、あなたの為に作った世界。それなのに、あなたは自分で自分の胸をさして戻ってきた――妹が好きではなかったのですが?」
女神だと名乗った、金髪の女性は不思議そうにボクを見た。そうだ、彼女の妹――ソフィアは大切にしたかっただけで、好きではなかった。最終的にボクは彼女を選んでしまったけど……そこに愛はなかった。
「いまなら、まだ間に合うけど……戻らない?」
「嫌だ! セレーサのいない世界なんて、戻りたくない」
女性は益々わからないと、首をかしげた。
「わからない。あなたの裏切りが……セレーサに破滅の事態を引き起こさせた――原因。その、あなたが彼女を愛する?……まったく理解できないわ」
女神は眉をひそめた。
+
この女性は「時の女神』だと言った。
「女神のいう通り、ボクはセレーサを裏切った。周りの言葉を鵜呑みにして彼女の心を傷付け、壊してしまった……それでも、セレーサを愛している」
「そこまでわかっていながら。貴女はやはり愚かですね……話を聞いていてもセレーサではなく、自分のことしか考えていない。なにが、セレーサに会いたい? 愛している? 謝りたい? それは自己満足……そんなことをしても貴方だけしか救われない」
…………重々承知。ボクはセレーサに謝りたい――誤って許されて、心に残る罪悪感をなくしたい。死んでしまったボクは、セレーサに謝るしかなにもできない。
「頼みます。ボクは……最後にセレーサに会いたい」
「わかりました、と言いたいのですが……彼女は【破滅の禁書】を体内に宿してしまった。いま魔女に弟子入りをして、本の制御と魔法の修行をしております。それが終わり次第ーー彼女は他の魔導書を集める旅に出ていただく予定。その前に会えるようにしましょう」
「セレーサが魔導書探す旅にでる?」
「はい。――いまから二年前くらい、書の女神が地上に魔導書を数十冊、落としてしまった。その書は人を惑わし、人を傷付け、富を生み、王にもなれる書物。各所に散ってしまい探すのに一苦労。しかし――体内に破滅の書を宿したセレーサなら、魔導書が近くにあれば引き寄せられます」
「ハァ? セレーサにそんな訳のわからない、書物を探させるのか?」
「ちゃんと、わたくしはセレーサと話し合い、等価交換いたしましたよ。彼女に書物を探してもらう代わりに……わたくしはあの世界を作ったのですから……」
――ボクのために作られた世界。
――それなのに、ボクは戻ってきてしまった。
「女神、ボクにも書物を探す手伝いをさせて欲しい」
「んーーっ、いいでしょう」
女神はそういうとボクの魂に"フゥッ"と息をかけて、姿を黒猫に変えた。
「猫? ……なぜ、猫なんですか?」
「あら、あなた知らなかったの? 彼女は大の猫好きなのよ」
「え?」
そういえば彼女の家では猫を飼っていた。本を読む、彼女の膝の上で昼寝をする姿をみた――それすらボクは忘れてしまっていたのか。
目覚めたボクは瓦礫の中にいた。周りに建物もなく、森も、人すらいない壊れた、だだっ広い平野……もしやここはセレーサが吹き飛ばした元いた世界? ほかも地面は割れ、盛り上がり、吹き出した地下水は水溜りを作っていた。
こんな壊れた世界に彼女は生きているのか?
「セレーサ?」
探そうとしたボクの近くに誰かいた。
「あら貴方、目が覚めたの?」
金色の長い髪と金色の瞳の、見知らぬ女性がボクを見下ろしていた……何かおかしい。この女性との視線が違う。ボクは近くの水溜りまで行き自分の姿を見た。
「え、光の球?」
ボクは人ではなく、プカプカ浮かぶ光る球だった。
「魂を感じてきてみれば――貴方、こちらに戻ってきてしまったの? あのまま、いれば貴方はは幸せなれた。あの世界はわたくし『ときの女神』がセレーサが望み、あなたの為に作った世界。それなのに、あなたは自分で自分の胸をさして戻ってきた――妹が好きではなかったのですが?」
女神だと名乗った、金髪の女性は不思議そうにボクを見た。そうだ、彼女の妹――ソフィアは大切にしたかっただけで、好きではなかった。最終的にボクは彼女を選んでしまったけど……そこに愛はなかった。
「いまなら、まだ間に合うけど……戻らない?」
「嫌だ! セレーサのいない世界なんて、戻りたくない」
女性は益々わからないと、首をかしげた。
「わからない。あなたの裏切りが……セレーサに破滅の事態を引き起こさせた――原因。その、あなたが彼女を愛する?……まったく理解できないわ」
女神は眉をひそめた。
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この女性は「時の女神』だと言った。
「女神のいう通り、ボクはセレーサを裏切った。周りの言葉を鵜呑みにして彼女の心を傷付け、壊してしまった……それでも、セレーサを愛している」
「そこまでわかっていながら。貴女はやはり愚かですね……話を聞いていてもセレーサではなく、自分のことしか考えていない。なにが、セレーサに会いたい? 愛している? 謝りたい? それは自己満足……そんなことをしても貴方だけしか救われない」
…………重々承知。ボクはセレーサに謝りたい――誤って許されて、心に残る罪悪感をなくしたい。死んでしまったボクは、セレーサに謝るしかなにもできない。
「頼みます。ボクは……最後にセレーサに会いたい」
「わかりました、と言いたいのですが……彼女は【破滅の禁書】を体内に宿してしまった。いま魔女に弟子入りをして、本の制御と魔法の修行をしております。それが終わり次第ーー彼女は他の魔導書を集める旅に出ていただく予定。その前に会えるようにしましょう」
「セレーサが魔導書探す旅にでる?」
「はい。――いまから二年前くらい、書の女神が地上に魔導書を数十冊、落としてしまった。その書は人を惑わし、人を傷付け、富を生み、王にもなれる書物。各所に散ってしまい探すのに一苦労。しかし――体内に破滅の書を宿したセレーサなら、魔導書が近くにあれば引き寄せられます」
「ハァ? セレーサにそんな訳のわからない、書物を探させるのか?」
「ちゃんと、わたくしはセレーサと話し合い、等価交換いたしましたよ。彼女に書物を探してもらう代わりに……わたくしはあの世界を作ったのですから……」
――ボクのために作られた世界。
――それなのに、ボクは戻ってきてしまった。
「女神、ボクにも書物を探す手伝いをさせて欲しい」
「んーーっ、いいでしょう」
女神はそういうとボクの魂に"フゥッ"と息をかけて、姿を黒猫に変えた。
「猫? ……なぜ、猫なんですか?」
「あら、あなた知らなかったの? 彼女は大の猫好きなのよ」
「え?」
そういえば彼女の家では猫を飼っていた。本を読む、彼女の膝の上で昼寝をする姿をみた――それすらボクは忘れてしまっていたのか。
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