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二十一

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 二人の距離が近付いた、冬の一歩手前。
 この日、義妹――ミネルバとルーズベルトの結婚式の招待状が屋敷に届いた。カイザーはその結婚式の招待状を受け取ってから、眉をひそめていた。

(カイザー様は私のことを、一番に考えてくださる)


 午後の執務室のソファー向かい合いに座り、今朝採ったバラを並べて、砂糖漬けの作り方をリリはカイザーに教えていた。

「集めたバラを、まず水洗いするんです。次に花びらを一枚ずつ綺麗に剥がして乾燥させます」

 リリの説明を紙に記入していくカイザー。
 一通り教えると、カイザーは声を出して復習した。

「ふむ、次に卵白を花びらに塗って、砂糖をまぶして、あとは乾燥させるんだな」

「はい。できあがった砂糖漬けは、一ヶ月くらいは保存できます」

 執務室での休憩の時――カイザーはリリに義妹、ミサエラの披露宴に出るのか、どうするかを聞いてきた。

(届いた招待状に――ミサエラは家族だけで街の教会であげて、屋敷の庭園で披露宴をすると書いてあった)

 その家族であげる結婚式にはリリは呼ばれず、庭園で開かれる披露宴にカイザーと招待された。半分は血の繋がる姉のリリを結婚式に呼ばないと――カイザーは言いたいのだ。

「リリ、そんな失礼な連中の披露宴に行きたくなかったら、なにか理由をつけて伯爵にお断りする。僕が招待されないのはわかるが、家族のリリを結婚式に呼ばないとは――ほんとうに酷い人たちだ!」

 そう言った、カイザーにリリは首を振る。
 普通なら"行かない"と、選択をしてもおかしくない。

「大丈夫です、断らなくていいわ。カイザー様、一緒に義妹をお祝いしにいきましょう」

 と言ったのは昨日。

 次の日の朝食のときに『披露宴のドレスを新調しに行こう』と、近くの街までカイザーと買い物にでることになった。

(……カイザー様と街デートだわ!)



 ――朝食後、リリはウキウキ部屋でメイド達と、クローゼットのドレスを引っ張りだしていた。

「……アン、リマ、このドレスはどう?」

 リリの好きな薄水色のドレスを持ち、メイドに聞く。

「リリアムお嬢様、お可愛いです」
「素敵ですわ、リリアムお嬢様」

「じゃ、決めた。ドレスはこれにするわ、アン、リマ、よろしくね」

「「はい、かしこまりました」」


 薄水色のドレスを身につけ、同じ色の髪飾りを受けたリリは、カイザーが待つエントランスに向かった。そのエントランスに紺色のスーツを着てリリを待つ、カイザーを見て頬を染めて駆け寄った。

「お待たせしました、カイザー様!」

「時間通りだよ。――リリ、そのドレス可愛い、似合っている」

「カイザー様のスーツ姿も、素敵ですわ」

 お互いを褒め合い、嬉しそうに見つめ、エントランスから動かないリリとカイザー。それを見かねたロバートが口をだす。

「旦那様、御者が屋敷の前で待っていますよ」

「わかっている、ロバート。僕はリリのドレス姿を堪能したい、もう少し待ってくれ」

 素直に答えたカイザーにリリは、エントランスで真っ赤に染まったのだった。
 
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