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十五
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寝室にのこるリリはベッドに座り悩んでいた。
「どうしましょう………私、真っ白い犬になってしまうなんて……」
カイザーのことを考えると、自分の気持ちをあらわすようにパタパタ動く尻尾にも困惑した――お母様さえならなかった、先祖返りにリリが鳴ってしてしまうなんて。
(お母様はなくなってしまっているから話も聞くことができない。それにお母様はご自分のことを話すことがお嫌いで、親戚がいるのかもわからないし。……お父様には絶対に聞きたくないわ)
パタンと扉の閉まる音がして、
「リリ、みんなにも話してきたよ」
ロバート達との話を終わらせたカイザーが寝室に戻ってくる。リリはコップをベッドサイドのテーブルに置くと、ベッドから立ちカイザーのそばに寄った。
「カイザー様………!」
(ああ、どうしましょう? ――さっきは気が動転していて気が付かなかったけど、ガウン姿のカイザー様は胸板が厚くて素敵)
リリと呼び、カイザーの手がやさしくリリの腰にまわり、二人の距離が縮まる。
「どこか、辛いところはないか?」
「は、はい、ありません……」
(体がくっつき、ドキドキする)
そんなリリの気持ちを、お尻に生えたモコモコの尻尾は気持ちを読み取る。カイザーが寝室に戻ってきてくれたこと、側にきてくれたこと。
――リリは先ほどと同じでスカートを上げ、お尻丸出しで、その喜びを表した。
「あ、ああっ」
(どうしましょう、尻尾の動きが止まらないわ)
リリは恥ずかしくなり尻尾に止まってと願っても、嬉しさは跳ね上がりさらに尻尾は動いた。
「かわいい尻尾だね。僕がそばにいることが嬉しいのかな?」
「…………はい、…恥ずかしい」
頬を染めたリリ。
「可愛いな、リリ」
「カイザー様?」
見上げたリリの唇にカイザーの薄い唇がチュッと重なる。そのキスは小鳥のように、チュッチュとキスを繰かえされた。
(カイザー様の唇も柔らかいわ……気持ちいい)
柔らかくお互いの感覚を味あうキスに、リリの鼓動と尻尾は動きを増した。
「…………ンッ、ンン、カイザーさま」
「リリ、もっとしていい?」
「……はい」
リリはカイザーから与えられる、キスに翻弄した。
(ふわぁ、カイザー様)
リリの初めてのキスは――それは甘くて、濃厚なキス。カイザーの腕の中で"ポーッ"として、彼の熱い胸板に抱きしめられているうちに.リリは眠ってしまった。
自分の腕の中で眠るリリを抱きしめたカイザーはベッドに寝かすも、リリの手はカイザーのシャツを握って離さなかった。
(………これは、いっしょに寝るかな)
――寝るだけだ。
自分に言い聞かせて、カイザーは可愛いリリの隣に体を埋めた。
「……………フウッ」
――眠れない。
羊が一匹、二匹、リリ……がスリスリ擦り寄ってきた。
(なんて、いい香りだ………いかん、いかん)
カイザーはその晩、モンモンとして、しばらく眠れなかった。
「どうしましょう………私、真っ白い犬になってしまうなんて……」
カイザーのことを考えると、自分の気持ちをあらわすようにパタパタ動く尻尾にも困惑した――お母様さえならなかった、先祖返りにリリが鳴ってしてしまうなんて。
(お母様はなくなってしまっているから話も聞くことができない。それにお母様はご自分のことを話すことがお嫌いで、親戚がいるのかもわからないし。……お父様には絶対に聞きたくないわ)
パタンと扉の閉まる音がして、
「リリ、みんなにも話してきたよ」
ロバート達との話を終わらせたカイザーが寝室に戻ってくる。リリはコップをベッドサイドのテーブルに置くと、ベッドから立ちカイザーのそばに寄った。
「カイザー様………!」
(ああ、どうしましょう? ――さっきは気が動転していて気が付かなかったけど、ガウン姿のカイザー様は胸板が厚くて素敵)
リリと呼び、カイザーの手がやさしくリリの腰にまわり、二人の距離が縮まる。
「どこか、辛いところはないか?」
「は、はい、ありません……」
(体がくっつき、ドキドキする)
そんなリリの気持ちを、お尻に生えたモコモコの尻尾は気持ちを読み取る。カイザーが寝室に戻ってきてくれたこと、側にきてくれたこと。
――リリは先ほどと同じでスカートを上げ、お尻丸出しで、その喜びを表した。
「あ、ああっ」
(どうしましょう、尻尾の動きが止まらないわ)
リリは恥ずかしくなり尻尾に止まってと願っても、嬉しさは跳ね上がりさらに尻尾は動いた。
「かわいい尻尾だね。僕がそばにいることが嬉しいのかな?」
「…………はい、…恥ずかしい」
頬を染めたリリ。
「可愛いな、リリ」
「カイザー様?」
見上げたリリの唇にカイザーの薄い唇がチュッと重なる。そのキスは小鳥のように、チュッチュとキスを繰かえされた。
(カイザー様の唇も柔らかいわ……気持ちいい)
柔らかくお互いの感覚を味あうキスに、リリの鼓動と尻尾は動きを増した。
「…………ンッ、ンン、カイザーさま」
「リリ、もっとしていい?」
「……はい」
リリはカイザーから与えられる、キスに翻弄した。
(ふわぁ、カイザー様)
リリの初めてのキスは――それは甘くて、濃厚なキス。カイザーの腕の中で"ポーッ"として、彼の熱い胸板に抱きしめられているうちに.リリは眠ってしまった。
自分の腕の中で眠るリリを抱きしめたカイザーはベッドに寝かすも、リリの手はカイザーのシャツを握って離さなかった。
(………これは、いっしょに寝るかな)
――寝るだけだ。
自分に言い聞かせて、カイザーは可愛いリリの隣に体を埋めた。
「……………フウッ」
――眠れない。
羊が一匹、二匹、リリ……がスリスリ擦り寄ってきた。
(なんて、いい香りだ………いかん、いかん)
カイザーはその晩、モンモンとして、しばらく眠れなかった。
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