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9話

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 春の洗濯物の干し方は、私よりも手慣れていた。よく観察すると、春の干し方はおばあちゃんの干し方だった。

(おばあちゃんも、私に干し方を教えてくれてけど……不器用すぎたり、1人になってからは適当にほしていたわ)

「ありがとう、助かった。私はお風呂の掃除してくるわ」

「風呂は終わったし、トイレの掃除も終わってる。春はゆっくりしていてくれ。もう少しで、小春も買い物から帰ってくるから、お茶にしよう」

 春は私が寝ている間に。洗濯物とお風呂の掃除、休みの日の私の仕事を全て、やってくれていた。私は縁側に座り、春が洗濯物をする姿をボーッと見ていたが手持ち無沙汰で、部屋に戻り資料を持ってきたが。

「おい、休みの日まで仕事をするな! 休めるときくらい休め、休め!」

 手に持っていた資料を、春に取り上げられる。だけど。いきなり休めと言われても、私は何をすればいいな分からなかった。

(いつも私、1人のとき何をしていたの?)

 学生時代の友達とも疎遠だし。テレビを見るでもなく、スマホも、本も。1人だから誰かと話すことも、笑うこともなく、ましてや怒ることもなかった。

 おばあちゃんがいなくなってから、私……仕事以外で、初めて怒りをぶつけたと気付いた。
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