私は悪役令嬢マリーナ! 魔法とモフモフ達に囲まれて幸せなので、王子様は嫌いのままいてください。

にのまえ

文字の大きさ
上 下
101 / 106
第2章

8話

しおりを挟む
 ダンスの練習が終わり、カイとトルといっしょに魔導馬車乗り場に向かう途中に、忙しいと聞いていたデリオン殿下と側近のシアさんがいた。なにやら彼は私に話があるのか、コチラをジッと見てきた。

(目線は私を見てるから、トラ丸が見えているわけじゃないか)

 ゲームのときは見えていたはずの、聖獣が見えていないとなると。デリオン殿下はヒロインと出会い、力が芽生えるのかもしれない。

 カイとトルが頭を下げ、私はスカートを持ってカーテシーをした。

「ごきげんよう、デリオン殿下。執務は終わったのですか?」

「ああマリーナ嬢、ダンスの練習に行けなくてすまなかった」

 誰かに行ってこいとでも言われたのか、ブスッとした表情で言われても、私の気持ちはちっとも動かない。

「いいえ、カイ様にダンスの練習を相手をしていただいたので、大丈夫でしたわ」

「デリオン殿下に聞いた話とは違い、マリ嬢はダンスが非常に上手かったよ」

「マリ……あ、そうでしたか。僕は執務が残っていますので失礼します」

 取り繕った笑顔で、さっき終わったと言った執務があると言って、彼は側近を連れて去って行った。変な人だと、彼の背中を見送っていると、カイに馬車乗り場へ行こうと言われた。

「ええ、行きましょう」

 カイの後を追って行くと、トラ丸が頭の上で
 
《アイツは、何をしにきたんだ?》

 と首を傾げている。
 それに。
 
〈さぁ、あいさつじゃない? カイ様もいるし〉
 
 と言うと。
 んー違うなと、トラ丸が首を振り。
 
《わかった! ヤツはマリのドレス姿を見にきた!》
〈え、デリオン殿下が私のドレス姿を見にきた⁉︎ いやぁ~嫌われているのに、それはないと思うよ〉
《いいや、絶対にヤツは見にきた!》

 頭の上で、そう言いきるトラ丸。だけど、会うたびに嫌味を言ってくるデリオン殿下に限ってそれはないと思う。でも自分で言うのもなんだけど、子供のときよりも成長して、それなりにいけている。

 だって、胸もそれなりに育ったし。運動と冒険に出ているおかげで、沢山食べても太らない。と思っているのは自分だけかもしれないが、標準体重なので大丈夫。

《マリ、腹減ったな》
〈うん。トラ丸、お腹すいたねぇ〉
《早く帰って、ポテチとフライドポテトを食うぞ》
〈おう! カルロに作ってもらおうね〉
 
 王城の馬車乗り場に行くには結構歩かなくてはならない。その間、私はいつものように念話でトラ丸とアレが食べたい、帰ったら何すると会話していた。

 前を歩くカイが、コチラを振り向き。

「ねぇマリ嬢、動いたらお腹空いたね。王都で何か買って、馬車で食べながら帰らないかい?」

 ――何か買って食べる!
 
《なに!》

 そのカイの誘いに私とトラ丸は「はい」と頷く。いま食べても、帰ってからのポテチとフライドポテトは別腹なのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな

朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。 !逆転チートな婚約破棄劇場! !王宮、そして誰も居なくなった! !国が滅んだ?私のせい?しらんがな! 18話で完結

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

処理中です...