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85話
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「えぇ!」
《おお?》
私の頭には淡く光る耳、お尻には細長い尻尾があった。そして、トラ丸と憑依した事によって、私の魔力はさらに上がったみたい。これならもう少しだけ畑に魔力を送れる……トラ丸には悪いけどやらせてもらうわ。
「トラ丸、ごめん」
《ポテチで回復しているから、大丈夫だ!》
「ありがとう、一緒にがんばろう!」
万能の実がみのる畑に魔力を放った。はじめに生えた新芽達が私とトラ丸の魔力を受けて、大きく葉を広げ始めた。その葉に私とトラ丸はおぼえがあった。
家の畑のジャガイモの葉?
「トラ丸。この葉、ジャガイモの葉に似てない?」
《似ているな》
その場にしゃがんで尻尾を横に振りながら、育った葉を眺めていた。その畑にズカズカとゲドウさんが入り、1番はじめに生えた葉を引っこ抜く。
「あ――!」
《まだ生えたばかりだぞ!》
「大丈夫。これくらい葉っぱが生えれば小さな実がなってるよ。この実をいま病気で苦しんでいる、使用人に食べさせてあげて」
土を払い、ゲドウさんがやってきて私の前に手を出した。私も両手を出すと小さな紫色をした、ジャガイモを手にコロンと2つ乗せた。
「可愛い、紫色ジャガイモ? これが万能の実かぁ」
《これが……》
「ああ、それが万能の実――シャドゥクイーンだよ。さっきポテチを食べたとき、あまりの驚きてポロッと言ったけどね」
「ゲドウ、そんな小さな実じゃ……あまり効き目がないんじゃないのか?」
「ちゃんと効き目はある。ボクも嬉しいよマリちゃんの憑依した姿と、2度と見られないと諦めた実が見られたからね」
いつもはニヤッとか、フフと怖い笑い方をするゲドウさんが、少しだけ普通に笑ったように見えた。でもこれでカルロ君が良くなる? ヴォルフ様のお父様が助かる?
《ジャガイモが万能の実かぁ。大好物だからうれしいな!》
「ええ、驚いたけど。すごくうれしいわ!」
「いや、まだこれは実ったうちにははいらない。あと2、3回? いや4、5回は来てね。ラゴーネ、マリちゃん達を送ってやって」
「わかった!」
「後2、3回、4回か5回かぁ。がんばります!」
《ワシもがんばるぞ!》
手に杖を出して、直に私の屋敷までの転移魔法を唱えるゲドウさん。あらわれた転移の魔法陣の中へラゴーネさんと手を繋いだとき。ゲドウさんが何かを思いだして声をだす。
「あ、言い忘れたけど……その実、あまり………」
転移が始まっていてよく聞こえなかったし、一瞬で屋敷の庭まで戻ってしまい、こちらから向こうには行けない。
「ラゴーネさんはわかる?」
「わからんな。硬いから、しっかり火をとおして食べろと言ったのかもな」
《それだな》
ヴォルフ様がいらっしゃる夕方まで時間があるから、厨房で茹でましょう。
「ラゴーネさんありがとう。しっかり火をとおして、カルロに食べてもらう。送ってくれてありがとう、またポテチを食べに来てください」
「ああ、次は2日後だな。それとその憑依だっけ? なおるのか?」
ラゴーネさんは私の耳を指差した。
「あ――これはヴォルフ様かお母様に聞かないと、解き方がわからないんです。大丈夫ですよ」
「そっか、次は2日後だな。ゆっくり休めよ!」
「はい!」
《またな!》
背中に羽を生やして飛んでいく、ラゴーネさんを見送り。私は厨房に移動して、万能の実を綺麗に洗い柔らかく茹でて、カルロの離れの家に持っていった。
この後――ゲドウさんの聞こえなかった言葉を理解する事となった。
《おお?》
私の頭には淡く光る耳、お尻には細長い尻尾があった。そして、トラ丸と憑依した事によって、私の魔力はさらに上がったみたい。これならもう少しだけ畑に魔力を送れる……トラ丸には悪いけどやらせてもらうわ。
「トラ丸、ごめん」
《ポテチで回復しているから、大丈夫だ!》
「ありがとう、一緒にがんばろう!」
万能の実がみのる畑に魔力を放った。はじめに生えた新芽達が私とトラ丸の魔力を受けて、大きく葉を広げ始めた。その葉に私とトラ丸はおぼえがあった。
家の畑のジャガイモの葉?
「トラ丸。この葉、ジャガイモの葉に似てない?」
《似ているな》
その場にしゃがんで尻尾を横に振りながら、育った葉を眺めていた。その畑にズカズカとゲドウさんが入り、1番はじめに生えた葉を引っこ抜く。
「あ――!」
《まだ生えたばかりだぞ!》
「大丈夫。これくらい葉っぱが生えれば小さな実がなってるよ。この実をいま病気で苦しんでいる、使用人に食べさせてあげて」
土を払い、ゲドウさんがやってきて私の前に手を出した。私も両手を出すと小さな紫色をした、ジャガイモを手にコロンと2つ乗せた。
「可愛い、紫色ジャガイモ? これが万能の実かぁ」
《これが……》
「ああ、それが万能の実――シャドゥクイーンだよ。さっきポテチを食べたとき、あまりの驚きてポロッと言ったけどね」
「ゲドウ、そんな小さな実じゃ……あまり効き目がないんじゃないのか?」
「ちゃんと効き目はある。ボクも嬉しいよマリちゃんの憑依した姿と、2度と見られないと諦めた実が見られたからね」
いつもはニヤッとか、フフと怖い笑い方をするゲドウさんが、少しだけ普通に笑ったように見えた。でもこれでカルロ君が良くなる? ヴォルフ様のお父様が助かる?
《ジャガイモが万能の実かぁ。大好物だからうれしいな!》
「ええ、驚いたけど。すごくうれしいわ!」
「いや、まだこれは実ったうちにははいらない。あと2、3回? いや4、5回は来てね。ラゴーネ、マリちゃん達を送ってやって」
「わかった!」
「後2、3回、4回か5回かぁ。がんばります!」
《ワシもがんばるぞ!》
手に杖を出して、直に私の屋敷までの転移魔法を唱えるゲドウさん。あらわれた転移の魔法陣の中へラゴーネさんと手を繋いだとき。ゲドウさんが何かを思いだして声をだす。
「あ、言い忘れたけど……その実、あまり………」
転移が始まっていてよく聞こえなかったし、一瞬で屋敷の庭まで戻ってしまい、こちらから向こうには行けない。
「ラゴーネさんはわかる?」
「わからんな。硬いから、しっかり火をとおして食べろと言ったのかもな」
《それだな》
ヴォルフ様がいらっしゃる夕方まで時間があるから、厨房で茹でましょう。
「ラゴーネさんありがとう。しっかり火をとおして、カルロに食べてもらう。送ってくれてありがとう、またポテチを食べに来てください」
「ああ、次は2日後だな。それとその憑依だっけ? なおるのか?」
ラゴーネさんは私の耳を指差した。
「あ――これはヴォルフ様かお母様に聞かないと、解き方がわからないんです。大丈夫ですよ」
「そっか、次は2日後だな。ゆっくり休めよ!」
「はい!」
《またな!》
背中に羽を生やして飛んでいく、ラゴーネさんを見送り。私は厨房に移動して、万能の実を綺麗に洗い柔らかく茹でて、カルロの離れの家に持っていった。
この後――ゲドウさんの聞こえなかった言葉を理解する事となった。
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