上 下
49 / 106

47話

しおりを挟む
 お母様は鑑定魔法が終了後――魔術師達を集めて話している。どうやらお母様たちの鑑定魔法でも、ドラゴンに呪いがかかっていると鑑定がでたみたい。

 しかし。

 みんなは集まり話をしながら、渋い表情を浮かべている。それは呪いというモノはそうやすやす解術できないらしい。ヴォルフ様もその事を知っているらしく、魔術師たちの話を聞きながら、シラと話している。

(なになに? 呪いを受けた場所が分かればいい?)

 その場所を見分けるのが難しいらしく、みんなは頭を悩ましている。だが悠長にしていられない。ドラゴンとの戦いでケガ人を多くだしている、騎士団達の体力に限界がきている。

「に、苦手ですが……呪いに詳しい、あの方に連絡を入れます」

「カカナ様? ……そうですね、そうして方がいい」
「後で、あの方のグチグチ、ネチネチな愚痴は代わりに僕が聞きます」

 そうとう苦手らしく、渋い表情のままのカカナお母様は連絡用の水晶を、胸元から取り出した。

 その連絡をするとき。


「[クソ、クソ、コノオレサマガ――コンナコトニ、ナルトハナァーー!]」


(え? ドラゴンにも限界がきた⁉︎)


「[チクチク、チクチクトウザイ! ジャマダ、ニンゲン!]」


 グワァーーっと。ドラゴンは大きな口を開き、外部と連絡するお母様に向けて吐き出す。

(危ない! カカナお母様⁉︎)

「ヴォルフ様、トラ丸をお願いします」
「え?」

 頭からトラ丸を下ろして、私はお母様の前に走り周り「「ウィンド・シールド」」と風魔法を叫んだ。私とドラゴンの間に緑色の風のシールドが現れて、ドラゴンが吐いた炎を防ぐ。

「[ナニ!]」

(ヴぐっ! ヴォルフ様と行った魔法訓練のときの、魔法の炎とは桁違いの熱量だわ。気を抜いたら、一気に風のシールドは消えて大やけどをおう)

「ウググッ! 「ウィンド・シールド」」

 再度、風魔法を叫びシールドを強化した。

《マリ⁉︎》
「マリーナ⁉︎」

「[オオ! チイサキニンゲンガ……ホノオヲフセイダ? ニンゲンノナカニモ、ナカナカノマリョクヲ――モツモノガイルノダナ]」

「「マリーナ? あなた何をしているの!」」
《マリーナ、逃げろ!》

 突然前に現れ風魔法を使った私に、お母様とジロウの驚く声が聞こえた――が。この場を退けば、ドラゴンが吐く炎はお母様と駆け寄ってきたジロウを襲う。

「嫌です! カカナお母様、ジロウ、私はここを退きません!」

 


 お母様とジロウを守るんだ! 風のシールドで炎を抑えている私に。

「[オヌシ、チイサイノニ、ナカナカ――ヤルナ]」

「ほ、褒めてくれるの? 嬉しい、ドラゴンさん!」

(ヤバッ、つい嬉しくて反応しちゃった)

 返事が返ってこないと思っていたドラゴンに、言葉を返したからか。ドラゴンの瞳が大きく開き、口から炎は消えた。

「[オイ、オヌシ! ワレノコトバガ、ワカルノカ?]」

 みんなには『ガウウウ?』と聞こえたドラゴンの声に。

「はい、まるッと聞こえています」

 親指を立てた。


「[エエ――――⁉︎]」

「「ええ――――⁉︎」」

《ほんとうですかぁ!》


《……マリ》
〈大胆だな〉
《マリーナ、面白い!》
「彼女の行動は想像を超えますね」
《ポも、驚いた!》

 驚愕のドラゴンと騎士団、魔術師、カカナお母様とジロウの驚く声と。ヴォルフ様達のあきれた声に『あれ私? 何かやっちゃいました?』異世界に転生した人が必ず……じゃないけど。無自覚でチートを使ったあとに言う――言葉が頭に浮かんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~

扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。 公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。 はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。 しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。 拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。 ▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ

悪役令嬢は頑張らない 〜破滅フラグしかない悪役令嬢になりましたが、まぁなるようになるでしょう〜

弥生 真由
恋愛
 料理が好きでのんびり屋。何をするにもマイペース。そんな良くも悪くも揺らがない少女、 陽菜は親友と共に事故にあい、次に目覚めたら乙女ゲームの悪役令嬢になっていた。  この悪役令嬢、ふわふわの銀髪に瑠璃色の垂れ目で天使と見紛う美少女だが中身がまぁとんでも無い悪女で、どのキャラのシナリオでも大罪を犯してもれなくこの世からご退場となる典型的なやられ役であった。  そんな絶望的な未来を前に、陽菜はひと言。 「お腹が空きましたねぇ」  腹が減っては生きてはいけぬ。逆にお腹がいっぱいならば、まぁ大抵のことはなんとかなるさ。大丈夫。  生まれ変わろうがその転生先が悪役令嬢だろうが、陽菜のすることは変わらない。  シナリオ改変?婚約回避?そんなことには興味なし。転生悪役令嬢は、今日もご飯を作ります。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する

山本いとう
ファンタジー
異世界へと転生してきた悪役令嬢の取り巻き令嬢マリアは、辺境にある伯爵領で、世界を支配しているのは武力だと気付き、生き残るためのトレーニングの開発を始める。 やがて人智を超え始めるマリア式トレーニング。 人外の力を手に入れるモールド伯爵領の面々。 当然、武力だけが全てではない貴族世界とはギャップがある訳で…。 脳筋猫かぶり取り巻き令嬢に、王国中が振り回される時は近い。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います

真理亜
恋愛
私、リリアナが転生した世界は、悪役令嬢に甘くヒロインに厳しい世界だ。その世界にヒロインとして転生したからには、全てのプラグをへし折り、地味に目立たず過ごして、ざまぁを回避する。それしかない。生き延びるために! それなのに...なぜか悪役令嬢にも攻略対象にも絡まれて...

処理中です...