（完結〉恐怖のギロチン回避！ 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え？ 私のことはお気になさらずに

カラス 転生者の男

　ボクはライトノベルが好きな会社員だった……仕事か、どうしてか分からないが。気付いたら自分は、裕福な貴族の子供に生まれ変わっていた。

（スゲェ、転生だ……魔法が使えるのか？）

　日々、何不住もなく楽しく暮らしていた。
　そんなある日、男は両親に王城で開催された舞踏会へと連れて行かれる。それは、王子の婚約者として選ばれた令嬢との、お披露目の舞踏会であった。会場で男はアサルト王子、カサンドラの名前を聞き、好きだったライトノベルの世界だと気付く。

（マジか、一押しのカサンドラがいる。可愛いなぁ……）

　男は子供のカサンドラに恋をした。だが、ある記憶も男は思い出した。――カサンドラが18歳のとき、婚約者を奪った妹を毒殺しようとして捕まり、断頭台にかけられて死ぬことを。

　――愛しの、カサンドラを助けなくちゃ。

　そうだ、この小説は第二部があり……魔女が出てくる話がある事を思い出した。だから男は魔女の居所、現れるところを知っていた。

（どうにか魔女の弟子になって、カサンドラを助ける？　いいや、それでは面白くない。自分が世界一だとしか考えられない、性悪のカサンドラがより年下の妹に取り入り、カサンドラを落としに落として。心が病んだところを助けて、ボクに気を向けさせれば彼女のすべてが手に入る）

　男の考えはゲスだった。

　こうして男は身寄りがない捨て子を演じ、見た目からカラスという名をもらい魔女の弟子になると。魅了の魔導具と、ふくよかになる薬を手に入れ……カサンドラの妹に取りいった。妹は喜び、それを使い周りの人々を惹きつけ、カサンドラを徐々にふくよかにして……アサルト王子に嫌わせた。

　妹はその隙を狙い、アサルト王子に擦り寄った。
　
　男の計画は順調に進み――カサンドラの婚約破棄の日が来た。この日、カサンドラは妹を毒殺しようとした罪で、アサルト皇太子殿下に捕まり、断頭台へと送られるはず。

　なのだが……男は可笑しいと気付いていた。

　それは――ふくよかなカサンドラの姿は輝くほど綺麗になり、憎き妹を虐めることをしなかった。婚約者のアサルト皇太子殿下に執着もせず、何か準備をしている様に見えた。

　その行動で、男は考える。

　カサンドラは自分と同じ転生者じゃないかと。乙女ゲームなどであるヒロイン、悪役令嬢どちらかが転生者。または両方転生者の場合が多い。だったら、カサンドラはなんの隔たりもなく、同じ転生者の自分を受け入れてくれると考えた。

　別荘に行った、カサンドラをズッと追いかけ見ていた。

　だが、そこへ師匠の魔女が現れ、魔法で跳ね返され側に寄れなくなった。しまいに……カサンドラの側にいる、獣人とメイドにまで邪魔をされる。

　――カサンドラは転生者で、僕の者。


　大丈夫だ。
　今宵の舞踏会で会える。


『あなたも転生者なんですか、私もです。同じ転生者に会えて嬉しい』


　と、ボクにこう言って、僕の腕の中で笑ってくれるはずだ。


　シャリィに呼ばれて、ウキウキとバラの花束を持って出てきたが、カサンドラは転生者じゃなかった。

　そして、僕の時止め魔法を解除して、ボクより見た目の劣る……獣人の男に微笑みかけて、寄り添った。