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58話

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 夕方に差し掛かる頃、王都の近くの街ワルクに到着した。
 昨夜と同じように宿屋で部屋をとり、この街の名物シチューを食べに、カサンドラ達は街へとくりだす。

「アオ君、シュシュ、早く行きましょう!」
「ドラ、1人で行くな!」
「お嬢様、待ってください」

 ワルクの街には幾つもの街灯が灯り、夕飯ときだからか、大勢の人々が行き交い賑わっていた。カサンドラ達も人々に混じり、舗装された街の中をウキウキ歩いている。

「凄く美味しいんですって、ワルクの街の名物シチュー楽しみね」
 
「はい! お肉がゴロゴロ入ったビーフシチューが食べたいです」

「お肉がゴロゴロか、いいな」

 カサンドラ達は宿屋の人に教えてもらった、シチューの有名店に向かっていた。着いた店は多くの人々で賑わう有名な店――その店で、カサンドラ達も心ゆくまでお肉ゴロゴロのシチューを楽しみ、部屋を取った宿屋へと戻ってきた。
 
 各部屋に入る前、カサンドラはアオに声をかける。

「アオ君、明日の予定を相談したいから、寝る前に部屋に来て」
 
「わかった、1時間後にドラとシュシュの部屋に行く」

 

 1時間後。約束の時間になり、アオはカサンドラとシュシュの部屋に訪れた。

 部屋の扉をノックすると「どうぞ」と中から返事が返る。アオが部屋に入ると目の前に……お風呂上がりなのか。髪が濡れて、寝巻き姿のカサンドラがいた。

「ドラ⁉︎ ……うわっ、ごめん」
「あ、アオ君いらっしゃい。さあ、入って」

 顔を真っ赤にして、目を瞑ったアオと。
 タオルで髪を拭きながら、微笑んで迎えたカサンドラ。

 その対照的な2人を、シュシュは微笑んで見ていた。


「何しているの? アオ君! 早く、ここに座って」

「あ、ああ……」

「フフ、私は紅茶をいれてきますね」

 部屋のテーブルに座り、明日の予定をカサンドラは話しはじめた。

 早朝、ワルクの街を出れば、お昼前に王都へ着く。

 アサルト皇太子とシャリィの婚約発表の舞踏会は、夕方からの開催だから。その時間まで王都観光をするか、宿屋を先に取れば休憩が出来ると、カサンドラはアオに伝えた。
 
「王都を回るか、休むか、か。……明日はゆっくり休んで、王都の観光は舞踏会が終わってからで、いいんじゃないか? その方がゆっくり回れるだろう?」

「舞踏会の後に観光ですか? それなら、2、3日ゆっくり、王都の観光をしたいわ」

「王都観光を2、3日ですか? いいですね……私、書店と、王都の裏に路地にある古書店に行ってみたいです」

「書店と古書店? 私も行きたいわ。じゃ、舞踏会の後、王都観光で決まり!」

 ――明日の早朝、御者に話をして、料金を先払いすればいいわね。
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