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53話

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 カサンドラ達は喫茶店でアップルパイを堪能して、王都までの旅にいる服、日用品などを買った。次に寄ったカバン家で、お揃いの旅用のカバンを買うことにした。

「この革製のカバンにしましょう、大きいから、物もたっぷり入るわ」

 丈夫な革のカバンをカサンドラは手に取り、アオとシュシュに見せる。アオはそのカバンの値段に驚き、シュシュは品に驚いた。

 そうとうな高級品だ……買う気満々な彼女には言えず、カウンターに待っていくその姿を追った。だが、カサンドラは次に小さな肩掛けバック3つと、財布を3つ手に取った。

 それにはアオも慌てて、カサンドラを止める。

「ドラ? 買いすぎだ」
 
「どうして、アオ君? お金の心配はいらないわ。それに、これから3人で旅行に行ったり、アオ君の家に泊まったりするでしょう? すぐに壊れるような、旅行カバンではいけないと思うの」

 カーシン国の、アオの家を第二の別荘にした。
 前にカサンドラと旅行にいこうと、3人で話していたことを、アオとシュシュは思い出した。

「そうでした、それなら丈夫なカバンは必要です」
 
「シュシュも思うでしょう! みんなで同じカバンを長く使いたいから、良いものを買いたいの」

「なら、ありがたく使わせてもらう。ありがとう、ドラ」

「どういたしまして。アオ君には私達のレベル上げと、荷馬車を操縦してもらいますわ」

「ああ、任せておけ」

 カサンドラはアオ、シュシュと一緒に、楽しい話をしたい。あの日見た――断頭台への道は完全に回避できたのかも、わからない。出来れば舞踏会に参加したくないし、あの2人にもお会いたくない。

 実の姉に毒を盛るような、妹のシャリィは正直怖い。
 アサルト皇太子殿下と妹の婚約披露の舞踏会で、あのドレスを着た姉のカサンドラを、彼女は笑い者にしたいのだろう。

 妹の魂胆をわかっているからこそ……余計に恐怖を感じる。巻き戻る前に、断頭台からカサンドラを見下ろす、妹の歪んだ表情。

 ――私が、妹に嫌われていることはわかっている。

 ほんとうにアオと、シュシュがいてくれて良かった。
 1人だと、恐怖で……泣いていた。

 2人がいるから、2人がいてくれるから、カサンドラは笑える。だから、2人にもっと、もっと、お礼がしたい。

「さぁ、次の店に行きましょう!」

 アオの変身が解けるまで、カサンドラ達はタサの街で買い物を楽しんだ。

 

 ♱♱♱
  

 
 舞踏会の開催、3日前の早朝。
 
 カサンドラは妖精のキリリに、しばらく用事で別荘をあけると説明して、スルールの果実を渡した。キリリは「一週間くらい大丈夫よ。スルールの実は大切に食べるから、早く戻ってきてね」と、カサンドラ達の周りを飛んだ。

 セリィーヌお祖母様は用事があるとかで、何処かへとお出かけしていき。カサンドラは頼んだ御者に地図を見せ、ここから約4時間進んだチルリの街で昼食をとり。
 今日は、ゴロールの街で泊まることを告げた。

「かしこまりました。馬を休めるため2時間に一度、休憩をはさみながら進みます。御用がありましたら、中の紐を引いてください」

「わかりました、お願いします」

 お揃いの旅行カバンを持って、カサンドラ達は貸し馬車に乗り込んだ。
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