1 / 20
一
しおりを挟む私は婚約者のレオーン様に恋をしていた。
そして何よりも、王子に愛されている世界一、幸せなお姫様だと思っていた。
「リリア」
「あ、ダメです。レオーン様」
ダンスレッスン後。誰もいないホールの隅……ここからだと廊下を歩く人には見えない、死角に追いやられる。
目の前の王子はもうその気のようだ。
「まって、レオーン様」
嫌だと言っても彼は聞かない、むしろ強引に攻めてくる。
「はぁ? なんだよダンスの練習中にキスしたいって、おねだり顔をしていたのはお前だろ、リリア?」
「違う……」
彼の瞳には欲望が滲んでいる。
ダンス中の真面目な表情が素敵で、つい、いつもよりも見つめた。いつもはしっかり王子をしている貴方が、いまはオオカミさんで困るわ。
「リリア、ダメか?」
リリア……貴方に名を呼ばれるだけで、私が逆らえなくなるって知っていて、わざと名前を呼ぶなんて酷い。
「なあ、キスさせろよ、リ、リ、ア」
「あっ、待って!」
強引に顎を持ち上げて、噛み付くよくに私の唇を奪うあなた。拒めない私はあなたの乱暴なキスに溺れていた。
「もう、レオーン様ったら信じられない」
帰りの馬車の中で叫ぶ。私の隣に座った、付き添いのメイドは崩れた髪を直している。最後まではしなくても、あんなに激しいキスをするなんて、彼の熱い吐息に熱い瞳……好き、レオーン様。
お父様に花嫁修業もせずに、あんな事をしていると知れたら、叱られてしまうわ。
でも、レオーン様の。あの瞳に見られると逃れられないの。
また、また別の日。
「リリア……俺から離れることは許さないから、ほら呼べよ俺の名前を呼べ」
「レオーン様」
「違うだろう」
首を舐め上げられ噛まれる。ぞくっとする快感が押し寄せる。
「やだ、そこは噛まないでレオーン」
あぁ、この痛みも幸せ。
次の日、衝撃が待っていた。
「うそ……学園に行けない」
昨日、レオーン様に首を噛まれた跡が消えていない、支度をしにきてくれたメイドも、後ろで困ってるのがわかる。
でも、跡は首の後ろの方だから髪を下ろせば隠せるかな?
「こういう髪型にしてください」
メイドに指示を出す。
「はい、リリアお嬢様」
二つ結びにして髪を下ろして、白粉を塗ってなんとか隠れたかな? あんなにくっきりと首に跡が残るなんて、初めてのことだ。
レオーン様の婚約者になったから、郊外にある屋敷からだと何時間もかかるからと、お父様は王都の近くに、小さな私専用の屋敷を買ってくれた。
そこから学園に通い、王城に花嫁修業にも馬車で通っている。
何も変わらない幸せな日々。
私はレオーン様に愛されていると、思っていた。
0
お気に入りに追加
901
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
悪役令嬢は王子の溺愛を終わらせない~ヒロイン遭遇で婚約破棄されたくないので、彼と国外に脱出します~
可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。第二王子の婚約者として溺愛されて暮らしていたが、ヒロインが登場。第二王子はヒロインと幼なじみで、シナリオでは真っ先に攻略されてしまう。婚約破棄されて幸せを手放したくない私は、彼に言った。「ハネムーン(国外脱出)したいです」。私の願いなら何でも叶えてくれる彼は、すぐに手際を整えてくれた。幸せなハネムーンを楽しんでいると、ヒロインの影が追ってきて……※ハッピーエンドです※
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?
榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した
しかも、悪役令嬢に。
いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。
だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど......
※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて
断罪シーンを自分の夢だと思った悪役令嬢はヒロインに成り代わるべく画策する。
メカ喜楽直人
恋愛
さっきまでやってた18禁乙女ゲームの断罪シーンを夢に見てるっぽい?
「アルテシア・シンクレア公爵令嬢、私はお前との婚約を破棄する。このまま修道院に向かい、これまで自分がやってきた行いを深く考え、その罪を贖う一生を終えるがいい!」
冷たい床に顔を押し付けられた屈辱と、両肩を押さえつけられた痛み。
そして、ちらりと顔を上げれば金髪碧眼のザ王子様なキンキラ衣装を身に着けたイケメンが、聞き覚えのある名前を呼んで、婚約破棄を告げているところだった。
自分が夢の中で悪役令嬢になっていることに気が付いた私は、逆ハーに成功したらしい愛され系ヒロインに対抗して自分がヒロインポジを奪い取るべく行動を開始した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる