上 下
96 / 99

九十四

しおりを挟む
 ぶつかり合い、宴会は続き辺りが薄ら明るくなり、夜が明ける。お父様は明るくなってきた、空を見上げて、

『天に戻る時がきた……タリナ、抱きしめたい、きてくれ』

 呼ばれたお母様はお父様に近付き、二人は熱い抱擁をした。

「あなたにもう一度、会えて嬉しかったわ。私、おばちゃんになったでしょう?」

 照れながらいうお母様に、

『ん? どこが変わったのか? 今も昔も可愛いよ、タリナ。ずっと大好きだ、愛している!!』

「フフ、嬉しい。早くあなたの元に行きたいのだけど、行くのは少し待ってください。これから生まれるナサの子供、息子と娘達の結婚、孫を見届けてからいきますね」

 お父様は頷き。

『ハッハハ、ゆっくりコチラにくればいい。再び会えたときには沢山の土産話を聞かせてくれ……ナサ、嫁を大切にするんだぞ。チア、良い嫁をもらい、弟と妹でユーシリン国をよろしくな!』

「親父、嫁を大切にする! 会えて嬉しかった!」

「父上! ユーシリン国を守り、母上、弟、妹を大切にします……もう一度、会えてよかった!」

 お父様にお別れの言葉を伝えて、
 ナサとお兄様はポタポタ涙を流した。

 二人を見て大きく頷き、次にわたしを見た。

『リーヤさん、ナサをよろしく」

「はい! 幸せな家族になります!」

 ウンウンと、嬉しそうに微笑んだ。

『ユーシリン国のみんなも幸せになってくれ! アサト、ロカ、レン、ギギ、ルフ、ナサのそばにいてくれてありがとう。……よし!! もう、未練はない……竜旦那、頼んだ!』

 竜旦那は地面に木の枝で魔法陣を描き、真ん中にお父様を立たせた。術を唱えると魔法陣が光り、お父様は『俺は幸せ者だ!!』大声で叫び空に消えていった。

 そのあと、ポトッと落ちた骨は黒く呪われていない普通の骨で、お母様は拾い胸に抱いて泣いた。竜旦那はその骨が崩れないように"護りの魔法"をかけた。

「あと、呪われた骨は余が全て呪いを解き、安らかに眠らせたから心配いらぬ。それと一つ言っておく、強制召喚は魔力が高い者しかできない……人にはとうてい無理だと思うので、これ以上、強制召喚は行われないだろう」

 竜旦那はいう。

「みんな、リーヤ、余の嫁に優しくしてくれてありがとう。これから北の巣に帰って、嫁と会えなかった分を取り戻す。あと妻が冒した罪に祈りをささげる。しばし巣に篭るゆえ、お礼はしばらく待ってくれ」

 そうみんなに伝えて竜嫁をお姫様抱っこをして、巣に帰っていった。残ったわたし達も片付けをして、宴会はお開きした。

 ユーシリン国のみんなは北門の近くで野営をするといい、アサトとロカは久しぶりに会った仲間のもとに残り。ナサは寝てしまったリヤとカヤを抱え、ミリアさんとわたしと一緒にミリア亭に移動。

 カートラお兄様とランドル様は『とても神秘的なものが見られた』『番とはいいものだな』と言い、中央区の宿に戻り、今日のことを両親に話をすると言ってくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。

友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。 あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。 ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。 「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」 「わかりました……」 「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」 そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。 勘違い、すれ違いな夫婦の恋。 前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。 四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。

大好きな旦那様が愛人を連れて帰還したので離縁を願い出ました

ネコ
恋愛
戦地に赴いていた侯爵令息の夫・ロウエルが、討伐成功の凱旋と共に“恩人の娘”を実質的な愛人として連れて帰ってきた。彼女の手当てが大事だからと、わたしの存在など空気同然。だが、見て見ぬふりをするのももう終わり。愛していたからこそ尽くしたけれど、報われないのなら仕方ない。では早速、離縁手続きをお願いしましょうか。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

たとえ番でないとしても

豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」 「違います!」 私は叫ばずにはいられませんでした。 「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」 ──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。 ※1/4、短編→長編に変更しました。

あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します

矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜 言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。 お互いに気持ちは同じだと信じていたから。 それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。 『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』 サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。 愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

処理中です...