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九十三

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 北門の外は料理のいい匂いがした。私はミリア亭に行って、心配で店に残っていたミリアさんにも事情を説明してきてもらい、ユーシリンのみんなと一緒に料理を作っている。

「へぇ、北の地に守護竜の番がいたのかい……私はガレーンで、生まれたけど知らなかったよ」

 と、ミリアさんは二人を見ながらこたえる。
 それに竜の旦那は、

「貴方が生まれるより前に、北の住処を荒らされて、私達は離ればなれになりました……ヤツらはドラゴンをただの道具だと思っていたし、人々に恐怖心を与えるからかもしれません」

 道具ーーその言葉に同調するかなように話しだす、ナサ、ロカ、アサト。

「道具かわかるような気がする。亜人隊がモンスターの活動が増える夜の北門を守っていると、北区以外の住民は知らない」

「ええ、知りませんね。北区に亜人達の街があるのさえ、知らない人もいるでしょう」

「まあ、ガレーンに住む人々に危険地区と呼ばれる、北区に貴族、商人、一般市民は足を踏みこまねぇ」

 危険地区? 初めてその言葉を聞いたのだけど……わたしは言い方が悪くなるけど、違う区の人達に貧困地区だと聞いていた。当時は離縁したてでお金もなく、家賃が安いから住もうと思った。

 リルガルドから乗ってきた馬を売り、安い家を買ったけど雨漏りして、仕事を探してミリア亭とミリアさんに出会い、亜人隊のみんなとーーナサと出会った。

「わたしは北区に住んでよかったわ。ステキな旦那様も見つけられたもの……幸せを見つけた街だよ」

「シッシシ、オレもリーヤと会えて幸せだ! ますます北区を守りたい!」

『盛大に息子が惚気たぞ、みんなグラスを持て乾杯だぁ!!』

 お父様の声に宴会が始まった。



 食べて飲んで久しぶりに会った者との語り合い、ナサはお父様とお母様、お兄様のところで話している。わたしはカートラお兄様とランドル様、竜の嫁と話していた。竜はアサト、ロカ、ミカと話している。

 リキは明日が早いと帰っていった。

「カートラお兄様、お父様とお母様に会いたいわ。明日の舞踏会で会えるかしら?」

「俺達は今夜の舞踏会に出た後、帰る予定だった。父上の仕事と、俺とランドルは仕事があるからな……舞踏会はです、明日の早朝リーヤの家に連れていくよ、ナサにいて欲しいのだが平気か?」

 わたしは家族と楽しげに話す、ナサを見て、

「わかった、あとでナサに伝えておくわ」

 とお兄様に伝えた。

「ねぇ、リーヤはあのトラと結婚してるの?」

 カートラお兄様との話が終わると、
 そばで静かに飲んでいた、竜嫁が話しかけてきた。

「そうです、ナサと結婚しています」

「ムフッ、私と同じだわ。貴女からあのトラの匂いがする、貴方はとてもとても愛されている。私と同じ……私、ジン大好き、愛してる、早く子を産みたい」

 頬を赤らめて、嬉しそうに話す竜嫁が可愛い。
 旦那を好きだとも伝わってくる。

「子供はいいですね」

「ねっ、二人の子供も可愛いね。まっ、私の子供は……もっと、可愛かも」

 自慢げに勝てる竜嫁、目線の先は竜旦那を見ていた。
 旦那も嫁を見てニッコリ笑う。

 
 宴は最高潮となり酒に酔った男どもは、線をひいた円の中で体当たりを始める。それにお兄様とランドル様も目を光らせた。

 アサトとナサ、お父様と竜旦那、ナサのお兄様とわたしのお兄様、ロカとランドル、次々と体当たりをして買った負けたと笑っている。

「リーヤ、私と戦いましょう」
「えっ?」

 竜嫁に手を引かれて円の真ん中。
 見合って、瞬殺で飛ばされてナサにキャッチされた。

「私、強い。リーヤとトラ仲良くな……私、悪いことたくさんしてしまったわから、旦那ごめんね。大トラもごめんなさい」
 
 深々と頭を下げた。

『気にすんな、俺はこうして最愛の妻と息子に会えた! 息子の嫁にも会えた……奇跡が起こらなくちゃ見られない光景だ、ありがとう俺を呼んでくれて」

「で、でも……あなたは呪い骨になって、しまうんでしょう?」

『ならないみたいだ、竜旦那が天に送ってくれるそうだ、だから安心して喜べ、笑え、探していた番に会えたんだからな!』

 お父様が笑うと、竜嫁も笑った。
 
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