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七十五
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「じゃ、レン、手紙をよろしく」
「おお、まかしておけ! リーヤちゃんもまたね」
レンさんの配達屋をあとにして、次にナサはそばの服屋に案内してくれた。リリン、リリンとドアベルを鳴らして店内には入ると、キジトラ柄で執事服の店主が迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。これはナサ坊ちゃんと可愛いお嬢さん」
ナサ坊ちゃん?
「リーヤ、俺の古い知り合い猫族のギギだ」
「はい、坊ちゃんの古い知り合いのギギと申します」
「はじめまして、ギギさん。わたしはリーヤと言い、ミリア亭で働いています」
スカートを掴んで挨拶した。
「なんと、ナサ坊ちゃんがお世話になっているミリア亭ですか。あそこは亜人種族にも優しい、よいお店です」
顎に手をおきウンウン頷き、ギギは優しく微笑む。
「今日はギギに俺の嫁を見せに連れてきたんだ。あと、少し店を見ていくな」
「この方がナサ坊ちゃんの嫁ですか? これは、おめでとうございます。坊ちゃんの嫁様、どうぞ、ごゆっくり見ていてくださいませ」
と、優雅に頭を下げて、レジに下がっていった。
わたしはお言葉に甘えて店内を探索して、草色のワンピースを見つけた。
「うわぁ、このワンピース可愛い」
「いい色だな。ここはデザインも良くて、安いぞ」
「え、安いの? ほんとうだ。わたしにも何着か買える値段!」
ーーちょうど練習用のシャツと、お手掛け用のワンピースが欲しかったの。
「でも、リーヤに一つだけ欠点を言うとな……ここの服は亜人用で尻尾穴が空いている」
「尻尾穴? ああ、これね。大丈夫、同じ色の当て布を上手く当てればいいの。ナサ、この服かわいい」
「シッシシ、尻尾穴を気にしないのな」
「ええ、気にしないわ」
わたしはアレもこれもと服を選んで、鏡の前であててみる。
(どれも素敵なデザインで迷うわ。初めに気に入ったシャツとワンピースはお給料が入ったら買いにこよっと)
「リーヤはそのシャツとワンピースが気に入ったのか?」
「うん、そうだけど……あ、ナサ?」
ナサはシャツとワンピースを持って、レジにスタスタと行ってしまう。その後を追っていくと。
「ギギ、コレとこれをくれ」
店主に渡した。
「坊ちゃん、ありがとうございます。いま、ワンピースの当て布を準備いいたしますね」
「ナ、ナサ、いいの?」
「オレからリーヤにプレゼント。こんど、それを着てオレとデートしてくれ」
(あのワンピースを着てナサとデート? 嬉しい!)
「はい、お弁当を持ってピクニックデートがしたいです」
「弁当を持ってピクニックか、いいな。休みに馬を借りて遠出するか」
「馬で遠出? したいです!」
「ホオッホッ、ナサ坊ちゃんと嫁様は仲の良いことで、うらやましい限りです」
ギギさんは『結婚祝いです』と、シャツとワンピースの値段をまけにまけてくれたのだった。
「また、きてくださいね」
「はい、またきます!」
わたし達はギギの店を後にしてミリア亭に戻る前に馬貸屋に寄った。店の前には長身で黒毛のオオカミ姿の男性がダルそうに立っていた。
「おいルフ! 外で獣人の姿のままだと騎士団に捕まるぞ!」
ナサの声にそのオオカミは。
「ウルセェ、もう何度も騎士団には捕まってるよ。ワーウルフの一件以来、アイツらは俺が獣人だろうが半獣人だろうが関係ねぇんだよ。俺がオオカミだからって悪い事をしなくてもーー奴らは捕まえる」
「はあ? なんだその理不尽な理由は! 早くオレに言えよ、騎士団に文句を言ってやる」
ナサが怒るのもわかる。このオオカミのルフさんはワーウルフとは関係ない。そして、ワーウルフは強制召喚によって呼ばれたモンスター。
(強制召喚で召喚された者は魔獣化して、言葉も通じつ、召喚士の命令に背くことができないと習った……)
「俺は違うと、どう説明してもアイツらにはわからないんだ、全部いっしょにみやがる……ん? コイツ人間か?」
ジロリと睨まれてる。ナサはソッとわたしの手を握り。
「オレの嫁だ。そして、ワーウルフと戦った女性だ」
「はぁあ!! ナサ、お前、人間と結婚したのか……マ、マジかよ。それでその子がワーウルフと戦った?」
長身を曲げて、わたしの顔を覗き込んで、
「う、嘘だろ! こんな華奢なべっぴんさんがワーウルフ戦ったのか?」
コクリと頷く。
「マジか…………で、アイツらはどうだったんだ? 苦しんでいたのか?」
眉をひそめて聞いてくるルフに、またコクリと首を縦に振った。そのときのルフはなんとも言えない表情を浮かべた。
「……あ、あの二体のワーウルフは強制召喚だったので、苦しんでいたはずです。怒り、痛みに叫びたくても、召喚士の命令に逆らえず戦うことしか許されない」
「戦うことだけ、そうか……」
「ワーウルフを呼んだ召喚士は何処で"あの骨"を、手に入れたのかはわかりませんが。あのワーウルフは夫婦だったと思います」
「「え、夫婦?」」
そうだと決めつけられなくて、ナサにも伝えなかったからびっくりした表情を浮かべて、ルフと声がかぶった。
「おお、まかしておけ! リーヤちゃんもまたね」
レンさんの配達屋をあとにして、次にナサはそばの服屋に案内してくれた。リリン、リリンとドアベルを鳴らして店内には入ると、キジトラ柄で執事服の店主が迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。これはナサ坊ちゃんと可愛いお嬢さん」
ナサ坊ちゃん?
「リーヤ、俺の古い知り合い猫族のギギだ」
「はい、坊ちゃんの古い知り合いのギギと申します」
「はじめまして、ギギさん。わたしはリーヤと言い、ミリア亭で働いています」
スカートを掴んで挨拶した。
「なんと、ナサ坊ちゃんがお世話になっているミリア亭ですか。あそこは亜人種族にも優しい、よいお店です」
顎に手をおきウンウン頷き、ギギは優しく微笑む。
「今日はギギに俺の嫁を見せに連れてきたんだ。あと、少し店を見ていくな」
「この方がナサ坊ちゃんの嫁ですか? これは、おめでとうございます。坊ちゃんの嫁様、どうぞ、ごゆっくり見ていてくださいませ」
と、優雅に頭を下げて、レジに下がっていった。
わたしはお言葉に甘えて店内を探索して、草色のワンピースを見つけた。
「うわぁ、このワンピース可愛い」
「いい色だな。ここはデザインも良くて、安いぞ」
「え、安いの? ほんとうだ。わたしにも何着か買える値段!」
ーーちょうど練習用のシャツと、お手掛け用のワンピースが欲しかったの。
「でも、リーヤに一つだけ欠点を言うとな……ここの服は亜人用で尻尾穴が空いている」
「尻尾穴? ああ、これね。大丈夫、同じ色の当て布を上手く当てればいいの。ナサ、この服かわいい」
「シッシシ、尻尾穴を気にしないのな」
「ええ、気にしないわ」
わたしはアレもこれもと服を選んで、鏡の前であててみる。
(どれも素敵なデザインで迷うわ。初めに気に入ったシャツとワンピースはお給料が入ったら買いにこよっと)
「リーヤはそのシャツとワンピースが気に入ったのか?」
「うん、そうだけど……あ、ナサ?」
ナサはシャツとワンピースを持って、レジにスタスタと行ってしまう。その後を追っていくと。
「ギギ、コレとこれをくれ」
店主に渡した。
「坊ちゃん、ありがとうございます。いま、ワンピースの当て布を準備いいたしますね」
「ナ、ナサ、いいの?」
「オレからリーヤにプレゼント。こんど、それを着てオレとデートしてくれ」
(あのワンピースを着てナサとデート? 嬉しい!)
「はい、お弁当を持ってピクニックデートがしたいです」
「弁当を持ってピクニックか、いいな。休みに馬を借りて遠出するか」
「馬で遠出? したいです!」
「ホオッホッ、ナサ坊ちゃんと嫁様は仲の良いことで、うらやましい限りです」
ギギさんは『結婚祝いです』と、シャツとワンピースの値段をまけにまけてくれたのだった。
「また、きてくださいね」
「はい、またきます!」
わたし達はギギの店を後にしてミリア亭に戻る前に馬貸屋に寄った。店の前には長身で黒毛のオオカミ姿の男性がダルそうに立っていた。
「おいルフ! 外で獣人の姿のままだと騎士団に捕まるぞ!」
ナサの声にそのオオカミは。
「ウルセェ、もう何度も騎士団には捕まってるよ。ワーウルフの一件以来、アイツらは俺が獣人だろうが半獣人だろうが関係ねぇんだよ。俺がオオカミだからって悪い事をしなくてもーー奴らは捕まえる」
「はあ? なんだその理不尽な理由は! 早くオレに言えよ、騎士団に文句を言ってやる」
ナサが怒るのもわかる。このオオカミのルフさんはワーウルフとは関係ない。そして、ワーウルフは強制召喚によって呼ばれたモンスター。
(強制召喚で召喚された者は魔獣化して、言葉も通じつ、召喚士の命令に背くことができないと習った……)
「俺は違うと、どう説明してもアイツらにはわからないんだ、全部いっしょにみやがる……ん? コイツ人間か?」
ジロリと睨まれてる。ナサはソッとわたしの手を握り。
「オレの嫁だ。そして、ワーウルフと戦った女性だ」
「はぁあ!! ナサ、お前、人間と結婚したのか……マ、マジかよ。それでその子がワーウルフと戦った?」
長身を曲げて、わたしの顔を覗き込んで、
「う、嘘だろ! こんな華奢なべっぴんさんがワーウルフ戦ったのか?」
コクリと頷く。
「マジか…………で、アイツらはどうだったんだ? 苦しんでいたのか?」
眉をひそめて聞いてくるルフに、またコクリと首を縦に振った。そのときのルフはなんとも言えない表情を浮かべた。
「……あ、あの二体のワーウルフは強制召喚だったので、苦しんでいたはずです。怒り、痛みに叫びたくても、召喚士の命令に逆らえず戦うことしか許されない」
「戦うことだけ、そうか……」
「ワーウルフを呼んだ召喚士は何処で"あの骨"を、手に入れたのかはわかりませんが。あのワーウルフは夫婦だったと思います」
「「え、夫婦?」」
そうだと決めつけられなくて、ナサにも伝えなかったからびっくりした表情を浮かべて、ルフと声がかぶった。
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