上 下
75 / 99

七十四

しおりを挟む
 ナサと北区を門に向けて歩いていた。壊れた北門はいま、ワカさんと数人の獣人の人が直している。

「リーヤ、もうすぐ特急なんでも配達レンの店に着くよ」

「特急なんでも配達?」

 北区に来て数ヶ月以上は経つけど初めて聞く店の名前だ、ナサの説明では手紙、荷物なとを特急で配達してくれるらしい。運営はチーターのレンがやっていて、足の速いネコ科の獣人が数名いるのだとか。

「安く配達してくれるから家族に荷物、手紙を送るときによく使ってるんだ。でも、配達区域がガレーン国内だけなんだ」

 この前、お袋がとか、兄貴が、弟が、妹がと家族思いのナサ。四人兄弟の上から二番目らしい。いろいろとナサのことを知れて嬉しくて顔がゆるむ。

 その表情を見てか、

「リーヤはオレの家族のこと嬉しそうに聞いてくれるよな。話していて楽しい々

「あたりまえだよ、ナサの家族だもの。結婚したら家族の一員になるのだからいろいろ知りたいし、早くお会いしたいわ」

「来年になったら行こうな」
「はい」

 配達家に着き店の外にある受け付けで、宛先を書き、ナサは手紙を家族宛に送った。

「お預かりいたしました手紙は。明日の早朝にはユーシリン国に着きます」

「そうか、頼んだ」

 そのナサの声が店中に聞こえたのか、一人の黒みを帯びた茶色の髪と琥珀色の瞳の、獣人が店の外にとびでてきた。

「よっ、ナサ。家族に手紙か?」
「そうだ、レン。手紙を頼んだ」

「まかせろ! しっかり、おいらが届けてやるよ」

 仲良く話す二人のそばでいきなり挨拶すると、彼に驚かれるかもと悩んでいた。そんなソワソワしたわたしに気づいたらしく。

「人? ナサ、お前は人と仲良くしてんのか?」

 わたしを見て眉をひそめた。ーーそうだ、北区の獣人達の中には人を嫌う者もいると、ミリアさんから聞いている。いままでミリア亭の近くのミカさんの雑貨屋か、髭ジーの鋳造屋、近くの店にしか行ったことがない。

「レン、彼女はミリア亭で働くリーヤだ。そして……オレの婚約者で嫁になる!」

「ミリア亭? ええ、おいら達の中で一番人嫌いのナサがぁ、人と婚約者したのか?」

 その獣人の驚きようは半端じゃなかった。
 目はまん丸で、丸い耳と尻尾がピィーンとたったのだ。

「お前も知っているだろ、ワーウルフと戦った女性の話」

「ああ、騎士団と共においら達の北区を守ってくれたんだよな。あのまま北区に来ていたら被害が出たと聞く……まさか、この人が戦った女性なのか!」

 ナサはコクリと頷く。
 彼はまた瞳を大きくした。

「嘘だろ。こんなに華奢で、可愛くて、美人だぞ」

 それにまた頷くナサ。

「そのまさかなんだよ、昨夜のモンスターの北門襲撃にも参加して、仲間のリヤとカヤを助けた」

「はーっ!! あのチビ竜達をかスゲェ。ミリアさん、ワカさん、リキの嫁さん達以外にも人の中にいい人がいたるんだな。リーヤちゃんだっけ、チビ達を助けてくれてありがとうな!」
 
 深く頭を下げるレン。

「いいえ、みんながいたから助けられたんです」

「うわぁ、リーヤちゃん、こ、声まで可愛い。……クソッ、だんだんとナサが羨ましくなってきた。こんな可愛い子と知り合えるなんてさぁ!」

 グイッと近付こうとしたレンから、ナサはわたしを背中に隠して。

「レン、リーヤはオレの嫁だ。まあ、見るなとまでは言わないが、触るな!」

 婚約者から嫁になっていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… 6月8日、HOTランキング1位にランクインしました。たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。

友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。 あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。 ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。 「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」 「わかりました……」 「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」 そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。 勘違い、すれ違いな夫婦の恋。 前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。 四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

処理中です...