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六十九

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「リーヤ、寝る」

 ナサはそう呟くと、ガタッとカウンター席でいつものように寝落ちしてた。しばらく、そのその寝顔をわたしは眺めていた。

(……寝顔、可愛い)

 凛々しい瞳が閉じられると可愛い寝顔に変わる、その寝顔を眺めるのがわたしは好きだった。

「ふわぁ。わたしもナサの寝顔を見ていたら、眠くなってきた」

 隣のナサに寄りかかり目を瞑った。









 ぐっすりナサに寄り添い眠り、もぞもぞと動き出したナサにわたしも目を覚ます。

「目が覚めたか? おはよう」
「ん、おはよう、ナサ」

 挨拶の後。目覚めたとたんに"グゥッ"とお腹を鳴らした、元気なナサのお腹に笑った。ミリアさんは既に起きていて、厨房に立ちみんなに食事を作っている。

「ミリアさん、わたしも手伝います」
「そうかい、じゃー二人とも顔を洗っておいで」

 ナサと店の洗面所を使い顔を洗って戻ると、カウンター席にミリアさん特製のコーヒーが置かれていた。 

「それ、飲んだら手伝って」
「はい、分かりました」

 お砂糖をティースプンにニ杯とミルクのわたしと、お砂糖三杯のナサ。ナサは一口、コーヒーを飲んで辺りを見回した。

「なぁ、ミリア、アサトとロカは?」

「アサトとロカは騎士団に顔を出してくるって、少し前に出て行ったよ。顔出しが終わったらすぐに戻って来るんじゃないかな?」

「……そうか」

 わたしたちよりも早く目を覚まして、昨日の報告をする為に騎士団に向かったらしい。奥のテーブルで寝ていたカヤとリヤがもぞもぞと目を覚ます。

「おはよー」
「おはよー」

「おはよう、カヤ君、リヤ君、体はどう? どこか痛いところない?」

 昨夜、戦闘中に怪我をして倒れていた二人。
 そんなに大きな怪我はなかったはずだけど、やはり気になっていた。

「リーヤ、平気だよ」
「うん、平気」

 平気そうだけど二人の目はしばしばして、まだ眠いのか寝ちゃいそうだ。

 そんな二人にナサは立ち上がり。

「シッシシ、カヤ、リヤはまだ目を覚ましていないな。ほら洗面所はこっちだ、顔を洗って目を覚ませ」

「「うん」」

 ナサは二人の背中を押して洗面所へと向かった。
 その姿を見ていたミリアはわたしに近付き。

「リーヤ、ナサって案外、いいお父さんになりそうだね」

「お、お父さんですか? まだ、ナサと結婚もしてないのに……もう、その話ですか?」

「リーヤも見ていて、そう思ったろ?」
「……少し、思いましたけど」

 二人に子供が生まれたら見せに来るんだよって、まだ結婚もしていないのに、気が早いミリアさんだ。

 でも、ナサとの子供か。
 ナサに似て、絶対に可愛いよね。
 
「こらっ、カヤ、リヤ、しっかりタオルで顔を拭け!」

 洗面所から飛び出てきた二人を、タオルを持って追っかけてきたナサ。お前らは『ジッとしろ!』と二人の顔をタオルで優しく拭いていた。

「ねぇ、ナサ、今日の訓練はお休みなの?」
「んー訓練だけ、休みだな」

「やったー、カヤ! チャオとムムの所に行こうよ!」
「行こう!」

 二人は訓練が休みだと聞いて、嬉しそうに話しだす。

「ミリア、僕たちのお昼、お弁当箱に詰めて欲しいんだけどいい?」

「お弁当箱?」

「うん! 友達の所に行って遊んで来る」

「カヤとリヤの友達かい……分かったよ。その友達は何人だい?」

「二人だよ」

 ミリアさんはさっと卵焼き、ソーセージを焼き、さっき作った肉巻きと一緒に大きなお弁当箱に詰めて、風呂敷に包み二人に渡した。

「みんなで、喧嘩しないように食べな」

「ありがとう、行ってくる」
「ナサ、アサトとロカに友達の所にいるって、言っといて」

「分かった、気をつけて行けよ!」

 行ってくる! と二人は元気に友達の所に出かけた入れ違いに、アサトとロカが騎士団の所から戻ってきた。

「なんだ? カヤとリヤは遊びに行ったのか?」
「近頃、二人に同じ歳のお友達が出来たと、言っていましたからね」

「友達? あぁ、そうだったな」

 みんながテーブルに着いたのを見て、ミリアが作ったお昼――カツサンドをテーブルに運んだ。
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