69 / 99
六十八
しおりを挟む
癒やしの木の光りはわたし達と、騎士達の傷を癒やした。強制召喚に使われた呪われた骨の回収は、皇太子殿下と騎士団に任せて、わたし達はミリア亭に引きあげた。
真夜中、北門でモンスター襲撃があったと聞いたミリアは店を開き、ご飯を作ってわたし達の帰りを待っていてくれた。
一緒に戦ったミカとリキも、ミリア亭に誘ったのだけど、二人は店があるからと帰って行った。
「クワァ、疲れた!」
「ほんと、疲れましたね」
「疲れたな……皇太子一行が現場に来なければ、もっと早く、大熊が片付いたぞ!」
「ナサの言う通りだ!」
「言う通りです!」
みんなは皇太子と騎士団への文句を言い終わると、ソファーとカウンターでぐったりした。
怪我をしたカヤとリヤは目覚めても、アサドに一言『よくやった、子供は大人しく寝てろ!』と言われて、タオルケットに包まり眠っている。
わたしは厨房で調理する、ミリアに声をかけた。
「ミリアさん、わたしもお手伝いします」
「いいよ、リーヤもみんなとモンスターと戦ってきたんだろう? しっかり体を休めな!」
「ミリアさん、ありがとう」
カウンター席に座る、ナサの隣に座った。
「お疲れさま、ナサ」
「リーヤもお疲れさん、怪我は治ったのか?」
「うん、ミカさんの癒やしの木のおかげで、傷痕も残らず治りました。ナサは?」
「オレはリーヤのヒールとミカの癒やしの木で治ったよ。でも、良かった。リーヤがオオカミに吹っ飛ばされたとき、生きた心地がしなかった」
「心配かけてごめんね、ナサ」
「まぁ、いきなり訪れたあいつらの所為っちゃ、せいだけど。リーヤも無理するなよ」
うんと頷き、二人で見つめあっていたところに、山盛りできたての肉巻きおにぎりがドカッと、カウンターと、アサトたちが座るテーブルの上に乗った。
『さぁ、できたよ。食べて』とミリアの合図に、お腹ペコペコな、わたしたちはごくりと喉を鳴らした。
「アサト、ロカ、ナサ、カヤ、リヤ、リーヤ、そして、ミカ、リキ、北区を守り、モンスターを倒してくれてありがとう。今日は店を休みにしてズーッと店は開けておくから、ゆっくり休んでいってちょうだい!」
「ありがとう、ミリア。いただきます」
アサトの合図で、
「「いただきます!」」
みんなで、できたての肉巻きおにぎりにかぶりついた。
「ンン、甘辛なタレがお肉に染みて美味しい。もう、何個でも食べれちゃう」
「シッシシ、ほっぺにご飯粒付いてるぞ」
ナサの大きな手が伸びてきて、わたしのほっぺのご飯粒を摘んで食べた。
「あ、ありがとう、ナサ」
「シッシシ照れるなよ、リーヤ」
そんなわたしたちをアサトとロカ、ミリアは微笑ましく見守ってくれていた。
+
カヤとリヤが起きたらおにぎりを支度するからと、一晩中厨房にいたミリアは空いているテーブル席で、仮眠を取り始めた。
「ごちそうさま」
「美味しかった、ごちそうさまでした」
アサトとロカは山盛り肉巻きおにぎりを食べ終わり、大欠伸をしてゴロンと横になる。
わたしとナサは二人、カウンターで話をしていた。
「ナサ、一つ聞いてもいい?」
「ん? なんだ?」
「ナサって肉弾戦が強いって言っていたけど、どうして、盾役をやっているの?」
わたしの質問にナサは最後の肉巻きおにぎりをパクッと、一口で食べてから、少し考えて話てくれた。
「オレの憧れる親父がやっていたからかな」
「ナサのお父さん? お父さんも盾役だったんだ」
「そそっ、もう…………亡くなっちまったけど、こことは違う国でみんなを守り盾役やっていたんだ。強く、カッコ良くてオレの憧れだ。シッシシ」
照れ臭そうに語るナサ。
お父さんが大好きだったんだ。
「素敵なお父さんだね」
「おお、オレの憧れの人だ! ……そうだ、オレの休みが何日か取れたらさ。リーヤをオレの生まれた所に連れて行き、お袋に合わせたい」
「ナサの生まれたところ? ぜひ、行きたいわ。ナサのお母さんに挨拶もしたいし、傷薬のお礼も言わないとね!」
「シッシシ、お袋も喜ぶよ。今年は忙しいから来年のラベンダーが咲く季節、初夏あたりに休みを取って行こう。ガレーン国から少し遠いから馬か馬車を借りてだな」
「馬か馬車? だったら、わたし、馬に乗れるわ」
「そっか、じゃー知り合いに馬を借りて行こう、約束だ」
「えぇ、約束ね」
二人でゆびきりをした。
真夜中、北門でモンスター襲撃があったと聞いたミリアは店を開き、ご飯を作ってわたし達の帰りを待っていてくれた。
一緒に戦ったミカとリキも、ミリア亭に誘ったのだけど、二人は店があるからと帰って行った。
「クワァ、疲れた!」
「ほんと、疲れましたね」
「疲れたな……皇太子一行が現場に来なければ、もっと早く、大熊が片付いたぞ!」
「ナサの言う通りだ!」
「言う通りです!」
みんなは皇太子と騎士団への文句を言い終わると、ソファーとカウンターでぐったりした。
怪我をしたカヤとリヤは目覚めても、アサドに一言『よくやった、子供は大人しく寝てろ!』と言われて、タオルケットに包まり眠っている。
わたしは厨房で調理する、ミリアに声をかけた。
「ミリアさん、わたしもお手伝いします」
「いいよ、リーヤもみんなとモンスターと戦ってきたんだろう? しっかり体を休めな!」
「ミリアさん、ありがとう」
カウンター席に座る、ナサの隣に座った。
「お疲れさま、ナサ」
「リーヤもお疲れさん、怪我は治ったのか?」
「うん、ミカさんの癒やしの木のおかげで、傷痕も残らず治りました。ナサは?」
「オレはリーヤのヒールとミカの癒やしの木で治ったよ。でも、良かった。リーヤがオオカミに吹っ飛ばされたとき、生きた心地がしなかった」
「心配かけてごめんね、ナサ」
「まぁ、いきなり訪れたあいつらの所為っちゃ、せいだけど。リーヤも無理するなよ」
うんと頷き、二人で見つめあっていたところに、山盛りできたての肉巻きおにぎりがドカッと、カウンターと、アサトたちが座るテーブルの上に乗った。
『さぁ、できたよ。食べて』とミリアの合図に、お腹ペコペコな、わたしたちはごくりと喉を鳴らした。
「アサト、ロカ、ナサ、カヤ、リヤ、リーヤ、そして、ミカ、リキ、北区を守り、モンスターを倒してくれてありがとう。今日は店を休みにしてズーッと店は開けておくから、ゆっくり休んでいってちょうだい!」
「ありがとう、ミリア。いただきます」
アサトの合図で、
「「いただきます!」」
みんなで、できたての肉巻きおにぎりにかぶりついた。
「ンン、甘辛なタレがお肉に染みて美味しい。もう、何個でも食べれちゃう」
「シッシシ、ほっぺにご飯粒付いてるぞ」
ナサの大きな手が伸びてきて、わたしのほっぺのご飯粒を摘んで食べた。
「あ、ありがとう、ナサ」
「シッシシ照れるなよ、リーヤ」
そんなわたしたちをアサトとロカ、ミリアは微笑ましく見守ってくれていた。
+
カヤとリヤが起きたらおにぎりを支度するからと、一晩中厨房にいたミリアは空いているテーブル席で、仮眠を取り始めた。
「ごちそうさま」
「美味しかった、ごちそうさまでした」
アサトとロカは山盛り肉巻きおにぎりを食べ終わり、大欠伸をしてゴロンと横になる。
わたしとナサは二人、カウンターで話をしていた。
「ナサ、一つ聞いてもいい?」
「ん? なんだ?」
「ナサって肉弾戦が強いって言っていたけど、どうして、盾役をやっているの?」
わたしの質問にナサは最後の肉巻きおにぎりをパクッと、一口で食べてから、少し考えて話てくれた。
「オレの憧れる親父がやっていたからかな」
「ナサのお父さん? お父さんも盾役だったんだ」
「そそっ、もう…………亡くなっちまったけど、こことは違う国でみんなを守り盾役やっていたんだ。強く、カッコ良くてオレの憧れだ。シッシシ」
照れ臭そうに語るナサ。
お父さんが大好きだったんだ。
「素敵なお父さんだね」
「おお、オレの憧れの人だ! ……そうだ、オレの休みが何日か取れたらさ。リーヤをオレの生まれた所に連れて行き、お袋に合わせたい」
「ナサの生まれたところ? ぜひ、行きたいわ。ナサのお母さんに挨拶もしたいし、傷薬のお礼も言わないとね!」
「シッシシ、お袋も喜ぶよ。今年は忙しいから来年のラベンダーが咲く季節、初夏あたりに休みを取って行こう。ガレーン国から少し遠いから馬か馬車を借りてだな」
「馬か馬車? だったら、わたし、馬に乗れるわ」
「そっか、じゃー知り合いに馬を借りて行こう、約束だ」
「えぇ、約束ね」
二人でゆびきりをした。
36
お気に入りに追加
905
あなたにおすすめの小説
「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。
友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。
あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。
ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。
「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」
「わかりました……」
「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」
そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。
勘違い、すれ違いな夫婦の恋。
前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。
四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
大好きな旦那様が愛人を連れて帰還したので離縁を願い出ました
ネコ
恋愛
戦地に赴いていた侯爵令息の夫・ロウエルが、討伐成功の凱旋と共に“恩人の娘”を実質的な愛人として連れて帰ってきた。彼女の手当てが大事だからと、わたしの存在など空気同然。だが、見て見ぬふりをするのももう終わり。愛していたからこそ尽くしたけれど、報われないのなら仕方ない。では早速、離縁手続きをお願いしましょうか。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる