寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

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六十七

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「オオカミ、かかってきなさい!」

 木刀を握り、息を整えて、オオカミを睨み体を立て直す。リキとナサに投げ渡したカヤとリヤは、癒やしの木の下に寝かされた。

(これでいいわ……でも、リキとナサが戦闘から外れて、わたしは一人でこのオオカミを倒さなくてはならない!)


 ーー大丈夫、わたしならやれる。


「リーヤ!!」

 気合いを入れ直したわたしの側に"ガルルルー"と、鋭い牙を見せて威嚇しながら、額から血を垂れ流し息を切らして、ナサが駆け寄りわたしを大きな背に隠した。

「ハァハァ、リーヤ、怪我は?」
「平気よ、ナサは?」

 ヒールをかけると、ナサはシャツの袖口で額の血を拭き。

「サンキュー! オレは頑丈が取り柄で亜人隊では盾役やっているが、肉弾戦も得意だ。来やがれ、クソオオカミ!」

 ナサの威嚇にオオカミも負けずと威嚇したが、一瞬の隙に拳を繰り出して"バギィィィー"と、オオカミの額にあった黒い魔法陣は砕いた。

「フゥッ、これでオオカミはすべて倒したな」
「ええ、そう見たいね」

 足元に落ちた、黒い骨を見て頷いた。

「……ハァ、リーヤが吹っ飛ばされたとき、ビビッた。無茶はしないでくれよ!」

 シッシシと、いつもの様に笑ったナサ。

「連携を変えて、すぐにこの戦いを終わらせる。リーヤは下がって癒やしの木で待っていてくれ!」

「わかった、ナサ。気を付けてね」
「ああ!」

 ナサは頷き、未だ騎士団が手こずる大熊モンスターの元に駆けていった。わたしはナサに言われた通り、癒やしの木の下に下がる。
  
 いま癒しの木の下にいるカヤとリヤは怪我も治り、スヤスヤ寝ているようだ。

(……良かった)


「アサト、リキ、ロカ、ミカ、コッチに来い!」

 ナサの合図にみんなが大熊モンスターの近くに集まる。前衛はナサ、アサトとリキ――後方はロカとミカ。盾役のナサが盾を持たない、いつもとは違う陣営。

 ナサは大熊と手こずりながら戦う、騎士団に向かって声を上げた。

「人間どもは退きやがれぇ!! 大型モンスターとの戦いに慣れていないお前たちには荷が重い!」

「そうだ、今までのように俺たちに任せろ!」







 騎士団の司令官は頷き。

「分かった――総員引け! 魔術師達は怪我をしたものにヒールをかけよ!」

「かしこまりました」

 ナサたちが前にでて、騎士団たちは大熊モンスターから距離を置き、後方に下がっていく。わたしはオオカミとの戦いが終わり周りが見え始めて気付く。

 この騎士団を引いきていたのは皇太子殿下だった。

(なぜ? 皇太子殿下が亜人隊が守る北門に来ているの)

 いままでモンスターとの戦いがあっても、騎士団は来たこともなかったくせに――いまになって来るなんて。

 ーーあ、ダメよ。

 いまはそんなことを考えている場合じゃない、落ち着いて周りの状況を見て判断しなくちゃ。大熊はナサ達に任せれば戦いは終わる。

 わたしはーーわたしにしか出来ない事をしようと、騎士たちに声をかけた。

「怪我をした騎士団の方――ヒールが間に合わない方は、癒やしの木の下で順次回復してください」

 大人数怪我をしているから、ヒールをかけてもらうまで時間がかかる、騎士たちを癒やしの木の下に誘導した。

 





「ナサ、お前の拳でアレを砕け!」
「アサト、了解!」

 徐々に騎士たちの傷も癒やされて、ホッと一息付いた。ナサは盾を拾わず拳を構えて大熊モンスターと戦っている。

「アサトはアノ熊に威嚇をして、リキは殺気を放ってくれ。熊が怯んだらオレが拳で魔法陣を砕く――ロカとミカはオレたちに攻撃魔法と防御魔法をかけてくれ」

「分かった、ナサ」
「わかりました」
 
 と、アサト、リキ。

「私は攻撃魔法をかけますので、ミカは防御魔法をかけてください」
「はい」

 後方のロカとミカ。

 いつもの連携とは違い、ナサがみんなに命令している。アサトは"ギャオォォーン"と大熊モンスターを威嚇を始めて、リキは刀を構えて殺気を放つ。

 ロカとミカは魔法をかけ終える。


 ――準備は整った。


「来やがれ、大熊モンスター!」

 駆けてくる大熊モンスターにナサも駆け寄り、奴の噛みつき攻撃を交わして、奴の額に向けて拳を繰り出した。


 その拳はひたいの魔法陣にあたり『バギィィィーッ!!』と、魔法陣にヒビが入り砕け散った。
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