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六十三
しおりを挟む例のコンビニ強盗が捕まった。違う街で無銭飲食をしてパクられたらしい。
何捕まってんだよ!馬鹿か!若頭と山野楓との間に何かしら進展があるくらいの期間くらい逃げ切れや!どうせパクられるならもっとこう、デカいことしろよ!
……という文句は一旦置いておこう。
若頭が納得する腕かつ比較的ヤクザ感少ない見てくれ構成員ストックがなくなりかけていたところだったから。
彼女ときたら、全員に対し何らかの形で礼をしようとするのため、その度に若頭に睨まれ交代させる羽目になった。交代させたやつらの顔、腫れてたな。ついでに挙動不審になってた。可哀想に。
一部哀れなのは手作りの蒸しパンを貰ってしまっていた吉田だ。たぶん彼女は金銭の絡まなさそうなお礼をと思っているんだろうが、残念だが真逆だ。むしろ悪化している。若頭を宥める俺の身にもなってくれ。
というか、若頭は何で知ってるんだろうな、それらを。
とにかく、今回の件は一応、強盗が捕まるまでの間という話だったので、俺はそれに関して話をするために山野楓の住むアパートに来ていた。
しばらく待つと、駐車場を横切る山野楓の姿が見えたので、呼び止める。
「おはようございます。えっと、強盗のことですか?」
バイトに向かうつもりなのだろう。彼女はちらっと時計を確認していた。
「はい。既にご存知とは思いますが、例の強盗が逮捕されました。ですので楓様に付けさせていただいていたウチの者を下げますが、よろしいですか?」
「はい。もちろん。そうだ、このスマホお返ししますね」
そう言ってシルバーのスマホを取り出したところで、なぜか彼女は硬直した。
「……何か?」
なにかを思い出した様子だった。なにかあったのだろうか。心当たりはなくもないが。
「えっと、その……岩峰さんのことなんですが……」
ああ、やっぱりか。
「若頭が何かしましたか?」
白々しい気がしたが、聞いておこう。
「その、私がバイトしてるコンビニに岩峰さんがこの頃よくいらっしゃるんですが、なんでですかね……?」
「ああ、それはですね……」
そりゃ気になるわな。自分のバイト中にだけヤバそうなヤクザがやってくる。普通の感性をお持ちなら怖い。俺でも怖い。
あなたのことが好きみたいなんですよねー、なんて言えるわけもなく、俺は逃げに走った。
「どうも、コンビニの肉まんを気に入ってしまったみたいなんですよね」
これでもう完全に若頭はただの肉まん大好きな人になってしまった。肉まんのために彼女がバイトしている時に買いに行く。普通に聞いたらイカれてると思う。
「楓様のおっしゃりたいことはよーくわかります。ですが、私に若頭を止める力はないんですよねぇ」
しみじみと言ってしまった。そしたら彼女はちらっと俺の頭を見てなにかを考えている様子だった。
なに考えてるのか想像ついたが、違うからな。ハゲをハゲで隠してるわけじゃないからな?
何度か会っているためか、彼女に耐性ができつつあるのか?こんな普通の女子大生にヤクザ慣れさせてしまったのはなんか申し訳ない気もするな。
「でもその、コンビニに来られるとちょっと業務に支障が……」
「以前に下っ端に行かせればいいのでは、とやんわりお伝えしたんですが、結果この状況です」
当人は肉まんを買いに行くという名目の元で彼女に会いに行っているので、若いのに行かせたところで無意味だ。
「岩峰さんって、そんなに肉まんお好きなんですか?」
「……まあ、ウチの事務所の冷蔵庫に常備するくらいですかね」
前に部下に言われて覗いたウチの事務所の冷蔵庫の中、物理的に半分が肉まんで埋まっていた。もはや病気の域だ。まあ実際、恋の病という病気なんだが。
「若頭、一度ハマると執着しがちなので」
嘘はついていない、というか事実だ。めっちゃ執着してる。何にとは言わないが。
「というわけで、すみませんがご容赦を……そして楓様に販売していただけると我々としても助かります」
一回だけあった。ちょうど彼女が裏の作業に回っていたため、対応して貰えなかったという事が。
事務所に戻っていた若頭の意気消沈っぷりは、語りたくない。なぜか俺まで拳でとばっちりを受けた。
「岩峰さんの中のブームが過ぎ去るまでってことですね」
「はい、そうなりますね……」
若頭が飽きるか、実力行使に出るまで続くなこれ。
実力行使の内容は想像にお任せする。うん。
「ああ!そうでした。これ、お返ししますね」
頑張って出したであろう明るい声で、山野楓は手に持ったままだったスマホを差し出してきた。
「いいですよ。楓様がお持ちください。どうせウチじゃ使いませんから、楓様のサブのスマホにするなりしてください。若頭のことでしばらくはご迷惑をおかけしますから、そのお礼と言いますか、何かあった際の連絡用にもなりますし。ちなみにあと半年くらいでSIMカードの契約切れますので、新規の契約等はご自由にどうぞ」
まあ、受け取るわけがない。若頭と彼女を繋げる肉まんの次に大事なツールだ。持ち帰ったら若頭にどやされる。
「じゃあお言葉に甘えさせていただきます。今までありがとうございました。そろそろバイトに行くのでこれで失礼します」
「いえ、こちらこそ色々とご不便をおかけしすみませんでした……お気をつけて」
いかん。ついマジなトーンで気をつけてとか言ってしまった。
しかしバイトの時間を気にしていた彼女は特に気にした様子もない。まあいいか。
「はい。では私はこれで……」
正直なところヤクザとしての俺は、無理矢理でもなんでもいいからくっ付けと思っているんだが、そうなると残された俺の良心が痛む。山野楓と何度か会話をして思ったが、彼女は本当にただの一般人だ。よりにもよってウチの若頭に執着されるとか、ほんと不憫。
もう、なるようになれ。
何捕まってんだよ!馬鹿か!若頭と山野楓との間に何かしら進展があるくらいの期間くらい逃げ切れや!どうせパクられるならもっとこう、デカいことしろよ!
……という文句は一旦置いておこう。
若頭が納得する腕かつ比較的ヤクザ感少ない見てくれ構成員ストックがなくなりかけていたところだったから。
彼女ときたら、全員に対し何らかの形で礼をしようとするのため、その度に若頭に睨まれ交代させる羽目になった。交代させたやつらの顔、腫れてたな。ついでに挙動不審になってた。可哀想に。
一部哀れなのは手作りの蒸しパンを貰ってしまっていた吉田だ。たぶん彼女は金銭の絡まなさそうなお礼をと思っているんだろうが、残念だが真逆だ。むしろ悪化している。若頭を宥める俺の身にもなってくれ。
というか、若頭は何で知ってるんだろうな、それらを。
とにかく、今回の件は一応、強盗が捕まるまでの間という話だったので、俺はそれに関して話をするために山野楓の住むアパートに来ていた。
しばらく待つと、駐車場を横切る山野楓の姿が見えたので、呼び止める。
「おはようございます。えっと、強盗のことですか?」
バイトに向かうつもりなのだろう。彼女はちらっと時計を確認していた。
「はい。既にご存知とは思いますが、例の強盗が逮捕されました。ですので楓様に付けさせていただいていたウチの者を下げますが、よろしいですか?」
「はい。もちろん。そうだ、このスマホお返ししますね」
そう言ってシルバーのスマホを取り出したところで、なぜか彼女は硬直した。
「……何か?」
なにかを思い出した様子だった。なにかあったのだろうか。心当たりはなくもないが。
「えっと、その……岩峰さんのことなんですが……」
ああ、やっぱりか。
「若頭が何かしましたか?」
白々しい気がしたが、聞いておこう。
「その、私がバイトしてるコンビニに岩峰さんがこの頃よくいらっしゃるんですが、なんでですかね……?」
「ああ、それはですね……」
そりゃ気になるわな。自分のバイト中にだけヤバそうなヤクザがやってくる。普通の感性をお持ちなら怖い。俺でも怖い。
あなたのことが好きみたいなんですよねー、なんて言えるわけもなく、俺は逃げに走った。
「どうも、コンビニの肉まんを気に入ってしまったみたいなんですよね」
これでもう完全に若頭はただの肉まん大好きな人になってしまった。肉まんのために彼女がバイトしている時に買いに行く。普通に聞いたらイカれてると思う。
「楓様のおっしゃりたいことはよーくわかります。ですが、私に若頭を止める力はないんですよねぇ」
しみじみと言ってしまった。そしたら彼女はちらっと俺の頭を見てなにかを考えている様子だった。
なに考えてるのか想像ついたが、違うからな。ハゲをハゲで隠してるわけじゃないからな?
何度か会っているためか、彼女に耐性ができつつあるのか?こんな普通の女子大生にヤクザ慣れさせてしまったのはなんか申し訳ない気もするな。
「でもその、コンビニに来られるとちょっと業務に支障が……」
「以前に下っ端に行かせればいいのでは、とやんわりお伝えしたんですが、結果この状況です」
当人は肉まんを買いに行くという名目の元で彼女に会いに行っているので、若いのに行かせたところで無意味だ。
「岩峰さんって、そんなに肉まんお好きなんですか?」
「……まあ、ウチの事務所の冷蔵庫に常備するくらいですかね」
前に部下に言われて覗いたウチの事務所の冷蔵庫の中、物理的に半分が肉まんで埋まっていた。もはや病気の域だ。まあ実際、恋の病という病気なんだが。
「若頭、一度ハマると執着しがちなので」
嘘はついていない、というか事実だ。めっちゃ執着してる。何にとは言わないが。
「というわけで、すみませんがご容赦を……そして楓様に販売していただけると我々としても助かります」
一回だけあった。ちょうど彼女が裏の作業に回っていたため、対応して貰えなかったという事が。
事務所に戻っていた若頭の意気消沈っぷりは、語りたくない。なぜか俺まで拳でとばっちりを受けた。
「岩峰さんの中のブームが過ぎ去るまでってことですね」
「はい、そうなりますね……」
若頭が飽きるか、実力行使に出るまで続くなこれ。
実力行使の内容は想像にお任せする。うん。
「ああ!そうでした。これ、お返ししますね」
頑張って出したであろう明るい声で、山野楓は手に持ったままだったスマホを差し出してきた。
「いいですよ。楓様がお持ちください。どうせウチじゃ使いませんから、楓様のサブのスマホにするなりしてください。若頭のことでしばらくはご迷惑をおかけしますから、そのお礼と言いますか、何かあった際の連絡用にもなりますし。ちなみにあと半年くらいでSIMカードの契約切れますので、新規の契約等はご自由にどうぞ」
まあ、受け取るわけがない。若頭と彼女を繋げる肉まんの次に大事なツールだ。持ち帰ったら若頭にどやされる。
「じゃあお言葉に甘えさせていただきます。今までありがとうございました。そろそろバイトに行くのでこれで失礼します」
「いえ、こちらこそ色々とご不便をおかけしすみませんでした……お気をつけて」
いかん。ついマジなトーンで気をつけてとか言ってしまった。
しかしバイトの時間を気にしていた彼女は特に気にした様子もない。まあいいか。
「はい。では私はこれで……」
正直なところヤクザとしての俺は、無理矢理でもなんでもいいからくっ付けと思っているんだが、そうなると残された俺の良心が痛む。山野楓と何度か会話をして思ったが、彼女は本当にただの一般人だ。よりにもよってウチの若頭に執着されるとか、ほんと不憫。
もう、なるようになれ。
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