寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ

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四十一

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 今日のミリア亭は"勝った""負けた"と賑やかだった。その中でわたしはと言うと……

「また、リーヤの負け!」

 クッ、また負けた。

「この中で一番弱いな。あの筋トレは全然、役に立ってないんじゃないのか?」

「……うん。ナサの言う通りだから、何もにも言えない」

(けっきょく、誰にも勝てなかった)
  
 と、肩を落とした。


 アサトとカートラお兄様が腕ずもうで盛り上がり、その騒ぎで目を覚ましたカヤとリヤに負けて……ミリアさんにも負けた。

「リーヤは弱いね」
「返す言葉がありません」


 でも、みんなには負けだけど、良いこともあった。
 アサトとナサの肉球はプニプニして気持ちよかったし、ロカさんの手は冷たくて、カヤとリヤの手は小さくて可愛かった、ミリアさんの手は暖かった。

 お兄様は傷だらけで剣だこの手で、ランドル様は指が長くて繊細な手……あ、みんなの手に初めて触れたかも。

「リーヤ、なに自分の手を見てニヤニヤしてんだ?」
「べ、別に、ナサには秘密」

「フーン。リーヤの手は、ちっさな手だったな」
「そう? ナサの手が大き過ぎるの、触ってもいい?」

 さらりと肉球が触りたくていったのだけど。
 ナサは驚いた様子で、

「はぁ? リーヤはオレの手を触りたいのか? ……シッシシ、仕方ねぇなぁ、少しだけだぞ」

 困ったように差し出した、ナサの手に触らせてもらった。大きくて肉球はあまり固くなくてプニプニしいてる。肉球を触ると、くすぐったいのかピクッと大きな体を揺らすナサが可愛く見えて、顔が……やばい。

「そんなに、オレの手を触って嬉しいのか? 顔がニヤけてるぞ」

「え、だって可愛いんだもん……あ、」
「シッシシ、そうかよ」

 照れたように笑った、ナサから目が離せなかった。





 ミリア亭には日が入り、お昼寝にいい時間帯だけど、今日は違った。


「ウガァ!! また負けた……クソッ、ランドルと力を合わせても、アサトに勝てねぇ」


「ええ、勝てませんね」

 まだテーブルでは負けず嫌いの、お兄様とランドル様が、アサトに勝とうと悪戦苦闘ちゅう。

「もう一回勝負だ、アサト。今度は負けえぇ"ウオォォーッ!!"」

 気合だけ十分のお兄様は雄叫びをあげて、一瞬でアサトに負けるそれを何回か繰り返して、テーブルにドカッと座り肩を落とした。

「はぁ、勝てねぇ」
「勝てませんね。悔しいですが、負けだけが増えていく」

「おいおい、そんなに落ち込むなよ、カートラ、ランドル。俺とお前たちでは体の大きさがまず違う。……でもよ、カートラとランドルは人間の中では強い方じゃないのか?」
 
「はい、私もそう思いますよ」

 いつのまにか名前を呼びあい、お兄様とランドル様、アサトとロカは仲良くなっていた。

「アハハハッ、余裕だなアサト、ナサ、ロカもだ。今度あう時までに鍛えてくるから、待っていろよ!」

「おお、いいぜ、待っててやるよ」
「シッシシ、待ってるよ」

「これ以上、強くなられては負けてしまいます。私としては遠慮したいですね」

 アサトとお兄様は"ハハハッ!"と互いの背中を叩き大笑い。ナサも私の隣で楽しそうに笑っている。そんな二人を同じテーブルに座り、ロカとランドル様は楽しげに見ていた。

 ガヤガヤ騒ぐ近くのテーブルでは、カヤとリヤが仲良くお昼寝中をしている。

 お兄様は嬉しそうに笑い、わたしを優しく見つめた。

「リイーヤ、よい人達ばかりだな。この人達ならリイーヤを任せても安心だ。アサト、ナサ、ロカ、チビ二人は寝てるか、ミリアさん、お転婆な妹をこれからも、よろしくお願いします!!」
 
 と、みんなに深く頭を下げた。


「シッシシ、リーヤの事はオレ、オレたちに任せておけ!」

「そうです。変な虫がつかないように、私が守ります」

「ロカ、それはお前だろ……カートラ、俺もしっかりリーヤを守るよ」

 ミリアは胸を叩き。

「食事、周りの事は全部、私に任せておきな!」

「ありがとう、よろしく頼む」

「カートラ、いい人達で良かったな」
「ああ、よかった」

 お兄様はみんなを見渡して"ウンウン"と頷き、優しい笑みを浮かべた。

「さてと、伝えることも終わった。ランドル、そろそろ宿に戻るか」

「そうですね、明日提出する書類を作らなくてはなりません」

 書類と聞き、眉をひそめたお兄様はフウッ吐息を吐き、わたしを見て、
 
「リイーヤ、三ヶ月後の舞踏会で両親には会うが……当日はバタバタして、ゆっくりと話すことは無理だろうから。一度、コッチに戻って来い。口に出して言わないが父上と母上は、リイーヤの事をひどく心配している」

(ロベルトお父様と、シンシアお母様が)

「はい、三ヶ月後にお父様とお母様にお会いすることを、楽しみにしていることと。来年のリルガルド国の国王祭に、一度そちらに帰るとお伝えください」

「わかった、そう伝えるよ。今日はありがとう、楽しかった!」


「「俺たちもだ!」」


 みんなが和んだとき"カランコロン"と少し乱暴にドアベルが鳴り、みんなの視線は出入り口の扉に向く。

 そこには、

「ハァハァ、ハァーーよかった。みんな、まだいた」

 さっき隣町に新商品を仕入れに行くと言っていた、ミカが汗だくで"ハァハァ"息を切らして、ミリア亭に駆け込んできたのだった。
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