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三十四
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まばゆい笑顔のお兄様ーー脳筋。考える前に体が動いてしまう。
「リイーヤ!」
こちらに向け手を広げるお兄様。
わたしは背中からナサに『わたしがお兄様のところに行ったら、横をすり抜けて宿舎に帰って』と言うと『なんでた?』と、訳が聞きたそうナサに小声で伝えた。
「いま、ナサがカートラお兄様に捕まったら、わたしとの関係を根掘り葉掘り聞かれるわ、それもお兄様が満足いく答えが出るまでね」
と伝えると、マジかと眉をひそめて『わかった……』と頷いた。『ナサ、また後でね』『ああ、また後でな』わたしは微笑んでお兄様の腕の中に飛び込み、ナサはお兄様をすり抜けて宿舎に戻っていった。
「カートラお兄様、お久しぶりです。いつ、ガーレン国にはいらしたのですか?」
「先程、ガレーン国に着いた、ここの王宮に用事があってな」
嬉しそうに笑い、わたしの頭を撫でた。
(王宮に呼ばれたから鎧とマントといった正装なのね。でも、王宮に用事なら、お兄様はいま王宮にいなくてはならないのでは……あ、まさか)
「カートラお兄様、今日、ガレーン国にいらしているのはお兄様、一人だけですか?」
カートラは『いいや』と首を振り、あっけらかんとこたえる。
「王宮での話し合いは、全てランドルがしいてる」
やっぱり。
「この前、アトールに聞きましたわ。お兄様はリルガルド国の騎士団長に就任されたのですよね。いくらランドル様がご学友だからって、ランドル様をお一人、王宮に残してくるなんて!」
酷いと、ポカポカ胸を叩いた、カートラは焦り。
「待て、リイーヤ。ランドルに俺も"王宮に行く"と言ったが……あいつが『話は副団長のボクが聞いてきます。カートラはこの国の騎士団を見学していてください』と言って、一人で王宮に行っちまったんだよ」
「……ランドル様が?」
きっと、ランドル様はカートラお兄様では出来ない話をしているんだわ。お兄様は自分がこうだと決めたら、決して、王族が相手にも自分の意見を曲げないから。
「でな、騎士団の早朝訓練に参加し終わって、リイーヤに会いに行ったら家にいないから探して、なんとなく、ここにいればリイーヤに会えると踏んで待っていた!」
「え、騎士団の早朝訓練に参加? ……そうですか」
お兄様は隣国ガレーン国にきてまで、他所の国の騎士団の訓練に参加したのですね。そしてわたしを探して"野生の感"が働き、いつ戻るかも、もしかしたら戻らないかも知れない北門でわたしを待っていた……。
どれくらい待ったのかはわかりませんが。北門の警備騎士二人がカートラお兄様に捕まり、話し相手をしていたらしく、愛想笑いと疲れた顔をしていた。わたしは"すみません"と彼らに深く頭を下げた。
「さすが、カートラお兄様の感は凄いですわ」
「……いいや、嘘はいかんな。本当はアトールに聞いた。リイーヤがミリア亭とかいう定食屋と家にいなかったら『北口の門で待ってると会えるかもね』と言われたんだ、ハハハッ!!」
「……お兄様」
「悪い悪い、久々に妹に会えるから、格好をつけたかったんだ! 許せ、妹よ」
(格好をつけるって、お兄様は相変わらずだわ)
北口の門で待っていれば会えるか。
弟のアトールは北門近くに現れたワーウルフと、戦ったのがわたしだと知っているから。国に戻ってお父様達に伝えたのね。
カートラはチラッと近くを見て。
「それで、リイーヤはコイツと北門の外で、何をしていたんだ?」
「こいつ、とは?」
カートラお兄様しか見ていなかったから、気付かなかった……宿舎に帰ったはずのナサがそばにいた。
「もう、ナサは帰ってて、言ったのに」
「すまん、……少し、気になってな」
「朝礼だって、あるでしょう?」
「悪い」
ナサは半獣になってもお兄様より身長が高く、胸板が厚い。いつもは獣人の姿しか見ていなかったから、なんだか見慣れていなくて……。ナサの短い金色の髪とキリリとした瞳に照れてしまって、言い方がキツくなる。
キツい子みたいで、嫌なのに。
「疲れてるのに、早く帰って休んでよ」
早く行ってと、ナサに近付き彼の背中を押した。あ、さっきはお兄様に驚き気づかなかったけど、モフモフがないナサの大きな背中、その背中に触れただけで"カーッ"と頬に熱をもつ。
「リーヤ」
「な、なに?」
見上げると"フッ"と優しく、わたしの名を呼んで笑った。
「シッシシ、また後でな」
「うん、また後で」
背中から手を離すとナサは宿舎へと帰って行く。小さくなっていく彼の背中を見送っていると、お兄様様がわたしの横に立ち。
「ナサだっけ? アイツと仲が良さそうだな、リイーヤはナサと付き合ってんのか?」
「えぇえ! わたしがナサと付き合ってる?」
ドキンとして大声を上げてしまい、ナサがバッとこちらに振り向いた。あ、しっかり聞こえてる。
「お、お、お兄様は変なことを言わないでください。……ナサ、ミリア亭でね」
恥ずかしくて、お兄様に隠れて手だけをだして、小さく振ると『シッシシ』と、いつもの笑い方をして帰っていった。
「リイーヤ!」
こちらに向け手を広げるお兄様。
わたしは背中からナサに『わたしがお兄様のところに行ったら、横をすり抜けて宿舎に帰って』と言うと『なんでた?』と、訳が聞きたそうナサに小声で伝えた。
「いま、ナサがカートラお兄様に捕まったら、わたしとの関係を根掘り葉掘り聞かれるわ、それもお兄様が満足いく答えが出るまでね」
と伝えると、マジかと眉をひそめて『わかった……』と頷いた。『ナサ、また後でね』『ああ、また後でな』わたしは微笑んでお兄様の腕の中に飛び込み、ナサはお兄様をすり抜けて宿舎に戻っていった。
「カートラお兄様、お久しぶりです。いつ、ガーレン国にはいらしたのですか?」
「先程、ガレーン国に着いた、ここの王宮に用事があってな」
嬉しそうに笑い、わたしの頭を撫でた。
(王宮に呼ばれたから鎧とマントといった正装なのね。でも、王宮に用事なら、お兄様はいま王宮にいなくてはならないのでは……あ、まさか)
「カートラお兄様、今日、ガレーン国にいらしているのはお兄様、一人だけですか?」
カートラは『いいや』と首を振り、あっけらかんとこたえる。
「王宮での話し合いは、全てランドルがしいてる」
やっぱり。
「この前、アトールに聞きましたわ。お兄様はリルガルド国の騎士団長に就任されたのですよね。いくらランドル様がご学友だからって、ランドル様をお一人、王宮に残してくるなんて!」
酷いと、ポカポカ胸を叩いた、カートラは焦り。
「待て、リイーヤ。ランドルに俺も"王宮に行く"と言ったが……あいつが『話は副団長のボクが聞いてきます。カートラはこの国の騎士団を見学していてください』と言って、一人で王宮に行っちまったんだよ」
「……ランドル様が?」
きっと、ランドル様はカートラお兄様では出来ない話をしているんだわ。お兄様は自分がこうだと決めたら、決して、王族が相手にも自分の意見を曲げないから。
「でな、騎士団の早朝訓練に参加し終わって、リイーヤに会いに行ったら家にいないから探して、なんとなく、ここにいればリイーヤに会えると踏んで待っていた!」
「え、騎士団の早朝訓練に参加? ……そうですか」
お兄様は隣国ガレーン国にきてまで、他所の国の騎士団の訓練に参加したのですね。そしてわたしを探して"野生の感"が働き、いつ戻るかも、もしかしたら戻らないかも知れない北門でわたしを待っていた……。
どれくらい待ったのかはわかりませんが。北門の警備騎士二人がカートラお兄様に捕まり、話し相手をしていたらしく、愛想笑いと疲れた顔をしていた。わたしは"すみません"と彼らに深く頭を下げた。
「さすが、カートラお兄様の感は凄いですわ」
「……いいや、嘘はいかんな。本当はアトールに聞いた。リイーヤがミリア亭とかいう定食屋と家にいなかったら『北口の門で待ってると会えるかもね』と言われたんだ、ハハハッ!!」
「……お兄様」
「悪い悪い、久々に妹に会えるから、格好をつけたかったんだ! 許せ、妹よ」
(格好をつけるって、お兄様は相変わらずだわ)
北口の門で待っていれば会えるか。
弟のアトールは北門近くに現れたワーウルフと、戦ったのがわたしだと知っているから。国に戻ってお父様達に伝えたのね。
カートラはチラッと近くを見て。
「それで、リイーヤはコイツと北門の外で、何をしていたんだ?」
「こいつ、とは?」
カートラお兄様しか見ていなかったから、気付かなかった……宿舎に帰ったはずのナサがそばにいた。
「もう、ナサは帰ってて、言ったのに」
「すまん、……少し、気になってな」
「朝礼だって、あるでしょう?」
「悪い」
ナサは半獣になってもお兄様より身長が高く、胸板が厚い。いつもは獣人の姿しか見ていなかったから、なんだか見慣れていなくて……。ナサの短い金色の髪とキリリとした瞳に照れてしまって、言い方がキツくなる。
キツい子みたいで、嫌なのに。
「疲れてるのに、早く帰って休んでよ」
早く行ってと、ナサに近付き彼の背中を押した。あ、さっきはお兄様に驚き気づかなかったけど、モフモフがないナサの大きな背中、その背中に触れただけで"カーッ"と頬に熱をもつ。
「リーヤ」
「な、なに?」
見上げると"フッ"と優しく、わたしの名を呼んで笑った。
「シッシシ、また後でな」
「うん、また後で」
背中から手を離すとナサは宿舎へと帰って行く。小さくなっていく彼の背中を見送っていると、お兄様様がわたしの横に立ち。
「ナサだっけ? アイツと仲が良さそうだな、リイーヤはナサと付き合ってんのか?」
「えぇえ! わたしがナサと付き合ってる?」
ドキンとして大声を上げてしまい、ナサがバッとこちらに振り向いた。あ、しっかり聞こえてる。
「お、お、お兄様は変なことを言わないでください。……ナサ、ミリア亭でね」
恥ずかしくて、お兄様に隠れて手だけをだして、小さく振ると『シッシシ』と、いつもの笑い方をして帰っていった。
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