寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ

文字の大きさ
上 下
17 / 99

十六

しおりを挟む
 これはいつにも増して気合を入れないと。玉ねぎをみじん切りにして、バターで飴色になるまで炒めてトレーに移して冷まして、その作業が終わるとミリアの声が飛んできた。

「リーヤ、手が空いた? ゆで卵の殻を剥くの手伝って!」

「はい、わかりました」

 今日の日替わりはガンベロフライ(エビフライ)のタルタル添え。わたしはゆで卵を剥き、ミリアは玉ねぎとピクルスをみじん切りにして、手作りマヨネーズと合わせた。

「よし、タルタルソースの出来上がりだ、リーヤ、味見してみる?」

「します!」

 スプーンでタルタルソースをすくって食べた。

(ううん、自家製のマヨネーズとピクルスがいい風味を出してるし、玉ねぎもシャキシャキ。まねて家でも作ってみたけど同じ味にならないのよね)

「美味しい、揚げたてのガンベロフライにタップリかけて食べたい」

「そうかい、そうかい、残ったら食べていいからね」

「やった」

 わたしは自分の作業に戻り、行商人が持ってきたトーロ牛とセルド豚のひき肉と、トレー冷やしておいた玉ねぎを入れて、トーロ牛乳を浸したパン粉、卵、塩胡椒をボールに入れてしっかり手で練り混ぜた。

 ハンバーグのタネが出来たら、焼くときにハンバーグが割れて肉汁を逃さないように。両手でハンバーグをお肉をキャッチボールするみたいに、ペチンペチンと空気を抜き小判形に仕上げた。できたハンバーグをトレーに並べて、あとは焼くときに真ん中を凹ませる。

(きれいな小判型ができた)

「よし、ハンバーグ十食分完成!!」

「リーヤ、手が空いた? こっちのガンベロ(エビ)の殻を剥くの手伝って」

「はい」

 ガンベロの殻を剥きながら、ハンバーグにかけるトマトソースを考えた。角切りのトマトにケチャップ、鬼人産の醤油、塩胡椒で作ろうかな。後はとうもろこしから作るコーンスープと、ジャガイモごろごろポテトサラダ、目玉焼きを焼けば、気まぐれワンプレートの出来上がり。

 数食は残るだろうからお昼に食べて、夕飯にもらって帰ろう。

「下ごしらえは終わった、少し休んだら店の開店だ!」

 仕込みが終わりしばらく休憩をしてから店を開けた。今日のミリア亭も大反響。お客さんが途切れず日替わり定食は飛ぶように出ていく。私の気まぐれトマトソースのハンバーグセットは……閉店間際にワカさんとセア君が食べに来てくれた。

「このハンバーグソース、美味い」
「美味い、美味い!」

 ハンバーグを二人とも喜んで食べてくれた。トマトソースの作り方をワカさんに教えました。そしてもう一人
、今日は珍しく、私がよく通う北区で雑貨屋を開くエルフのミカも食べに来てくれた。

 なんと、いつも"味見したかな?""うーんイマイチ"と辛口のミカにも大好評だった。帰り際に彼はカウターでミリア特性コーヒーを飲みながら、昨日の出来事をミリアと私に語った。

「そうだ、二人は知ってる? 昨日の夕方前ぐらいに冒険者が魔物に襲われたんだって」

 昨日のワーウルフの話だとわかり内心"ドキッ"としつつ、ミカの話に耳を傾けた。

「私もさっきお客さんからその話は聞いたよ。北区の門そばで、ワーウルフ二体が出たんだろ?」

「そうそう、大型と小型だって怖いね」

「ええ、怖いです」

 私も二人に合わせて頷いていた。昨日は冒険者達と大変でアザができたけど、初めてみんなが戦う姿をみれた。ライオンのアサトとトラのナサの威嚇遠吠えの姿はカッコよくて、ロカの魔法、カヤとリヤ君達の守りも連携が取れていて凄かった。

(みんなカッコよかったな)

「そのワーウルフを倒したのはね、な、なんと国の騎士団ではなく、亜人隊が活躍して倒したんだって。襲われた冒険者も怪我はしたみたいだけど無事だって聞いたよ。でも、また何が起きるかわからないからね。ミリアとリーヤもウチに帰るとき気を付けてね」
 
「わかったよ、ミカ」
「ありがとう、ミカさん」

 時間があったらまた来るね、とミカは帰って行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました

まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました 第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます! 結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。

「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。

友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。 あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。 ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。 「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」 「わかりました……」 「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」 そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。 勘違い、すれ違いな夫婦の恋。 前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。 四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。 ※本編はマリエルの感情がメインだったこともあってマリエル一人称をベースにジュリウス視点を入れていましたが、番外部分は基本三人称でお送りしています。

たとえ番でないとしても

豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」 「違います!」 私は叫ばずにはいられませんでした。 「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」 ──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。 ※1/4、短編→長編に変更しました。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

あなたの姿をもう追う事はありません

彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。 王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。  なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?  わたしはカイルの姿を見て追っていく。  ずっと、ずっと・・・。  でも、もういいのかもしれない。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...