浮気者はいりません

にのまえ

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ケーキを食べながら

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ナナカは男の人に偏見持ちすぎだけど、すごくパワフルだった。
人の婚約者、恋人、想い人を奪わない女性だったら友達になれたかもしれない。

魔王は息を吐き。

「さて、帰るとしようか。あの女性はこの場所を知っている。すぐ、ここに戻ってくるだろう」

「ええ、父上の言うとおりです。いますぐに帰りましょう!」

マスカレットはよほどナナカが苦手だったらしく、魔王に催促する。

ーーわかる、ランも帰りたそうにしているわ。

「みんなの意見は揃ったな。買ってきたケーキは馬車の中で食べるとしよう。この店のケーキは美味かった、また買いに来る」

「ありがとうございました」

魔王とマスカレットもウチの魔導馬車で帰るといい、みんなで魔王の魔法で一瞬に馬車に移動した。
夕食後にお兄様と弟君へのお土産のケーキと、魔王が買ってきた別のケーキをいただく。

両方美味しいケーキなのだけど、魔王の買ってきた王都の中央にあるケーキはなんて言っていいのか、


「「なにか足りない」」


食べたみんなの声が被る。

「美味しのだけど……なにか物足りないわね。分かりそうでわからない病の様」
「そうだな、なにか足りない。腑抜けた物語りのようだ」

お父様とお母様は首をかしげる。

「愛情の違いではないか? 中央のケーキは人気店で忙しく、一つ一つに手間をかけれない。違う場所で大量に生産されているのかもな」
 
「レシピさえ忠実に作れば味は似てきますね。しかし、手間をかけて作るものとは違い、愛情は含まれませんね」

「うむ、値段が手頃なのもいいが。手間をかけたケーキもよい……区別はよくないが、ワレは最初に食べたプリンアラモードが美味しかった」

魔王の言葉にみんな頷くと、フゥッと魔王は息を吐き。

「聞いてはならんと思ったのだかな、聞こえてしまった……ワシが行列に並んでいる時に聞こえた婦人達の話なんだがな……本当なら離れのケーキ屋と中央のケーキ屋の息子と娘は婚約者で来年、結婚式を挙げる予定だっと言っていた」

離れのケーキ屋は元々、人気のケーキ屋と同じ中央にあった。二人は婚約して、もうすぐ結婚の話も出ていたのだが。破廉恥な格好した娘ーーナナカが息子をたぶらかしたと聞いたとも話した。

ショックを受けた娘と倒れしまった妻。
旦那は自分はケーキしか作れない。しかしこのまま、傷付いた娘と倒れた妻を思ったら、この場所で店を続けるわけにいかない。

――だが、王都を離れるために資金が必要だ。

資金を貯めるべく中央の店をたたみ、王都のはずれに、いまのケーキ屋をオープンさせたらしい。

この話はここ一ヶ月前に起こったこと。



「父上、ボクはその、ケーキ屋の娘に一目惚れをしました。できれば嫁にしたい……こんなボクでも、彼女は振り向いてくれるでしょうか?」

「そうだな、いまは娘の心が傷付いついるかもしれない。そっと優しく、彼女の心をいたわり、彼女の傷が癒えたときに"ガツッ"といきなさい!」

「はい、父上! ……優しくか、なかなか難しいですね」

マスカレットは常に強者を求め、殺戮の中にいた。
そのマスカレットの初恋は果たして実るのか。

(私はケーキ屋のあの子の心を癒して、この恋が実ってほしいな)
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