浮気者はいりません

にのまえ

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歪んだヒロインの考え

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みんなの願いが通じたのか魔王様がナナカに気付く、

「なんだ此奴は? うむ、先程のケーキ屋で周りをうろついていた者か」

「そうです、ナナカと言います。イケメン魔王様、抱いてください」

(な、何たるストレートな誘い) 


「……抱いてか、いいな」

ちょっ、ラン、期待した目でコッチ見ないでよ。
『抱いてほしい』って、言ってほしいのね。

隣のランに口パクで"あとね"と言うと通じたらしく、ウンウン頷き、嬉しそうな顔をした。

「はて? 君を抱くとは?」
「男と女の営みです。私の体よくありませんか?」

誘うような仕草で、ナナカは胸を強調して、魔王を潤んだ瞳で下から見上げた。

「私は嫁がいるし、そういうのは間に合っている」

キッパリ、魔王に断られて驚いた様子のナナカ。

「ええ、コレさえすればみんな堕ちるのに?」

今までは"コレさえすれば"男の人が落ちたのだろうけど、それって、恋愛未経験者、若い人か、タダで抱けると分かる、浮気症の悪い人にしか効かないと思う。

魔王は絶対におちない、なにせ、世界一美人の妃がいるから。

「うむ、人ならばその体に落ちるだろうな。私は魔王で嫁が一番だから効かぬ、私が抱きたいのは妻だけだ」

「嘘、その美貌で? 男でも女でも入れ食いできるのに? ……妻、一人だけで物足りるの?」

魔王の美貌か……この場にいる魔王、マスカレット、ランはみんなは顔がイイ。ナナカの言う通りで、彼らのそばには男でも女でも寄ってくるだろう。

しかし、魔王の額に青筋がたち。

「足りる! 私の嫁はかわいい、嫁を嫁にするために私は魔界最強といわれるドラゴンと昼夜とわず戦った。ドラゴンとの勝負がつくまて三ヶ月かかった間も、他の者の誘い、誘惑はあったが、嫁のことしか考えなかった! 愛した彼女を嫁にする為の試練の途中で、他の者となんて考えられるか! 嫁を愛する気持ちは、そんなやわなものじゃない!」


うはっ、熱い愛の告白、キタァーーー!!!


マスカレットとランは当然だと頷く、

「フフ、父上は、母上が大好きだからな」
「ああ、そうだな」


だけと、ナナカはその言葉を否定する様に、首を横に振る。

「嘘よ、男は愛する人がちょっとそばにいなければ、我慢できずに浮気するのよ! ほかの人を抱いた汚い手で、平気で嘘をつき、平気で抱けるのよ!」 

(その言葉わかる。ーーナナカも前世で何かあったのかな? だからって、ほかの人を不幸にするのは間違っているわ)

己の欲に勝てなかったりとか、浮気をする人はするだろうけど、しない人はけしてしないと思う。ランがそうだもの、私の自惚かもしれないけどランは絶対にしない、私だけを愛してくれるって信じられる。

だって、

いまテーブルの下で『抱いてほしい』の言葉を早く言って欲しくて、私の手のひらを指先でくすぐってるわ。

くすぐったいから、やめてと睨んでも可愛く笑うから……そのままなのだけど。


「男はみんな浮気するの! だから、このわがままボディーで堕として、男なんて所詮はこうなるんだと、女どもにわからせているのよ! だから、可愛い私と魔王様、マスカレット様、ランスロット様、いいことしましょう!」

ーーうわっ、ナナカ、ヤバい。

そんなに可愛く生まれ変わったのだから、イイ人を見つけた方が人生楽しいのにな。

まったく、こりないナナカに呆れ顔の魔王は。

「それで、君の言いたい事はそれだけか? 君がそうしたいのならば勝手にそうすればいい。私と私の息子達は君には惹かれん。ーー元いた場所に帰れ!」

魔王のデコピンで、ナナカの姿は一瞬で消えた。
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